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第15章 激闘、セイクリア王国
第519話 目覚めの一撃と……
しおりを挟む「ぼ……僕、を……ぶん殴ってくれ!」
「……え?」
翔輝にそう言われて、春風は思わず首を傾げたが、何かを察したのか、
「ああ、わかった!」
と、ニヤリと笑い、その後すぐに行動に移った。
「やるよ、ジゼルさん!」
と、小さな声でそう言うと、春風は彼岸花・神ウチに魔力を込めて、それを思いっきり地面に突き刺した。
すると、翔輝の周囲の地面から何本もの真紅の鎖が伸びて、翔輝の体に巻き付いた。
「っ!」
翔輝は必死になって鎖を引き千切ろうともがいたが、もがけばもがくほど鎖の締め付ける力が強くなった。
そんな状態の翔輝を前に、
「春風様、この後どうする気ですか!?」
と、彼岸花・神ウチからジゼルがそう話しかけると、
「決まってるでしょ……」
春風は再びニヤリと笑って、
「こうするんだ!」
と、彼岸花・神ウチから手を離して、なんと丸腰のまま翔輝に向かって駆け出した。
「……え、ちょ、春風様!?」
驚くジゼルを無視して、春風は走る。
それを見て、翔輝はすぐに持っている剣型神器に魔力を込めて、それで鎖を叩き斬ると、そのまま春風のもとへと駆け出した。
「ああ、春風様!」
と、再び驚いたジゼルだが、それでも、春風は止まらなかった。
やがて春風と翔輝が至近距離まで近づくと、翔輝は剣型神器を大きく振り上げ、春風目掛けて力いっぱい振り下ろした。
だがその直前、
「前原ぁあああああああっ!」
と春風はそう叫ぶと、銀のガントレットを装着した左腕に魔力を込めた。
そして、その状態のままグッと握り拳を作ると、振り下ろされた剣型神器目掛けてパンチを繰り出した。
次の瞬間、剣型神器の一撃は、その魔力を込めたパンチに弾かれて、翔輝はその衝撃で後ろに倒れそうになった。
その最中、春風は一歩前に出ると、今度はガントレットを装着してない右手をグッと握り締め、
「歯ぁ食いしばれやぁあああああああっ!」
その拳を思いっきり前に突き出し、翔輝の左頬に当てて、彼を殴り飛ばした。
「っ!」
翔輝はその勢いで後ろへ吹っ飛ばされると、地面に何度も体をバウンドさせて、最終的には王城の壁の一部に激突した。
その様子を見て、
「「う、うわぁ……」」
と、2体の神騎士と戦っていたリアナと水音は、戦闘中にも関わらずドン引きしたかのような声を漏らした。
勿論、ループス、ヘリアテス、イチ、更に上空で見ていたモーゼスも、
「「「「うわぁ……」」」」
と、リアナ達と同じようにドン引きしたかのような表情になった。
しかし、春風はそんな彼らを無視して、翔輝のもとへと歩き出した。
そして、翔輝のすぐ近くで止まると、
「……」
翔輝はゆっくりと左腕を動かした。
それを見て、「あ!」とループス達は身構えたが、次の瞬間、
「……っ!」
なんと、翔輝は左手を自身の左耳に近づけた後、そこに着いているイヤリングを外し、バキッと音を立てて壊した。
春風はそれを見て、クスッと笑うと、
「大丈夫、前原君?」
と、翔輝に向かってそう尋ねた。
すると、翔輝は春風を見て、
「……自分で頼んでなんだけど……もっと優しく殴ってほしかった」
と、答えた。
その答えを聞いて、春風は「アハハ」と笑うと、
「手ェ貸すよ」
と言って、スッと右手を差し出した。
だが、
「いや、いい」
翔輝はそれを拒み、
「自分で立てるよ」
と言って、ゆっくりと立ち上がった。
「お、凄いじゃん」
と、春風はちょっと驚いた表情をしながらそう言うと、
「カッコ悪いところ、見せたくない人がいるんだ」
と、翔輝はチラッととある方向を見ながらそう返した。
春風も「ん?」と翔輝が見た方向を向くと、そこにあるものを見て、
「……ああ、もしかしてそういうこと?」
と、すぐに翔輝に向き直ってそう尋ねた。
その質問に対して、
「(コクリ)」
と、翔輝は無言で頷くと、
「やっぱりかぁ」
と、春風は「参ったぜ」と言わんばかりに自身の額に手を当てて、
「あー、ごめんリアナに水音」
と、神騎士と戦闘中の2人に話しかけた。
戦闘中だというのに急に話しかけられて、
「「な、なぁに?」」
と、リアナと水音はそう返事をすると、
「そいつらの胴体部分、引っぺがすこと出来ない?」
と、春風はちょっと恐る恐るな感じの態度でそう尋ねた。
それを聞いて、リアナと水音は「え?」となったが、
「「……まさか」」
と、何かを察したのか、すぐに持っている武器に魔力を込めて、それで神騎士の胴体部分を切り裂いた。勿論、中身を傷つけないように、だ。
その後、斬られた神騎士の胴体を覆う鎧がバラバラと地面に落ちると、そこに現れたものを見て、春風、リアナ、水音は、
「「「やっぱりか」」」
と、辛そうにしながらも納得の表情を浮かべ、ループス、ヘリアテス、イチはというと、
「「「そ、そんな……!」」」
と、絶句した。
何故なら、2体の神騎士の中にいたのは、一糸纏わぬ状態で拘束されている、クラリッサとイブリーヌだからだ。
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