511 / 608
第14章 更なる「力」を求めて
第460話 春風編21 ちょっと休憩へ
しおりを挟む涼司に引き取られて、「光国春風」から「幸村春風」となった瞬間、また眩い光と共に景色が変わった。
(あ、戻ったみたいだ)
気がつくと、そこは何もない部屋へと戻っていた。
周りをよく見ると、冬夜や歩夢ら春風の仲間達は全員いるが、皆、その表情は暗く沈んでいたので、その場は何やら重苦しい雰囲気に包まれていた。
そんな状況の中、
(それにしても、今回のはちょっと長かったなぁ)
と、春風は心の中でそう呟いて、「ハァ」と溜め息を吐くと、ゴゴゴという音と共に壁の一部が開いて、新たな通路が現れたのだ。
春風はその通路を見て、
「まだ、次があるのか……」
と、うんざりしたように呟くと、通路へ向かって歩き出そうとしたが、まさにその時……。
ーードン!
「フエッ!?」
と、腰の辺りに何かがぶつかってきたので、驚いた春風は「何だろう?」と思って自分の体を見てみると、幼いイアン、ニコラ、マークの3人が腰にしがみついていたのだ。
「……な、何してんの? 君達」
と、春風がイアン達に尋ねると、
「おねにーちゃん、ちょっと休もうよ」
「「休もう」」
と、イアン達は春風に向かってそう言ってた。
その言葉を聞いて、
「あれ!? も、もしかして、疲れちゃった!? ああ、ご、ごめんね3人共!」
と、春風は大慌てでイアン達に謝罪した。確かに、ここまでずっと着いてきてくれた3人だが、よく考えてみると彼らはまだ幼い子供だという事実に改めて気づかされて、春風の中に罪悪感が芽生えたのだ。
しかし、
「違うよ」
と、イアンが言ったので、春風は「え?」と首を傾げると、
「休んだ方がいいのは、おねにーちゃんの方だよ」
「そうだよ、おねにーちゃん凄く辛そうだよ」
と、ニコラとマークも、イアンに続くようにそう言った。
その瞬間、春風は3人が自分を心配してくれたということに気づいて、
(あ、ああそういうことか)
と納得した。
すると、
「……そうだな」
と、それまで黙っていた担任教師の小夜子が口を開くと、春風に近づいて、
「幸村、この子達の言う通りだ。お前自身の為にも、今は少し休んだ方がいい」
と、春風の肩に手を置いて、優しくそう言った。
春風はその言葉を聞いて、
「先生……」
と小さく呟くと、改めて辺りを見回した。
すると、それまで沈んだ表情をしていた仲間達は、春風を見て「うんうん」と頷いていたので、
「……そうだよな」
と、春風は再び小さく呟いた。
そして、イアン達をソッと優しく抱き寄せて、
「ありがとう、確かに君達の言う通りだよ」
と、春風は穏やか口調で3人にそう言うと、
「それじゃあ、ここらへんで休憩としますか! 今、オヤツを用意するから、ちょっと待ってな!」
と、仲間達を見回しながら、笑顔でそう言った。
それを聞いたイアン、ニコラ、マークは、
「「「やったー! おねにーちゃんのオヤツだぁ!」」」
と、満面の笑みで喜び、それに続くように、他の仲間達も、皆、「ホッ」と胸を撫で下ろし、イアン達と同じように笑顔になった。
その後、春風は仲間達の目の前で特製のオヤツを用意すると、みんなでちょっとした楽しい一時を過ごした。
一方その頃、レギオン「黄金の両手」拠点内の工房では、
「……はう! マイスウィートハニー春風の手作りオヤツですって!?」
と、鍛治師のクリフと共に新たな刀を鍛えていた凛依冴が、何かがビビッときたかのようにそう叫んだ。
だが、
「オイ、凛依冴さんや! 手ぇ休めんでくれ!」
と、クリフがそう怒鳴ってきたので、
「あ、はい、わかりました……」
と、凛依冴はシュンとなったが、すぐに気を取り直して作業に戻った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
184
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる