NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶

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3.響さらわれる

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 クロエに落ちた雷は、天からと言うよりも、小高い丘の上にある、八幡様のやしろから落とされた。
 クロエが、意識を無くした為なのか、響にかけられた魅了魔法の効果も薄れ。
 響の意識も、ハッキリとして来た。

 「ビックリした~よし! 動けるぞ」

 この八幡様は、神道と仏教があわさった、神仏習合での『八幡大菩薩』ではなく。
 古くから祀られていた『三女神』、『多岐都比売たぎつひめのみこと』、『市寸島比売いちきしまひめのみこと』、『多紀理毘売たぎりひめのみこと』の、三柱が祀られている。

 子供と言う者は、チョットした広さと木々が生えていれば、自然とあつまり自分たちの遊びをするものである。響も幼い頃から、この社の周りで遊び。
 家族と一緒に、事ある毎にお参りをしている。

 響が社からクロエに目をやると、クロエが弱々しく立ち上がり、フラフラと煙を立てながらこちらに歩いて来る。

 「お前、加護持ちかぁッ!」

 悔しそうにクロエが吠える。

 「加護持ちってなんだよ? 」

 意味が理解出来ない響は、問い返す。

 「神様の加護の事だよ!」

 そんなクロエの返答よりも、ある事に気が付いた響は、そっちの方が気になる。
 先程までは無かったはずの、クロエの首に細いチョウカ-のような、紋様が浮き上がっていた。

 「クソッ、もう一度、魅了魔法を……」

 クロエは立ち上がり、魔法発動に向けた動作に入り、クロエの瞳が輝き始める。

 それを見た響は、瞳の輝きをにらみつけ、右手を開いてクロエに突き出す。

 「何だこの首輪は……うっう……首が……締まるぅ……」

 クロエの首についた紋様が、輝き首を絞めて行く。

 響は、クロエに自分が手を向けた事で、苦しみ出したのかと右手を引っ込めて、手を観察するが何も異常がない。

 クロエは、首の締め付けが無くなり、再度行動を開始する。
 動き始めたクロエに気づき、警戒心を込めて響はクロエをにらみつける。
 そうすると、またクロエが苦しみ出す。
 睨めつけるのを止めて、普通にクロエを見る。
 クロエの苦しみも止まったようで、状況を確認している。
 響は、心の中で『締まれ』と、念じてみる。
 そうすると、クロエはまた苦しんでいる。
 そして響は、『解除』と、念じてみる。
 やはり、クロエの苦しみも止まったようだ。
 この状況から、あのチョウカ-の紋様は、響の何らかの『発動』と『停止』によって、『締まる』、『緩む』が発動するようだ。

 「やっぱり、俺が念じると締まるようだな」

 響は、今までの立場が逆転したことを知り、大声を出す。

 「これは、何だい?」

 クロエは、何が起きたのか分からず混乱している。

 「どうやら、先の雷が関係しているようだな。俺が念じると、お前には見えていないようだが、お前の首に刻まれた紋様が、締まるようだな」

 「やはりお前は、加護持ちだったか……」
 クロエは、落ち込む。

 響は、状況的に自分の方が有利になったので、クロエに近づき質問をする。

 「何で異世界へ連れて行く、人間が俺なんだ!」

 クロエは、ゆっくりとその場に座り込み、面倒くさそうに話し始める。

 「それは……二千年もたっているから……」

 話の内容としては、こうである。
 直ぐに連れて帰れると思っていたら、二千年もたっていて、魔王様に叱られると焦っていた所へ、俺がヒョコ、ヒョコ歩いて来たので、まあコイツでもいいかぁて事で、決めたそうだ……なんじゃそりゃあ。

 クロエの話にあきれた響は、力が抜けたかのように座り込む。
 そしてクロエを見ると、今まで気づかなかったが、クロエの姿とおなじように、薄っすらとではあるが数字が見える。

 「おい、お前を見ると、数字が目の前に出てくるのは何だ!」

 「アタイのステ-タスだよ」

 クロエは、当たり前のように答える。

 「ちゃんと説明しろよ!」

 訳が分からない響は、クロエを睨みつける。

 「ぐるじぃ~」

 クロエは、突如苦しみ出す。

 「あぁぁあ、かっ、解除、解除」

 響は、慌てて叫ぶ。

 この力は、クロエを睨むだけで首が締まる。
 使い方を考えないと、敵と対峙たいじして睨んでいる時に、クロエが視線に入ると、首が締まってしまう。
 だけどクロエは、魔王の手先だから……今はいいか。
 
 「もう一度ちゃんと説明してもらおうか」

 響は、再度問いただす。

 「わかったよ。お前の中に私のコア、リングが体内に入ったから、私のスキルがシンクロして、あんたにも見えるようになったんだよ」

 クロエは、疲れたのか下を向いて返答を返してくる。

 「それじゃ、おれも魅了が使えるって事か?」

 響は、気づいた事を確認する。

 「そうなるね」

 クロエは、シンクロした相手が、自分と同じ能力を持つ事を、知られるのが嫌だったようだ。

 と言う事は、好きなアイドルに使うと……いかんいかん不敬な念は排除、排除……妄想だけにしておこう……勿体ないけど。

 妄想タイムに突入した響を見てクロエは、響に聞こえない位の小声で独り言を始める。

 「コイツ何考えているんだ? あれっ、コイツMP 0 って……あああああああああああっ、この世界には魔素がない。て言う事は、リングの外にいるアタイは今、内部魔素を消費している。内部魔素が尽きると、奴の体内からリングが排出されてしまう。早く連れ去らないと!」

 クロエはおもむろに立ち上がり、落としたクリスタルを拾い上げて、響に近づいて行く。

 「主~、アタイもう抵抗しないから……主の下僕でいいから~いい事しよう」

 「何だ急に」

 響は、近づくクロエに警戒する。

 クロエは、ゆっくり近づき、響に抱き着いて来る。

 「胸が……良い匂い」

 いくら警戒していても、十七歳の高校生が、二千歳を超える経験豊富な、女性の誘惑にかなうはずも無く。
 響は顔を赤くし染めて、身動きが取れないのである。

 「よし! 捕まえた。超常魔法、時空転移」

 響は、クロエの動きを止めようと念じたが、クロエはいち早く密かに取り出した。
 『魔封じのクリスタル』を地面に叩き付ける。

 地面にサークルが浮き上がり、光が沸き起こる。

 響とクロエの姿は、光りの中へと消えて行くのであった。
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