449 / 608
第14章 更なる「力」を求めて
第398話 リアナ編14 「試練」、終盤
しおりを挟むリアナとアデレード。
「試練」の最中に起きた、2人のまさかの「愛の告白」に、周囲の人達はというと、
「ど、どうしようイオ姉、ウチらすんごいの聞いちゃったんだけど……」
「大丈夫だよシオちゃん、私もどうすればいいかわかんないから」
双子姉妹、彩織と詩織は2人して顔を真っ赤にし、
「へへ、スゲェぜリアナ嬢ちゃん。おじさん、なんだか心にグッと来たぜぇ」
ギャレットは何らや恥ずかしそうにそっぽを向いていた。
そして、
「うぅ。リアナ、成長したのねぇ。ねぇ、シルビアさん……」
と、感動の涙を流すヘリアテスが、チラリとシルビアを見ると、
「……て、シルビアさん! そして、エルネストさん! お2人とも、なんか消えそうになってるんですけどぉっ!?」
と、ヘリアテスが驚いているように、幽霊のシルビアとその夫エルネストは、今にも消えてしまいそうな感じに全身が半透明なっていた。
「どうしよう、あなた。私達の娘が、すんごいことになってるんだけど……」
「そうだね。僕、もうどうすればいいのかわかんないよ」
と、遠くを見つめながらそんなことを言う2人をヘリアテス達は必死になって慰めた。
さて、そんなヘリアテス達をよそに、リアナ達はというと、
「あー、人間の私。今の気分はどう?」
「うん、すっごく最高……って、あなた達も『私』なんだから、わかるでしょ?」
「「うん、わかる」」
と、そんな会話をしていた。その時のリアナは、何処かスッキリしたかのような表情になっていた。
その後、リアナは2人のリアナ達を見て深呼吸すると、その手に持つ燃え盛る薔薇を見て、
「この『試練』に必要なのは、コレじゃない」
と、小さな声で呟くと、その場に燃え盛る薔薇を突き立てた。
「「!」」
それを見て、2人のリアナ達が警戒体勢に入ると、
(ハル、ちょっとだけハルの『真似』をさせてもらうね)
リアナは自分の胸に手を置いて両目を閉じると、
「全スキル、オフ」
と、再び小さな声で呟いた。
次の瞬間、リアナの雰囲気がガラリと変わった。
それを見た2人のリアナ達は更に警戒体勢に入り、ヘリアテス達はたらりと冷や汗を流してシーンと静まり返った。
多くの人達に見守られる中、リアナは精神を集中する。
(……感じる。私の中には、確かに『力』がある)
と、リアナは心の中でそう呟くと、
「私の中に眠る『獣人の力』と『妖精の力』よ……」
ゆっくりと目を開けて、
「今こそ、1つに!」
と、小さく叫んだ。
次の瞬間、リアナの全身から、ブワッと白いオーラが勢いよく溢れ出した。
それを見てヘリアテス達は「うわ!」と驚いたが、それとは対照的に2人のリアナ達は警戒体勢に入ったままで、特に驚いている様子はなく、寧ろ、
「ああ、漸くか」
「うん、漸くね」
と、落ち着いた口調でそう言っていた。
そんな2人を前に、リアナはスッと右腕を上げた。
するとそれに反応したかのように、全身から出ていた白いオーラの一部が形を変えた。
それはまるで、鋭い爪を持つ大きな「手」だった。
そして、
「いっけぇえええええええっ!」
と、リアナが叫ぶと、2人のリアナ達向かって、思いっきり右腕を振り下ろした。
それに続くかのように、白い大きな『手』も振り下ろされた。
すると、バァンという大きな音と共に白いエネルギー波が発生し、それが2人のリアナに襲いかかった。
それを見たヘリアテス達は、
『よ、避けるのか!?』
と、ゴクリと固唾を飲んだが、肝心の本人達はというと、
「「……(コクリ)」」
と、落ち着いた表情でお互い顔を見合わせて頷き合うと、2人とも警戒体勢をとき、スッと両腕を広げて、
「「それでいいんだよ」」
と、小さな声で言うと、2人はまるで受け入れたかのようにそのエネルギー波に飲み込まれた。
その後、ドォーンという大きな音が、その場一帯に響き渡った。
そして、音がおさまったのがわかって、ヘリアテス達がその音の発生源を見ると、2人のリアナ達が立っていた場所は地面が大きく抉れていて、そこにいた筈の、2人のリアナ達の姿はなかった。
「お、終わったのか?」
と、ギャレットが呟くと、
「う……ぐ、あああああああっ!」
と、リアナの悲鳴が聞こえたので、全員すぐにリアナの方へと振り向くと、そこには白いオーラを発生させた状態で苦しそうにするリアナの姿があった。
「り、リアナ! どうしたの!?」
と、アデレードが声をかけると、
「まずいぞ、リアナ嬢ちゃんスキルもなしにあれ程の『力』を振るった所為で、苦しんでやがる!」
と、ギャレットが戦慄した表情でそう言った。
「え、何それどういうこと!?」
と、詩織がギャレットに尋ねると、
「元々スキルってのは、人間が持つ『力』を制御し、スムーズに引き出す為の道具なんだ。俺はリアナ嬢ちゃんと戦ってわかったんだが、嬢ちゃんの中にはスゲェでけぇ『力』があって、それがスキルで制御されていたんだ。だが、嬢ちゃんはそれを捨ててあの『力』を引き出した。あのままだと、嬢ちゃんは溢れ出た『力』に潰されちまう!」
と、ギャレットは戦慄した表情のまま答えた。
その瞬間、
『リアナァ!』
と、ヘリアテス、シルビア、エルネスト、そしてアデレードが、リアナに向かって駆け出した。
「あ、おい! 危ねぇぞ!」
と、ギャレットやジェロームらが止めようとしたが、リアナから溢れ出た「力」に阻まれて、その場を動けずにいた。
「うぅ、お、抑えきれない……!」
と、リアナが辛そうにしていると、
「リアナ!」
「え?」
ヘリアテス、シルビア、エルネスト、アデレードが、リアナに抱きついた。
「お、お母さん! 母さんに父さん! アーデまで! は、早く逃げてぇ!」
と、驚いたリアナがヘリアテス達にそう叫ぶと、
「いや、絶対に離さない!」
「そうよ! 幽霊になって17年、やっとあなたに会えたんだもの!」
「そうだ! 僕達はもう、絶対にリアナから離れないからな!」
と、ヘリアテス、シルビア、エルネストが拒否した。
そして、
「リアナ……」
と、アデレードが優しくそう話しかけると、
「大丈夫だから、私達を信じて」
と言って、優しくリアナの唇にキスをした。
その時……。
ーーほら、もう大丈夫だよ。
ーーうん、大丈夫。
と、不意にそんな声が聞こえて、リアナは安心したのか、ゆっくりと目を閉じた。
すると、勢いよく溢れ出ていた白いオーラが、まるで落ち着いてきたかのようにリアナ達を優しく包み込み、やがて白いドームのようになった。
「と、止まりやがった」
「り、リアナ達、大丈夫なの?」
と、ギャレット達がドームに近づこうとした、まさにその時、
「な、何だって!?」
と、それまで共にリアナ達を見守っていたコールが驚きの声をあげた。
「ど、どうしたんじゃコール!?」
と、ジェロームがコールに尋ねると、
「い、今、見張り役のボーンビースト達が、『敵襲』だって……」
「な、何じゃと!?」
コールの答えにジェロームが驚いていると……。
ドォーン!
と、頭上で大きな音がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる