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第14章 更なる「力」を求めて
第486話 春風編47 大逆転、「漢のロマン」
しおりを挟む春風とフリードリヒの戦いが、クライマックスを迎えようとしていた、丁度その頃、
「ハウア!」
と、レギオン「黄金の両手」拠点内の工房で、現在ジゼルに保護されている状態の彼岸花(精霊)が驚きの声をあげたので、
「ど、どうしたの彼岸花ちゃん!?」
と、突然の声にビクッとなったジゼルがそう尋ねてきた。
すると、彼岸花(精霊)はワナワナと体を震わせながら答える。
「は、は、春風君が……」
「春風様が?」
「遂に、私以外の武器を、持ってしまったんですぅっ!」
顔を真っ青にして叫ぶようにそう言った彼岸花(精霊)に、ジゼルは少しの間固まると、
「まぁ! 春風様が、あなた以外の武器を!?」
と、ジゼルも叫ぶようにそう言ったので、
「うえーん、春風君! 幾らもう『呪い』はないっていっても、やっぱり私以外の武器なんて持ってほしくないよぉ!」
と、彼岸花(精霊)はまるで幼い子供のように泣き喚いた。
「お、落ち着いて彼岸花ちゃん! 因みに、春風様は今どのような武器を持ったのかわかりますか!?」
と、ジゼルが彼岸花を落ち着かせながらそう尋ねると、
「なんか、太くておっきぃのー!」
と、彼岸花(精霊)は泣き喚きながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「春風様ぁー! 一体何を持ったのですかぁー!?」
と、ジゼルは頭を抱えてそう悲鳴をあげた。
さて、そんなことになってるとは知らない春風はというと、今まさに、その太くて大きな武器ーー丸太を持ってフリードリヒと対峙していた。
それを見てフリードリヒがポカンとしている中、
「……丸太だよな?」
「……丸太だよね」
「……うん、丸太ね」
「……丸太、だな」
と、仲間達は皆、「何だありゃ?」と言わんばかりの表情で、口々にそう言っていた。ただ、
「おお、見てよセっちゃん! 流石は僕達の弟だよ!」
「そうね、冬夜君!」
「「「かっこいいっ!」」」
と、冬夜、雪花、イアン、ニコラ、マークの5人だけは、目をキラキラと輝かせていた。
すると、
「ハッ! は、春風君、一体それは何だい……じゃなくて、それ、丸太だよね!? 丸太だよね!?」
と、我に返った(?)フリードリヒがそう尋ねてきたので、
「ただの丸太ではありません。こんなこともあろうかと思って、『太陽と花』の女神ヘリアテス様と、4人の精霊王様達に用意してもらった特別な丸太です。魔力を流すことによって、様々なアクションが出来ます」
と、春風ははっきりとそう答えた。
それを聞いて、フリードリヒは再びポカンとなったが、
「ハッ! いやいやいや、待って待って待って! まさか、その丸太で僕に立ち向かうっていうの!? 冗談だよね!? ねぇ!?」
と、再び我に返って(?)そう尋ねてきたので、
「冗談ではありません。丸太を用いた無双は、『漢のロマン』なんです。『彼岸花の呪い』から解放された今、俺はこの丸太を以て、あなたの全力に挑ませてもらいます!」
と、春風は真っ直ぐフリードリヒを見て、再びはっきりとそう答えた。
それを聞いたフリードリヒは、「そ、そんな」とショックで顔を真っ青にしてよろけたが、
「う……。うおおおおおおおっ! いいだろう! ならば受けてみよ、僕の最大最強の一撃を!」
すぐに持ち直して、異形の獣の頭部とかした左手に更に力を注いだ。
それと同時に、春風もグッと丸太を持ち上げて、まるでホームランを狙うバッターのように構えた。
そして、仲間達がハラハラドキドキしながら見守る中、
「いっけぇえええええええ!」
と、フリードリヒは春風に向かって最大級の一撃を放った。
異形の獣の口から放たれた強大なエネルギーが、春風に向かって来る。
対して春風は、グッと丸太を掴む力を強くしながら深呼吸すると、
「女神ヘリアテス様、4人の精霊王様、そして、『地球』の神の皆様、俺に奇跡を起こさせてください」
と、静かに呟いて、丸太に自身の魔力を込めた。
その後、強大なエネルギーが春風の目前まで迫ると、
「うおおおおお! これが俺の、『逆転さよならホームラン』だぁあああああっ!」
と、春風はそう叫んで、魔力を込めた丸太を思いっきり振るった。
次の瞬間、その魔力が込められた丸太は、今にも春風を飲み込もうと迫る強大なエネルギーを……打ち返した。
その際、「カキーンッ!」という音が聞こえた気がした。
まぁそれは置いといて、兎に角、春風によって打ち返された強大なエネルギーは、その時宿った春風の魔力と共に、
「あ……」
と、声をもらしたフリードリヒを飲み込むと……。
ーードォオオオオオオオン!
という大きな爆発音が、その場に響き渡った。
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