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第14章 更なる「力」を求めて
第481話 春風編42 フレデリックの「正体」
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フレデリックに向かって、風の魔力を纏わせた「正拳突き」をお見舞いする春風。
しかし……。
「……え?」
その一撃を、フレデリックは左の掌で受け止めた。
よく見ると、拳に纏わせていた風の魔力は、まるで最初からなかったかのように消えていた。
(な、何で?)
あまりのことに春風は頭上に「?」を浮かべていると、すぐにフレデリックから離れて、
(だったら!)
と、春風は今度は両手に風の魔力を纏わせて、再びフレデリックに突撃し、
「ハァアッ!」
両手による連続パンチをお見舞いした。
しかし、どれだけ攻撃を叩き込んでも、それら全てをフレデリックは、また左の掌で防いだ。
そして、「正拳突き」の時と同じように、両手に纏わせていた風の魔力は、いつの間にか消えていた。
(く! 何だよこの感じは!?)
と、心の中で苛立った春風は、すぐにハッとなっていかんいかんと首を横に振ると、またフレデリックから離れた。
春風は真っ直ぐフレデリックを見て、深呼吸して気持ちを落ち着かせると、
(それなら、これだ!)
と、右手に火の魔力、左手に水の魔力、更に両足に風の魔力を纏わせて、またフレデリックに突撃した。
その後繰り出されたのは、火と水の魔力を纏わせた両手による連続パンチと、風の魔力を纏わせた両足による蹴り。春風はそれらを、目にも止まらぬ速さで出したが、やはりどの攻撃も防がれた。
だがしかし、そこに僅かな「隙」が生まれた。何度目かの攻撃を繰り出した時、フレデリックの腹部がガラ空きになったのだ。
それを見逃さなかった春風は、
「ここだぁ!」
と叫ぶと、右手に纏わせた火の魔力を大きくし、その形を変化させた。
出来上がったのは、元の拳よりも大きな炎の拳だ。
「いっけぇ!」
そう叫んだ春風は、その炎の拳をフレデリックの腹部に叩き込んだ。
ーーズガン!
「ぬぅ……!」
攻撃をもろに受けたフレデリックは、その勢いで後ろに吹っ飛ばされそうになったが、両足でしっかりと踏ん張った。
しかもよく見ると、攻撃を当てた腹部は全然と言っていいほど燃えておらず、フレデリック自身も、
「ふむふむ。中々やりますねぇ」
と、わざとらしく痛そうに腹部を摩っていたが、特にダメージは受けてないと言わんばかりの表情をしていた。
そんな様子のフレデリックを、春風は何も言わずジッと睨み、それを見ていた仲間達は、
「う、嘘でしょ?」
「あ、あの人、こんなに強かったの?」
と、皆、顔を真っ青にしていた。
そんな状況の中、フレデリックはゆっくりと口を開く。
「いやぁ、凄いですね春風さん。剣や魔術だけでなく、格闘術や魔力そのものの扱いもここまで素晴らしいとは。一体どのような鍛え方をすれば、これほどの技術を身につけられるのですか?」
と、笑顔でそう褒めながらそう尋ねてきたフレデリックに対して、
「……『普通の鍛え方です』としか言えません」
と、春風は真っ直ぐフレデリックを睨みながらそう答えた。
その答えに、フレデリックだけでなく仲間達も「ええ?」と微妙な表情になった。
しかし、春風はそんな彼らに構わず、
「俺からも幾つか質問していいですか?」
と、フレデリックに向かってそう尋ねた。
「おや、何でしょうか?」
「あなた、一体何者なんですか?」
「直球ですね」
「すみません。ですが、俺の攻撃を防いだのは、単純な素手によるものではありませんでした」
「ほほう、わかりますか?」
「ええ、何度も攻撃しながら、あなたが何をしたのか調べました。で、わかったことは、あなたが俺の攻撃を防いだ時、あなたの手から黒いエネルギーのようなものが出てきて、それが俺の攻撃を防いだものの正体だとわかりました」
「……」
「そして、その黒いエネルギーに触れた瞬間、俺が拳や足に纏わせた魔力だけじゃなく、まるで攻撃そのものが吸い込まれたような感覚に襲われました」
「……そこまでわかりましたか」
「ええ。で、ここからは俺の推測ですが……あの黒いエネルギー、『闇』属性の魔力ですね」
「……」
「もう一度質問します。あなた、何者なんですか?」
真剣な表情でそう質問した春風。そんな春風を、仲間達はただ黙って見ていた。
その質問に対して、フレデリックは「フフ」と小さく笑うと、
「ただのギルド総本部長……なのですが、これも、何かの『運命』なのでしょうねぇ」
と、「ハァ」と溜め息を吐きながら、観念したかのような表情になって、
「では、お見せしましょうか」
と、まるで若い男性のような声でそう言った。
その声に春風達の表情が変わった、次の瞬間、フレデリックは白い眩い光に包まれたので、春風達は一斉に目を覆った。
そして、その白い光が消えると、そこにはフレデリックの姿はなく、代わりに黒と白のローブに身を包んだ、20代前半くらいの青年が立っていた。
突然のことに春風達が何も言えないでいると、
「改めて、はじめまして皆さん」
と、青年は穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。
「あ……あなたは……?」
と、春風が恐る恐る尋ねると、
「僕の名前は、フリードリヒ・ヴァイスハイト」
青年は、穏やかな笑みを崩さずに名乗った。
「固有職能『賢者』の固有職保持者です」
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