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第14章 更なる「力」を求めて
第463話 春風編24 「幸村春風」と「再会」3
しおりを挟む小学生時代の春風の、大造&日真理夫妻との「再会」が終わると、眩い光と共に景色が変わった。
といっても、場所は同じ喫茶店「風の家」の店内なのだが、働いている者達を見て、春風は「あること」を思い出して、
「あ、これ、俺がオヤジに引き取られてから、1年が経った時の『記憶』だ」
と、小さく呟いた。
そう、今、春風の目の前で働いているのは、「風の家」が出来てから1年経った時の、ちょっとだけ成長した涼司と小学生時代の春風だったのだ。
涼司は最初の頃とは違って立派に店長としての雰囲気を身につけていて、小学生時代の春風の方は、様々な客に対する丁寧な口調や接客態度などがだいぶ出来るようになっていた。
(アハハ、ここまでになるの結構大変だったよなぁ)
と、心の中でそう呟いた後、春風はふと窓の外を見た。
(あ、雨だ)
よく見ると、外は大ぶりの雨が降っていて、それを見た春風は、再び「あること」を思い出した。
「そうだ。この日は確か……」
と、小さく呟くと、店の扉が開かれて、
「ハァ。まさかこんなに降るなんて……」
1人の若い女性が入ってきた。
雨に濡れてびしょ濡れの髪を、懐から取り出してハンカチで拭き取ったその若い女性を見て、小学生時代の春風は、
「いらっしゃいませ……」
と言いかけると、大きく目を見開いて、
「……マリー……さん?」
と、首を傾げた。
その言葉を聞いて、若い女性は「え?」となって小学生時代の春風を見る。
「……春風、なの?」
マリーと呼ばれたその若い女性が、恐る恐る小学生時代の春風に向かってそう尋ねると、
「ハッ!」
と、小学生時代の春風は「しまった!」と言わんばかりに両手で自身の口を塞いだ。
見つめ合う若い女性と小学生時代の春風を見て、涼司と他のお客さんたちが「なんだなんだ?」と困惑した表情を浮かべていると、
「は……」
と、マリーと呼ばれた女性は一歩一歩小学生時代の春風に近づき、
「いや、えっと、あのぉ……」
と、小学生時代の春風は若干戸惑いながら後ろに下がろうとした。
だが、
「春風ぁあああああっ!」
と、マリーと呼ばれた若い女性はそう叫ぶと、ガバッと小学生時代の春風に飛びかかり、思いっきり彼を抱きしめた。
突然のことに春風は、
「ちょ、あの、苦し……」
と、本当に苦しそうに言うと、
「ああ、春風! 生きてた! 生きてたよぉ! そうよ、私、マリーよ! マリーこと間凛依冴よぉ!」
と、マリーと呼ばれた若い女性、凛依冴は目に涙を浮かべながらも、笑顔で小学生時代の春風に向かってそう言った。
目の前で繰り広げられたよくわからない状況に、涼司と他の客達が「なんだなんだ!?」と更に困惑した表情を浮かべていると、
「く、苦しい。た、助けて!」
と、小学生時代の春風が助けを求めてきたので、その言葉にハッとなった涼司は、
「おいあんた! 俺の息子に何しやがる!」
と、すぐに凛依冴を小学生時代の春風から引き剥がした。
「ちょっとぉ、人の感動の「再会」の邪魔しないでよ! ていうか、『俺の息子』って何!? あんたこそ一体何なの!?」
と、引き剥がされた凛依冴が、涼司に怒鳴るようにそう尋ねると、
「俺は幸村涼司! この店の主で、こいつの『お父さん』だ!」
と、涼司は春風を指差しながら答えた。
凛依冴はその答えを聞いて、
「は? あんたが、春風のお父さん?」
と、頭上にいくつもの「?」を浮かべると、
「……なるほど、そういうことね」
と、納得したかのような表情を浮かべた。
その後、凛依冴はギロリと涼司を睨むと、
「お義父様! あなたの息子さんを、私にください!」
と、凛依冴はその場で土下座した。
小学生時代の春風、涼司、そして、他のお客さん達は、その言葉を聞いて暫くの間固まると、
『はぁあああああああっ!?』
と、驚きの声をあげるのだった。
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