上 下
9 / 95

9.訓練開始

しおりを挟む
 連絡通路を抜けて行くと、待っていたかのように、響を睨み付けながら、男が近づいてくる。

 「これはこれは姫、そのような者を連れてどちらへ?」

 ギラギラとした目で、いやみたらしく、ネチネチとグウ・ウノ・ネ-デルが、話しかけてくる。

 「演習施設へ行くところです」

 「ホッホ~そう言えば先日は、危のうございましたなぁー。私が付いていれば、あのような事にはならなかったものを……」

 まだ、響を睨み付けている。

 「こちらの響様に、助けて頂きましたので」

 「それは、礼を言わねばいけませんな……」

 グウ・ウノ・ネ-デルは、響を睨めつけながら立ち去っていく。

 「ほんと、いけ好かない奴ですね」

 響達が、声の主の方へ振り替えると、ティスと入れ替わりに、赤毛ロングのケリー・ライアンが、眉間にシワを寄せながら立っていた。ケリー・ライアンは、姫付きの文官である。

 「姫様、あんな奴の求婚なんか、断ちゃいなさいよ」

 姫が幼い頃から一緒にいるため、ケリー・ライアンは、姫に対して馴れ馴れしいのだ。

 「ケリー、あまり大きな声で、言う事ではありませんよ」

 「だけど姫様、あそこの家は、親子揃って評判が良くないですよ」

 ケリーは、文官らしく情報ツウなのだ。

 「そんな事よりケリー、コントロールルームへ。メリンダは、響様と演習場へ入って下さい」

 ケリーはまだ何か言いたそうだが、姫様とコントロールルームへ移動し、メリンダと響は、演習場へと向かって行った。

 ゲートを二つ通り演習場に入ると、そこは広大な砂漠が広がり、艦内のスペースとしては到底考えられない広さがある。空も青空が続き、日差しも刺すような光りを降り注いでいた。

 「何だ、ここは……これが艦内の景色なのかぁ……」

 響は、驚いた。

 「驚くのも無理はないですね。ここは亜空間固定された砂漠ですから」

 当たり前のように、メリンダ話しかけて来る。

 「……」

 「あぁそうですね……亜空間固定と言うのは、最大で大陸位までのスペースを、利用目的に合わせて設定して、亜空間内にスペース固定するといた事なんです。あとは、スペース内の環境設定が、自由に出来ます。貴方も亜空間べ-ス以外に、五つまで設定出来ます。貴族は、三つだからよかったですね。今は調整中だから、設定はまたになりますけど」

 メリンダが響の顔を見ながら、微笑みかける。

 亜空間ね! だけどこの国には、美人しかいないのか?
 あまり見つめられると、恥ずかしいんだよなぁ~。

 響はあまりにも、言われている内容が大きいので、今は考えない事にした。
 高校二年生の響にとって、この様な美人に見つめられる状況は、まず無いと言っても過言でもない。
 先程までティスに『ドキドキ』していたのに、また新たな『ドキドキ』の始まりなのである。

 「では『ソ-ドブレ-ド』の使い方から説明します……」

 これより、メリンダの講習会の始まりである。

 『ソ-ドブレ-ド』のエネルギーは亜空間エネルギー、胸のクリスタルから手に流れて、ブレードが柄(つか)から伸びる。武器のエネルギーは、ほぼこの亜空間エネルギーが利用されている。

 『クリスタルガン』は、マガジンに五十発のクリスタル弾が装填されており、予備マガジンと合わせて百五十発を携帯出来る。

 『グレネード』は、円筒形のシリンダーで、端についているキャップを外し中のボタンを押すと、四秒後に起爆する。破壊力は、戦車を跡形もなく破壊するほどだ。

 一通りの説明が終わると、実技講習へと入って行った。

 「剣技に付いては網膜スキャンで、亜空間べ-スにある高量子コンピューターが、相手の行動予測をして戦える。『オートコンバットモード』を使えば、操り人形のように体が動くから安心です。お勧めはしませんが。練習は後でガ-ディアンとしてみて下さい」

 「『網膜スキャン』『高量子コンピューター』『ガ-ディアン』ですか……」

 もう、付いて行けない……

 「次は射撃です。基本右手を開いて、手の平に銃を乗せて、小指からゆっくりと銃を握ります。そして、銃口を的に向けて、左手を下から包み込むように右手に添えて、右手の親指を左手の親指で固定して、的に照準を合わせて、トリガーを左右にぶれないように、真直ぐ引きます。『キュン!』チョット外れましたね」

 響の身長が一七八センチ。メリンダの身長が一八一センチ。今の状況。響の後ろからメリンダが、響を抱えるように両手を掴んでいる。当然、メリンダの胸は響の背中に押し当てられ、耳元でメリンダの吐息を感じる程、顔が近くにある。そしていい匂いまでする。

 当たるはずがない!

 「では後は、練習あるのみです」

 「はい、がんばります!」

 響は、コントロールルームで設定された、標的に向けて射撃を続けろ。

 フランスの外人部隊では、一週間砂漠などで射撃訓練をする。射撃の上手い下手は、どれだけ弾を消費したかで決まるのである。
 地球の拳銃は十メートル離れると、素人ではほぼ当たらない。しかし、この『クリスタルガン』は反動が殆どないため、慣れてくると的によく当たる。

 『ソ-ドブレ-ド』を使っての剣技演習は、『防御ポイント』『ヒットポイント』が、網膜に映し出されて少し酔いを感じるが、身体能力が上がっているので、『ガ-ディアン』と剣を交えても、そこそこ相手に負けていない。試しにリストコントロールを操作して、『オートコンバットモード』を使ってみた響は、操り人形のように体を持って行かれ、メリンダの忠告を聞かなかった事を後悔する。

 そして、演習を終えたのは十二時間後であった。

 「今日は、ここまでにしましょう。お疲れ様でした」

 「あぁ~、疲れた……『再生強化』をしても疲れるんですね。メリンダさんありがとうございました」

 「『再生強化』をしているから、十二時間も動けるんですよ。後は、食事をしてゆっくりお休みください。」
 メリンダに言われ、『再生強化』の効果を実感する。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...