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41.潜る準備

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 亜空間ベース『レオン』に戻ると、食堂でクロエとジュリアンが、酒盛りをしていた。
 顔が赤く、陽気で、ロレツが回っていない所を見ると、相当飲んでいる事が分かる。
 そして、テ-ブルを挟んで、ア-リン・リドルとモカ・ピンチは、テ-ブルの上に食料、飲み水、ロ-プ、ローソク、鍋等を並べて、キャンプにでも行くのかと、思うほどであった。

 「響、行こうか!」
 モカは、響の腕を小脇に抱えて、食堂を出て行く。

 「えっ、何処へ?」
 遅れてア-リンも、響の腕を小脇に抱えて、響は引きずられるように連れて行かれる。

 「足らない物の買い出しです。明日は、冒険者組合からの依頼で、私達チ-ムでダンジョンに潜って、行方不明になっている冒険者を捜索します。ダンジョンの魔物を倒しながらなので、何日かかるか分かりません。だから、その準備です」
 響達は、クロエを無理やり連れて、王都サリュースのある。食堂『サミット』奥の転送部屋に転送してもらい、冒険者組合内の雑貨屋へと向かった。

 

 「響さん、どちらに行かれるんですか?」
 厨房から出て来た、アリシアに呼び止められる。

 「冒険者組合内の雑貨屋です」
 響を見る、食堂内の男達の目が血走っている。

 「それでしたら、この注文の出前をお願いします」
 アリシアは響に、持っていたオカモチヲを手渡す。

 「はい」

 いつの間に、出前なんか始めたんだろう?

 ここ最近、響の知らない事が、色々と動き始めていた。
 問題意識を持った女性達が集まれば、直ぐに対処して解決してしまう。
 最初に事を起こすのが男なら、後をカバ-して、何事もなく物事を進めて行く、女性達がいると言うのは、なんとありがたい事か。
 だから響は、何も言わずに従うのであった。

 「毎度、出前持ってまいりましたぁ~」
 冒険者組合内の雑貨屋に入り、誰もいないカウンター奥に向かい呼びかける。

 「待ってましたぁ~…………アリシアさんは…………なんだよぉ~寄りによって男かよ!」
 ガックシ! 店員は、アリシアか他のメイド服姿の女性が、来るものと思っていたようだ。

 あぁ~だから出前の要望があったのかぁ!
 だけど、この様子だと不埒ふらちな考えの奴も出て来そうだな~何か考えないといけないな!

 響はもう忘れている、『ヒビキアイランド』の住人には、『生体認証チップ』を埋め込んでいる事を…………
 住人にもしもの事があれば、転送して連れ戻すか、騎士達を送り込んで殲滅せんめつする事になっているのだ。

 不貞腐れて食べている店員をよそに、響達は買い物を始める。

 回復ポーション、解毒剤、救急キット、針金、油、粘着剤、火薬、起爆クリスタル、小瓶、竹筒、釘、紐、鈴、紙、粘土、等々色々と購入した。

 この回復ポーションと起爆クリスタルは、初めて見るなぁ~
 それにしても、回復ポーション一本が小金貨三枚……三万円てとこか~栄養ドリンクみたいな物だろうけど、高いなぁ~
 五本も買うって事は、この依頼はハ-ドなんだろう。
 起爆クリスタルは、密封ケ-スに入っているけど、起爆って言うんだから危なそうだ。

 響も回復ポーションと起爆クリスタルを、一つずつ購入した。
 言うまでもないが、琴祢に解析させるサンプルにするためだ。
 因みに、救急キットの中のは、包帯、止血用軟膏、消毒薬、火傷用軟膏、針、糸が入っていた。

 その後、転送部屋から亜空間ベース『レオン』に戻る。

 「帰ったよ! あれリーダ-は?」
 食堂に戻ったモカは、ジュリアンがいない事に気ずく。

 「先程、王都へ帰られました。後、明日は、朝一で出るそうです」
 食堂当番のメイドが教えてくれる。

 「なんだ、帰ったのかぁ~響、晩ご飯ここで食べて行っていい?」

 「いいよ、俺も食べるから。ところで、さっき買った火薬とか何に使うんだ?」

 「あれはネ~」
 モカは、響に説明を始める。ア-リンは、メイドと料理の話をしている所を見ると、こう言った事の専門はモカのようだ。
 
 モカの話によると、小瓶に油を入れて、注ぎ口に布を挟み、蓋をする。
 使う時には、布に火を点けて投げ付ける、火炎瓶だ。

 次に、紙に粘着剤を塗り、火薬を振り掛けて、紙縒こよりを作る、導火線だ。

 竹筒の周りに、釘を二十本、針金で巻き付ける。
 そして、竹筒に火薬を詰めて起爆クリスタルを入れる。そして導火線を付けて、その周りを粘土で押し固めて、蓋代わりにする、手製の手榴弾の出来上がりだ。

 「モカお前! 説明しながらそんな危ない物を、食堂で作ってんじゃねーよ!」

 「響が、聞くからでしょ~」
 ステ-キを食べながら、試験管のような小瓶に小麦粉を入れている。

 「それは、何をしているんだ?」

 「これはね、小部屋に潜む敵に投げ付けって、小麦が充満した所で、松明を投げ入れると爆発が起きるの」

 「粉塵爆弾って事か…………」
 モカの説明に、響はこの世界でも、色々と火力のある兵器の知識が、ある事に驚かされる。

 響は、何もしゃべらず、大人しくしているア-リンを見ると…………

 「ここで火を使うんじゃねぇ~~~!」

 平然とコンロで温めながら、きのこ鍋を食べていた…………
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