17 / 95
17.亜空間固定
しおりを挟む
ホールの隔離スペースには、窓一つ無い広い空間と、ベッド、トイレ、シャワールーム、食事用テ-ブル等が用意されている。
ティスに傷の手当を受けた村人達の様子は、放心状態で動けない者、泣きじゃくる者、ベッドで横になる者、それぞれ目の前で繰り広げられた事を、どのように理解し今後に向けて生きて行けばいいのか、考えあぐねている。
とにかく助かったのであろう、目の前にはティスが用意した、コ-ンス-プ、ハムサンド、たまごサンド、オレンジジュース、コ-ヒ-と言った、見た事もない物がテーブルに並んでいる。
これらの食べ物に、いち早く手を付けたのは、やはり子供達であった。
それぞれの記憶を消し去るかのように、はしゃぎながらサンドやジュースを、貪るように口へ運び腹の中へ納めている。
子供達を見る母親達の目には、『この子を守らなければ』と言った、力が湧きだし食べ物へと手をのばす者もいる。
男達と少女達は、いまだ放心状態のままか、泣き止まない者がほとんどであった。
野人の襲撃を受ける前の村には、百二十六人の村人が住んでいた。響達が助けた村人の数は五十八人、男性七人、女性三十四人、子供十七人、その中でただ一人生き残った老人が、村長のウルムだった。
ウルムには、働き者の息子夫婦と孫がいた、だが野人に捕まり『やるなら、わしを殺せ!』と懇願したが、ウルムの目の前で三人とも、見せしめにように殺された。その行為は、ウルムの意志を砕くのに、十分な破壊力を持っていた。
今のウルムは、村長としての威厳が消え失せ、抜け殻のようにベッドで壁を見つめる、だだの老人となっていた。
響はメインコントロールルームで、モニターに映る村の様子を見ていた。
その映像には、野人達が深い穴を掘り、村人の遺体を投げ込む姿が映し出されていた。
残りの村人が六十八人、一人でも生きていれば助けに行こうと思ったけど、この映像を村の人達には、見せられないよなぁ~ あまりにも酷過ぎる。俺も強化されていなければ、冷静じゃいられなかったかもな。
「マスター、野人の集団が村へ向かっているよぉ~」
「琴祢、映像を出してくれ」
「はぁ~い!」
映し出された映像には、北から村に向かう三百人近い野人の列と、牛に引かれた荷車がその後に続く、中には女子供の姿もあり、一部族の移動のようであっった。
「部族の移動のようですね」
村人達の所から戻ったティスは、映像を見て呟き、分析作業に入る。
どうしたものかなぁ~ 皆殺し覚悟で、クロエと二人で襲えば、何とかなるんだろうけど……
皆殺しは、いやだなぁ~
「アタイは、やんないよ~」
ちょっと目が合っただけなのに、こいつ勘の良いやつだなぁ。
「マスター、ガ-ディアン百体を戦闘用に設定すれば、野人の討伐は出来ますが、どうされますか?」
「ティス、今はやめとく。村長と話してみるよ……今後どうしたいのかを」
人相手の実戦を経験した響は、何処となくたくましくなっていた。
人助けについてはいいけど、政治的な問題になるとな……悩むよなぁ~
響が、悩むのには訳がある。襲われている人をただ助けるのと、占領された村を奪還する事には、大きな違いがある。それは、前者は助けるだけだが、後者は小規模でも、野人とこの国との間で、戦争になる可能性があるからだ。
「マスター、第一ブロックの設定が出来たよ」
「琴祢、何が設定出来たって?」
「うん、ここの大陸をモデルに、探したからね!」
「……」
えっ! あの転送ゲ-トの先には、この大陸と同じ規模の大陸が、固定されていると言うのか……
俺が琴音に言ったのは、『魔素の無い世界でも、魔素の補充が出来るように考えて』と、言っただけなんだけど……
「ン~ 琴祢さん、いくつか質問していいかな?」
「いいよ」
「じゃ取りあえず三つ、固定した大陸はどこの大陸なのか? その大陸は安全なのか? 亜空間固定で、俺の住んでいた地球に固定出来るのか?」
響にとっては、三つ目の質問が一番気になる質問だ。
「えっとね、魔素があって、知的文明が存在しない場所を選んだだけだから、固定した大陸がどこかは、分からない。安全に付いては、当面は大丈夫、強そうな生き物はいないから。地球に固定出来るかに付いては、出来ない。ここ異世界だからね」
響は、『地球に戻れるのではないか』と言う、僅かな期待感を持って、琴祢の説明を聞くのだが、その期待もあっさりと否定されて、ため息をついていると、ティスがコ-ヒ-を手渡して、琴祢の説明を捕捉してくれる。
それによると、ティス達の居た世界の亜空間座標データはあるが、こちらには今の所、亜空間を利用する文明も無く、今は探査用のポッドを出して、亜空間内の座標データを取得しているとの事だった。
ティスが言うには『どこかで繋がっているかも、しれませんよ』との事だった。あまり笑顔を見せないが、気遣いの出来る優しい子だ。
ティスに傷の手当を受けた村人達の様子は、放心状態で動けない者、泣きじゃくる者、ベッドで横になる者、それぞれ目の前で繰り広げられた事を、どのように理解し今後に向けて生きて行けばいいのか、考えあぐねている。
とにかく助かったのであろう、目の前にはティスが用意した、コ-ンス-プ、ハムサンド、たまごサンド、オレンジジュース、コ-ヒ-と言った、見た事もない物がテーブルに並んでいる。
これらの食べ物に、いち早く手を付けたのは、やはり子供達であった。
それぞれの記憶を消し去るかのように、はしゃぎながらサンドやジュースを、貪るように口へ運び腹の中へ納めている。
子供達を見る母親達の目には、『この子を守らなければ』と言った、力が湧きだし食べ物へと手をのばす者もいる。
男達と少女達は、いまだ放心状態のままか、泣き止まない者がほとんどであった。
野人の襲撃を受ける前の村には、百二十六人の村人が住んでいた。響達が助けた村人の数は五十八人、男性七人、女性三十四人、子供十七人、その中でただ一人生き残った老人が、村長のウルムだった。
ウルムには、働き者の息子夫婦と孫がいた、だが野人に捕まり『やるなら、わしを殺せ!』と懇願したが、ウルムの目の前で三人とも、見せしめにように殺された。その行為は、ウルムの意志を砕くのに、十分な破壊力を持っていた。
今のウルムは、村長としての威厳が消え失せ、抜け殻のようにベッドで壁を見つめる、だだの老人となっていた。
響はメインコントロールルームで、モニターに映る村の様子を見ていた。
その映像には、野人達が深い穴を掘り、村人の遺体を投げ込む姿が映し出されていた。
残りの村人が六十八人、一人でも生きていれば助けに行こうと思ったけど、この映像を村の人達には、見せられないよなぁ~ あまりにも酷過ぎる。俺も強化されていなければ、冷静じゃいられなかったかもな。
「マスター、野人の集団が村へ向かっているよぉ~」
「琴祢、映像を出してくれ」
「はぁ~い!」
映し出された映像には、北から村に向かう三百人近い野人の列と、牛に引かれた荷車がその後に続く、中には女子供の姿もあり、一部族の移動のようであっった。
「部族の移動のようですね」
村人達の所から戻ったティスは、映像を見て呟き、分析作業に入る。
どうしたものかなぁ~ 皆殺し覚悟で、クロエと二人で襲えば、何とかなるんだろうけど……
皆殺しは、いやだなぁ~
「アタイは、やんないよ~」
ちょっと目が合っただけなのに、こいつ勘の良いやつだなぁ。
「マスター、ガ-ディアン百体を戦闘用に設定すれば、野人の討伐は出来ますが、どうされますか?」
「ティス、今はやめとく。村長と話してみるよ……今後どうしたいのかを」
人相手の実戦を経験した響は、何処となくたくましくなっていた。
人助けについてはいいけど、政治的な問題になるとな……悩むよなぁ~
響が、悩むのには訳がある。襲われている人をただ助けるのと、占領された村を奪還する事には、大きな違いがある。それは、前者は助けるだけだが、後者は小規模でも、野人とこの国との間で、戦争になる可能性があるからだ。
「マスター、第一ブロックの設定が出来たよ」
「琴祢、何が設定出来たって?」
「うん、ここの大陸をモデルに、探したからね!」
「……」
えっ! あの転送ゲ-トの先には、この大陸と同じ規模の大陸が、固定されていると言うのか……
俺が琴音に言ったのは、『魔素の無い世界でも、魔素の補充が出来るように考えて』と、言っただけなんだけど……
「ン~ 琴祢さん、いくつか質問していいかな?」
「いいよ」
「じゃ取りあえず三つ、固定した大陸はどこの大陸なのか? その大陸は安全なのか? 亜空間固定で、俺の住んでいた地球に固定出来るのか?」
響にとっては、三つ目の質問が一番気になる質問だ。
「えっとね、魔素があって、知的文明が存在しない場所を選んだだけだから、固定した大陸がどこかは、分からない。安全に付いては、当面は大丈夫、強そうな生き物はいないから。地球に固定出来るかに付いては、出来ない。ここ異世界だからね」
響は、『地球に戻れるのではないか』と言う、僅かな期待感を持って、琴祢の説明を聞くのだが、その期待もあっさりと否定されて、ため息をついていると、ティスがコ-ヒ-を手渡して、琴祢の説明を捕捉してくれる。
それによると、ティス達の居た世界の亜空間座標データはあるが、こちらには今の所、亜空間を利用する文明も無く、今は探査用のポッドを出して、亜空間内の座標データを取得しているとの事だった。
ティスが言うには『どこかで繋がっているかも、しれませんよ』との事だった。あまり笑顔を見せないが、気遣いの出来る優しい子だ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる