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第15章 激闘、セイクリア王国
第528話 「敵」になったクラスメイト達
しおりを挟む春風達の前に現れた、4人の新たな「天使」。
その正体は、全員「勇者」としてこのエルードに召喚されたクラスメイト達だった。
「う、嘘だろ? 東田君達が?」
「そ、そんな、北宮さん達まで?」
その事実に、水音と歩夢はショックで顔を真っ青にした。
そんな2人をよそに、
「ね、ねぇハル。あの子達も、クラスメイトさんだよね?」
と、リアナが恐る恐る小さな声で春風に質問すると、
「ああ、そうだよ。ちょっとマッチョなのが東田礼司君に、眼鏡をかけているのが南本仁君。ツインテールの女の子が北宮月詠さんと、長身な女の子が西澤|永恋さん。彼らも前原君や裏部君と同じ、クラスの中心メンバーなんだ」
と、春風は目の前の東田達に視線を向けたまま答えた。
すると、
「……んで」
という声が聞こえたので、「ん?」と春風が声がした方へと振り向くと、
「何で……みんなが、『天使』になってる?」
そこには、水音と歩夢以上に顔を真っ青にした翔輝がいた。
「どうして? どうしてそんなことに……!?」
そう言って、翔輝はヨロヨロとしながら前に進むと、突然翔輝の足下の地面が、音を立てて抉れた。
翔輝はそれを見て、「え?」となると、
「それ以上近寄るな」
と、「天使」となったクラスメイトの1人がそう言ったので、翔輝は思わずその人物に視線を向けた。
「れ、礼司?」
それは、クラスメイトの1人、東田礼司だった。
どうやら先ほど地面が抉れたのは、彼の攻撃によるものだと理解した翔輝は、
「な、何をするんだ礼司!?」
と、問い詰めると、
「アハハ、『何をするんだ』だって。見てよあの間抜け面。」
と、少女・月詠が笑いながら言って、それに続くように、
「オイオイ。あまり笑うなよ、可愛いそうだろ」
と、もう1人の少年、仁もクスクスと笑いながら月詠に注意した。
「つ……月詠、仁……?」
と、翔輝が状況を理解出来ずに戸惑っていると、
「……さっきの質問だけど」
と、最後の1人、少女・永恋が口を開いて、
「切嗣が言ったように、翔輝、あなたが悪いのよ」
と、翔輝を見下すように言った。
「な、何を言ってるんだ永恋?」
と、翔輝が尋ねると、
「そうだ、お前が不甲斐ないのが悪い。そこにいる、裏切り者の幸村共々な」
と、永恋ではなく礼司が代わりに答えて、
「そうだよぉ、私達と一緒になってそいつを『裏切り者』って罵ってた癖に、思いっきり興味深々なうえに最後は一緒に戦うとか、マジで幻滅だよねぇ」
と、その後に続くように月詠が翔輝と春風を交互に見て、「ハァ」と溜め息を吐きながら言った。
その言葉にカチンときたのか、
「な、何を言ってるんだ!? 幸村の『事情』は、みんなだって聞いただろ!?」
「そうだよ! 春風は『地球』を救う為に動いてただけで……!」
と、翔輝だけでなく水音もそう説明しようとしたが、
「でもその所為で、私達バラバラになったよね?」
と、永恋がそれを遮るように口を開いた。
その言葉を聞いて、翔輝、水音、歩夢は思い当たることがあったのか、
「「「うっ!」」」
と、3人同時に呻いた。
更に永恋に続くように、
「……そうだ。この世界に召喚されたあの日、翔輝がみんなを纏め上げて、みんな世界の危機に立ち向かって、そして最後は全員で『英雄』になる筈だったんだ」
と、表情を暗くした切嗣がそう言った後、
「なのに!」
と、春風をキッと睨みつけて、
「お前が! お前が余計なことをして場を引っ掻き回した挙句! 僕達のもとを去った所為で! クラスの雰囲気が悪くなって! お前に関することでみんなバラバラになって! お前自身は実は冒険家の間凛依冴の弟子で! 『巻き込まれた者』じゃなくて『地球の神の使徒』で! 『勇者召喚』の所為で大変なことになった地球を守る為に動いてて! いつの間にかこの世界も救う為に動いてて! レギオンってやつのリーダーになって仲間作って! 帝国の皇帝に認められてて! 挙句ハーレム作ってただと!? ふざけるな! ふざけるなよ! お前は……お前は一体何なんだよ!? お前の所為で翔輝は腑抜けてしまったんだぞ! お前の所為でぇ!」
と、唾を飛ばしながら怒鳴り散らした。
その後、ゼェゼェと肩で息をする切嗣を見て、
「……だから、偽物の神々に組したのか?」
と、春風はジッと切嗣を見つめながら尋ねた。
すると、漸く落ち着いてきたのか、切嗣は「ククク……」と笑って、
「ああ、そうだよ。翔輝がもう役に立たないってわかったから、どうしたものかと思ってた時に、向こうから話が来たんだ。『我々のもとにつけば、新たな力を授け、新たな世界へと導いてやろう』ってな」
と、答えると、
「だから寝返ったっていうのか!? この世界も地球も、どうなってもいいっていうのか!?」
と、今度は水音が怒鳴るように問い詰めてきた。
それに対して、切嗣は「アハハ!」と狂ったように笑った後、
「『地球』だって!? あんなカスみたいな世界がどうなろうと知ったことか! さっさと消えてしまえばいい!」
と怒鳴るように言い放った。
その答えを聞いて、
「切嗣ぅ!」
翔輝は剣型神器を構えて、
「裏部、お前ぇ!」
水音は鬼の闘気を解放し、
「この……下衆が!」
リアナは愛用の両刃剣を構えた。
それと同時に、切嗣、礼司、仁、月詠、永恋も全身に白いオーラのようなものを纏わせる。
その後、切嗣は真面目な表情で、
「そうさ、どうせ地球もこの世界も終わる。それを見届けたら、僕達は神々と共に『新しい世界』へと旅立つよ」
と、静かに言い放った。
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