430 / 608
間章6
間話46 春風とミネルヴァ
しおりを挟む男装の麗人、ミネルヴァ・レーガ。
イタリアのとあるマフィアのボスを務める彼女と春風が出会ったのは、水音が凛依冴の弟子となってから、1年になろうとした時だった。
「……今、何て言った?」
始まりは、凛依冴が探している、ある「古代の秘宝」に関する「手がかり」を見つけたことだった。
そして、もう少しでその「手がかり」が手に入ると思ったその時、ミネルヴァの部下達を相手にひと騒動起こしてしまったのだ。
その結果、「手がかり」はミネルヴァの手に渡ってしまい、春風達はそれを取り返す為に、彼女達と「勝負」をすることになった。
当然、春風達が勝てば「手がかり」は春風達のものになるのだが、相手側が出した「条件」は、
「聞こえなかったのか? 私達が勝ったら、その少年、春風を貰おうと言ったのだ」
そう、「春風を貰う」というものだった。
「……え、何で俺!?」
驚いた春風がミネルヴァに向かって尋ねると、
「これは君だろう? 春風」
と、ミネルヴァは懐から1枚の「写真」を取り出した。
「ん……って、ゲ! こ、これは!」
そこに写ってたのは、とある「村」で「巫女」に扮した時の春風だった。
まさかのことに更に驚く春風に、ミネルヴァはニヤリと笑って言う。
「私のものになれ、春風」
そして現在、エルードにて。
「……そうか、では水音殿が言っていた、とある『文化的財産』と言うのがその『手がかり』で、それを取り戻す為に危険なギャンブル勝負をすることになった『裏組織』と言うのが……」
「私達というわけさ」
ウィルフレッドに続くように、画面の向こうのミネルヴァがそう言うと、
「はい、その通りです」
と、水音が答えた。
その後、話を聞き終えたギルバートが、
「うーん、俺も話は聞いたが、何故かこの話になると水音も春風も詳しくは教えてくれなかったんだよなぁ。まぁ、今ので漸く納得出来たけど」
と、チラリと春風を見て納得の表情を浮かべた。
すると、そこへクローディアが、
「うーむ、話はわかったが、それで、その『勝負』は結局どうなったのだ?」
と、尋ねると、
「勿論、私が勝ったわよ! 春風をあんなのに渡したくはないから!」
と、凛依冴はプンスカとしながらそう答えた。その横では、
「ハハ、あの時は、本当に危なかったですよ」
と、遠い目をした春風が乾いた笑い声をこぼしていた。
そんな春風に、周囲が何とも言えない表情になる中、ミネルヴァが口を開く。
「ああ、そうとも。あの日の『勝負』に負けた時は、本当に悔しかったさ。だけど……」
『?』
「その後、君と一緒に踊った『ダンス』は今も覚えているよ」
と、ミネルヴァがそう言った瞬間、
『だ、だ、ダンスだとぉ!?』
と、周囲が驚きの声をあげた。
更に、
「そう、特に君の素晴らしい『ドレス姿』は、今も私の脳裏に焼きついているよ」
と、ミネルヴァが笑顔でそう言うと、
『ど、ど、ドレス姿だとぉ!?』
と、更に周囲の人達は驚きの声をあげた。特にリアナ、歩夢、イブリーヌ、ジゼル、美羽、アデレード、ルーシー、そして、ミネルヴァの隣にいる明華は、顔を真っ赤にしていた。
そして、全員が春風を見てこう思った。
ーーも、もの凄く見たい!
「……いや、見せないよ! 見せませんから!」
と、春風はそんな彼らに突っ込みを入れた。
そんな春風を見て、ミネルヴァは「ハハ」と笑っていたが、すぐに真面目な表情になって、
「そう、あの時から私は、ずっと君のことを想っていた。そしてそんな君が消えたという話が入ってきた時、私は凄く悲しくなって、『ああ、こんなことになるなら無理矢理にでも自分のものにすればよかった』と後悔もしたんだ」
と、何処か悲しそうな声色でそう言った。
「ミネルヴァさん……」
春風はそんなミネルヴァに向かって、
「あなたにも、ご心配をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げて謝罪した。
すると、ミネルヴァは表情を柔らかくして、
「ああ、そんな、頭を上げてくれ春風。こうしてまた君と話が出来て、私は凄く嬉しいんだ」
と、春風に頭を上げるよう促した。
そして、春風がゆっくりと頭を上げると、
「ああ、そうだな。もし申し訳ないと思っているなら……」
「?」
「私も、君のハーレムに加えて欲しいな」
と、ミネルヴァがとんでもないことを言い出したので、
「だぁあめぇえええええっ! だから駄目だってぇえええええっ!」
と、凛依冴が叫びながら割って入ってきた。
しかし、ミネルヴァはそれに構わず、
「ああ、ついでに1つ我儘を言うとするなら……」
「?」
「その世界での、君のドレス姿を見たいかな」
と、再びとんでもないことを言い出した。
「……いや、着ませんよ! なんてこと言うんですか!? 大体、この場にドレスなんて……」
と、春風が突っ込みを入れようとしたその時、
「あらぁ、あるわよぉ、春風ちゃん」
と、それまで黙っていた皇妃エリノーラが、ポンと春風の肩に手を置いた。
「……あ、あるって、何がですか?」
と、春風が恐る恐る尋ねると、エリノーラは「ハイ!」と何処からか、バッと何着ものドレスを取り出した。
「……いや、何で持ってるんですか!?」
と、春風はエリノーラを問い詰めたが、
「気にしなーい、気にしなーい!」
と、エリノーラは春風を何処かへと引っ張っていった。
「ちょ、ちょっと、誰か、助けてぇ!」
春風は周囲に助けを求めたが、
『エリノーラ様、お願いします!』
と、皆、一斉に親指を立てた。
「りょうかーい!」
「イヤァアアアアアッ!」
その後、春風はエリノーラによって見事なドレス姿にさせられた。
そして、その後もなんやかんやで楽しく宴会が続くのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
184
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる