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第14章 更なる「力」を求めて
第474話 春風編35 1人ぼっちの救出作戦
しおりを挟むさらわれた子供達を救う為、1人「村」を飛び出した中学3年の春風。
彼が目的地である敵のアジトに着いた時、時刻はすっかり夜になっていた。
「……あそこか」
森の木々の間から見たそのアジトは、いかにもSF漫画に出てきそうな「悪の組織の基地」を思わせる雰囲気を出していた。入り口と思われる大きな門には、銃を構えた警備兵のような人達がいて、それが更にその場所の危険性を上げていた。
「どうしよう。こっちは俺1人だし、『生きて帰る』って師匠と約束したから、下手なことは出来ないぞ……」
と、中学3年の春風は困ったような顔でそう呟くと、
「裏に回ってみるか」
と言って、その場からアジトの裏へと移動した。
その後、敵に気づかれないようにどうにかアジトの裏に着くと、
「あ、裏口みっけ!」
と、中学3年の春風が言ったように、そこにはドアが1つあり、しかも丁度今そのドアが開かれて、入り口にいた警備兵らしき人が1人出てきたのが見えたので、
「ラッキー」
と、中学3年の春風はニヤリと笑うと、素早くその警備兵の目の前に近づき、
「すみませーん」
「ん? なん……ぐあ!」
と、その警備兵をドアから引きずりだして動けないように締め上げると、腰のベルトに挿していたナイフを鞘から引き抜いて、
「ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
と、穏やかな表情でその刃を警備兵の首筋に近づけた。
その後、中学3年春風は警備兵から出来るだけ情報を聞くと、
「ありがとう」
と言って、その警備兵をガツンと殴って気絶させ、動けないように装備を全てひん剥いて縛りあげた。
「ふう。ヤローをひん剥く趣味なんてないんだけど、ま、いっか」
そう言うと、中学3年の春風は裏口を潜ってアジトの中へと入った。
アジトの中はかなり近代的な施設のようで、そこには入り口の警備兵だけでなく、白衣をきた人達も大勢いた。
そんなアジト内の廊下を、
「よし、侵入は成功したし、見つからないようにしなきゃな」
と、中学3年の春風は物陰などに隠れながら進んでいた。
「さてと、あの警備兵さんの情報によると、子供達はこの先だったな」
そう言って、裏口で警備兵から聞き出した情報をもとに、子供達が囚われている部屋を見つけると、
「げ、やっぱり見張りがいるなぁ」
と言うように、部屋の入り口には警備兵が2人、銃を持って立っていた。
それを見た中学3年の春風は、
「うん、こういう時は……」
と、持っていたリュックに手を入れて、ゴソゴソと何かを探すと、スッとその手をリュックから出した。その手には、ネジを回して動かすタイプのネズミのおもちゃを持っていた。
中学3年の春風はそのネズミのおもちゃのネジを回すと、入り口に立っている警備兵達に向けて走らせた。
「ん? 何だ?」
目の前現れたネズミのおもちゃを見て、警備兵達が首を傾げると、突然そのネズミのおもちゃの両目がピカッと光り出した。
「「グア! 眩しい!」」
と、驚く警備兵達を前に、ネズミのおもちゃはまるで挑発するかのようにグルグルと走り回り始めた。
「こ、こいつ……!」
それを見た警備兵の1人がそう言うと、ネズミのおもちゃは何処かへと走り出したので、
「「待てぇ!」」
と、警備兵達はそれを追いかけ始めた。
「よし、作戦通り!」
そして、入り口に誰もいなくなったのを確認すると、中学3年の春風は素早く入り口の前に移動し、ズボンのポケットから何かを取り出した。
それは、裏口で警備兵からぶん取ったネームプレートで、その警備兵曰くカードキーにもなっているのだという。
中学3年の春風はそのネームプレートを入り口の側についている機械に当てると、ピンポーンという音と共に入り口が開いたので、
「やったぜ!」
と言ってその入り口を潜った。
そこはとても広い部屋のようで、中には子供達用と思われるおもちゃや絵本などがあちこちに散らばっていたが、
「あ、いたぁ!」
と、中学3年の春風がそう言ったように、その部屋の隅にはさらわれた「村」の子供達が集まって震えているのが見えた。
すると、そのうちの1人である少女が、
「あ、春風兄ちゃん!」
と、中学3年の春風の存在に気づいて声をあげた。他の子供達も、中学3年の春風に気づいて、表情を明るくした。
それが嬉しかったのか、中学3年の春風が子供達のもとへ駆け寄ろうとした、まさにその時、部屋の中にある1つの自動ドアが開かれて、
「っ! 誰!?」
と、そこから1人の人物が現れた。
それは、白衣をマントのように羽織った、女性の格好をした……男性だった。しかも、ご丁寧に髪型も女性のもので、顔には化粧もしていた。
普通ならここで、
「げ、しまった!」
と、驚くところなのだが、
「あれ? あなたは……」
と、中学3年の春風は、その女性の格好をした男性に見覚えがあったのか、すぐに動きを止めた。
するとそこへ、
「おーい、どうしたんじゃあ?」
と、女性の格好をした男性後ろから、白衣を着た老人男性が現れた。
その老人男性を見た瞬間、
「……小田川博士?」
と、中学3年の春風はそう呟くと、自動ドアから現れたその2人に近づいて、
「すみません、小田川丈治博士と、その助手のサンディさんですよね?」
と尋ねた。
すると、小田川丈治と呼ばれた老人男性と、サンディと呼ばれた女性の格好をした男性が驚いて、
「「え、何故儂(私)の名前を!?」」
と、中学3年の春風に尋ねると、
「やっぱり! 俺……いや、僕です、光国春風です! 『愛染総合科学研究科』で働いていた、光国冬夜の息子の!」
と、中学3年の春風は自身の本名を名乗った。
「「え、光国春風?」」
その名前を聞いた丈治とサンディの2人はポカンとなると、
「まさか……」
「春風ちゃん……なの?」
と、思い出したかのようにそう言うと……。
ーーバタン。
2人は仰向けになって倒れた。それも白目をむいた状態で。
「わぁ! ちょ、小田川博士!? サンディさん!?」
と、それを見た中学3年の春風は驚いたが、すぐにハッとなって、
「しまったぁ! 『光国春風』は死んだことになってんの忘れてたぁ!」
と、頭を抱えた。
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