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21.チ-ム・ファルコン
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ランベル王国、王都サリュースの東側で火の手が上がっている。
月夜の明かりを頼りに人々が、襲撃者と炎から逃げ惑う姿が、あちらこちらで見受けられる。
月夜の明かりと言ってもこの星の月は小さく、その明るさは照らす物がなければ、あまり先の見通しも効ず、急ぐと躓きそうになるくらいだ。
「襲撃者達は、皆黒づくめの衣装に覆面をしている。その数およそ……五十」
建物の上から一人の女性エルフが、確認した状況を紙に書き、矢に付けて二十軒先の馬車に向けて放つ。
矢は正確に馬車に突き刺さり、近くに隠れていた二人が矢を手に取り、その内容に目お通して、王国警備隊三十名と貴族混成部隊四十名、それぞれが待機する場所へと、二手に分かれて報告に向かう。
この三人は、戦士ジュリアン・コ-ン三十二歳をリーダーに、エルフのア-リン・リドル百二歳、剣士のモカ・ピンチ二十二歳のチ-ム『ファルコン』を自称す、男一人女二人の冒険者チ-ムである。
チ-ム『ファルコン』から報告を受けた、王国警備隊と貴族混成部隊の部隊長は、中央広場で合流して、前方に王国警備隊三十名、後方に貴族混成部隊四十名が、一団となって東へと隊列を組み向っている。
「周りに注意しろ! 松明を絶やすな」
王国警備隊の隊長が、前方中央で注意を促している。流石に王国警備隊の隊長と言えども、貴族にさしずは出来ない、あまりまとまりのある部隊とは言えないのだ。
そんな部隊に、前方から覆面の一団が突っ込んで来る。
「前列、構え! 突け! 突け!」
王国警備隊は、槍で攻撃を加えるが、全ての敵を倒す事は出来ない。槍をすり抜けた敵は、盾でくい止めて押しもどそうとするが勢いが強く、くい止める事しか出来ない。
「こいつら何なんだ! 倒しても倒しても、起き上がって来るぞ」
「押し止めろ! 後列、槍で突け!」
覆面の一団は槍で突いても、倒れたかと思えばゆっくりと起き上がり、武器を持って襲いかかって来る。
その動きは人間と言うよりも、操り人形のような動きで、槍で突かれても声一つあげる事はなかった。
前方で戦っている者達にとっては、恐怖さえ覚える出来事が、目の前で展開されているのだが、後方では呑気な貴族達が、物見遊山に我関せずと言った感じで、眺めているだけであった。
そんな貴族達に、側面の暗闇から新手が一団となって、襲い掛かって来る。
「敵だ!」
「なっ、何をしておる! 私を守れ!」
次から次へと倒れて行く兵達を見て、貴族達は震え上がっている。
この様な所へ出張って来る貴族は、下級貴族の次男以下と決まっている。
家督を継ぐ事のない彼らは事ある毎に顔を出し、貴族の肩書を盾にして、他人の力で勲功を挙げようと、出張って来ているのだ。
そんな彼らが敵う訳もなく、崩壊して行くのであった。
「退却じや! 退却」
貴族混成部隊は、武器や怪我人をそのままに、我先にとバラバラに逃げだすのであった。
「何やってるのよあいつらは、怪我人を置き去りにして」
「ア-リン、それよりも王国警備隊が、危ないぞ! 貴族が逃げたせいで、周りを取り囲まれたぞ」
ジュリアン達チ-ム『ファルコン』の三人は、建物の上で偵察していた。ア-リンの元に集まり状況偵察を、続けていたのである。
「リーダー、どうする?」
「アーリン、王国警備隊の周りに、火矢を放って見通しを確保してくれ。モカ、俺と一緒に後方から切込み、王国警備隊の退路を確保する」
ジュリアンは豪儀な男で、目の前の弱者をほってはおけない。そんなジュリアンを信頼して、この二人の女性も、チ-ムメンバ-となったのだ。
ア-リンは、油に付けた布をバッグから取出し、矢に布を巻き付け準備する。
「モカ、油断するなよ!」
「分かってるって」
ジュリアンは、切っ先が五十センチもある槍を持ち、モカは、七十センチのブロードソードを抜き、覆面姿の敵に切り込んで行く。それを待っていたア-リンは、火矢を放って行く。
ジュリアンは覆面姿の敵を、槍で突き、真横に切り裂いた。
しかし、敵は多く王国警備隊までの道は遠く、倒しても敵は起き上がってくる。
「リーダー、こいつら死人だぁ……」
「踏ん張れ!」
「えっ、それだけ~」
ジュリアンとモカは、敵の正体が死人と分かったものの、倒す術を持たず奮戦するも、徐々に切り傷が増えて行くばかりだ。
「うわっ! リ……ダー」
多勢に無勢、モカは敵に囲まれ、その渦に飲み込まれる。
「モカァ~!」
ジュリアンは、敵を倒しながらモカの元へと進むが、自分の力の無さを思い知らされ、怒りが込み上げてくるのであった。
月夜の明かりを頼りに人々が、襲撃者と炎から逃げ惑う姿が、あちらこちらで見受けられる。
月夜の明かりと言ってもこの星の月は小さく、その明るさは照らす物がなければ、あまり先の見通しも効ず、急ぐと躓きそうになるくらいだ。
「襲撃者達は、皆黒づくめの衣装に覆面をしている。その数およそ……五十」
建物の上から一人の女性エルフが、確認した状況を紙に書き、矢に付けて二十軒先の馬車に向けて放つ。
矢は正確に馬車に突き刺さり、近くに隠れていた二人が矢を手に取り、その内容に目お通して、王国警備隊三十名と貴族混成部隊四十名、それぞれが待機する場所へと、二手に分かれて報告に向かう。
この三人は、戦士ジュリアン・コ-ン三十二歳をリーダーに、エルフのア-リン・リドル百二歳、剣士のモカ・ピンチ二十二歳のチ-ム『ファルコン』を自称す、男一人女二人の冒険者チ-ムである。
チ-ム『ファルコン』から報告を受けた、王国警備隊と貴族混成部隊の部隊長は、中央広場で合流して、前方に王国警備隊三十名、後方に貴族混成部隊四十名が、一団となって東へと隊列を組み向っている。
「周りに注意しろ! 松明を絶やすな」
王国警備隊の隊長が、前方中央で注意を促している。流石に王国警備隊の隊長と言えども、貴族にさしずは出来ない、あまりまとまりのある部隊とは言えないのだ。
そんな部隊に、前方から覆面の一団が突っ込んで来る。
「前列、構え! 突け! 突け!」
王国警備隊は、槍で攻撃を加えるが、全ての敵を倒す事は出来ない。槍をすり抜けた敵は、盾でくい止めて押しもどそうとするが勢いが強く、くい止める事しか出来ない。
「こいつら何なんだ! 倒しても倒しても、起き上がって来るぞ」
「押し止めろ! 後列、槍で突け!」
覆面の一団は槍で突いても、倒れたかと思えばゆっくりと起き上がり、武器を持って襲いかかって来る。
その動きは人間と言うよりも、操り人形のような動きで、槍で突かれても声一つあげる事はなかった。
前方で戦っている者達にとっては、恐怖さえ覚える出来事が、目の前で展開されているのだが、後方では呑気な貴族達が、物見遊山に我関せずと言った感じで、眺めているだけであった。
そんな貴族達に、側面の暗闇から新手が一団となって、襲い掛かって来る。
「敵だ!」
「なっ、何をしておる! 私を守れ!」
次から次へと倒れて行く兵達を見て、貴族達は震え上がっている。
この様な所へ出張って来る貴族は、下級貴族の次男以下と決まっている。
家督を継ぐ事のない彼らは事ある毎に顔を出し、貴族の肩書を盾にして、他人の力で勲功を挙げようと、出張って来ているのだ。
そんな彼らが敵う訳もなく、崩壊して行くのであった。
「退却じや! 退却」
貴族混成部隊は、武器や怪我人をそのままに、我先にとバラバラに逃げだすのであった。
「何やってるのよあいつらは、怪我人を置き去りにして」
「ア-リン、それよりも王国警備隊が、危ないぞ! 貴族が逃げたせいで、周りを取り囲まれたぞ」
ジュリアン達チ-ム『ファルコン』の三人は、建物の上で偵察していた。ア-リンの元に集まり状況偵察を、続けていたのである。
「リーダー、どうする?」
「アーリン、王国警備隊の周りに、火矢を放って見通しを確保してくれ。モカ、俺と一緒に後方から切込み、王国警備隊の退路を確保する」
ジュリアンは豪儀な男で、目の前の弱者をほってはおけない。そんなジュリアンを信頼して、この二人の女性も、チ-ムメンバ-となったのだ。
ア-リンは、油に付けた布をバッグから取出し、矢に布を巻き付け準備する。
「モカ、油断するなよ!」
「分かってるって」
ジュリアンは、切っ先が五十センチもある槍を持ち、モカは、七十センチのブロードソードを抜き、覆面姿の敵に切り込んで行く。それを待っていたア-リンは、火矢を放って行く。
ジュリアンは覆面姿の敵を、槍で突き、真横に切り裂いた。
しかし、敵は多く王国警備隊までの道は遠く、倒しても敵は起き上がってくる。
「リーダー、こいつら死人だぁ……」
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ジュリアンとモカは、敵の正体が死人と分かったものの、倒す術を持たず奮戦するも、徐々に切り傷が増えて行くばかりだ。
「うわっ! リ……ダー」
多勢に無勢、モカは敵に囲まれ、その渦に飲み込まれる。
「モカァ~!」
ジュリアンは、敵を倒しながらモカの元へと進むが、自分の力の無さを思い知らされ、怒りが込み上げてくるのであった。
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