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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第375話 共にいる為に
しおりを挟む「いっぺん死んで、生まれ変わるんだ」
ヘファイストスが言い放ったその言葉に、その場にいる人達が一瞬固まると、
『ちょおっとぉおおおおおおおっ!』
と、春風をはじめとした全員の怒鳴り声があがった。
因みに、言われた本人である彼岸花はというと、
「ハ、ハハハ、そうですよねぇ。私みたいな存在は、いっぺん死んだ方がいいんですよねぇ」
と、小刻みに体を震わせながら目に涙を浮かべていた。
春風達はそんな状態の彼女を見ながら、
「ヘファイストス様、あなたなんてこと言うんですか!」
「そうです! いくら何でも『死んで』とかあんまりです!」
「見てください! 彼岸花さん思いっきり生きる気力を失くしているじゃないですか!」
と、一斉にヘファイストスに向かってそう怒鳴ると、
「ああ、スマン! 順を追って説明するから、みんな落ち着いてくれ!」
と、ヘファイストスは大慌てで皆に落ち着くよう促した。
それから少しして、漸く全員が落ち着くと、ヘファイストスは「フゥ」と汗を拭う仕草をしながら説明を始めた。
「いいか春風。まずはこの刀だが、このまま使い続ければ、お前さんは間違いなく死ぬ。それは理解出来るな?」
「そう……ですね」
「しかし、俺達『地球の神々』はお前さんには死んでほしくないと思ってる。ならばどうするか? 答えは1つ、それはこの刀を材料に、新たな刀を作ればいい」
「え、彼岸花を材料にですか?」
「そうとも。『人を喰らう妖刀』から、『大切なものを守る守刀』へと生まれ変わらせるんだ」
と説明するヘファイストスに、周囲の人達が「オオッ!」と声を上げるが、
「だが精霊・彼岸花……いや、彼岸花ちゃん」
「は、はい!」
「その場合、お前さんという存在は、一度消滅することになる」
と、彼岸花に向かってそう言ったヘファイストスに、春風達は『えっ!?』と驚きの表情になった。
しかし、そんな春風達を無視して、ヘファイストスは彼岸花に向かって話を続ける。
「わかっているとは思うが、この刀から生まれた精霊のお前にとって、この刀が消えるということは、お前さんの存在も当然消えるということだ。そして生まれ変わった時、お前さんはそれまで過ごしてきた記憶を一切持たない、文字通り『新たな存在』となる。お前さん、その覚悟はあるかい?」
「……」
ヘファイストスにそう尋ねられて、顔を下に向けて黙り込む彼岸花。そんな彼女を、春風は心配そうに見つめると、
「あの、1つ聞いてもいいですか?」
と、水音が「はい」と手をあげた。
「む、どうした水音?」
と、ヘファイストスが尋ねると、
「大体はわかりましたけど、もしその刀が新たに生まれ変わったとしたら、春風の『呪い』はどうなってしまうんですか?」
と、水音は春風の右腕を見ながらそう質問した。
「ああ、それだったら……」
と、ヘファイストスが答えようとしたその時、
「それなら大丈夫。彼にはもう、『呪い』は存在しないから」
と、ヘファイストスの代わりに彼岸花が答えた。
それを聞いて、春風を除いた周囲の人達が『えぇ!?』と驚きの声をあげると、
「ああ、本当だよ。俺の右腕には、もう彼岸花の魔力はないんだ」
と、今度は春風が答えた。
「ちょっとハル、それどういうこと!?」
と、リアナが春風を問い詰めると、
「元々、俺の『呪い』は彼岸花の魔力が変化したものでね、ガストとの戦いの時に彼岸花……ああ、刀の方ね。で、そいつを抜いた瞬間、右腕に宿っていた彼岸花の魔力が刀に吸収されたんだ。だから、今の俺の右腕には、もう『呪い』は存在してないんだよ」
と、春風は右腕をぶらぶらと振るいながらそう説明した。それを聞いて、リアナをはじめとした春風の仲間達は『オオッ!』と喜びの声をあげた。
すると、それまで黙っていた彼岸花が口を開く。
「……そう、彼はもう私の『呪い』から解放されているから、私が消えても、新しい武器を手にすることは出来るよ」
と、彼岸花は笑顔でそう言ったが、何処となく「悲しみ」を宿したその笑顔を見て、リアナ達は「あ……」と気まずいそうな表情になった。
その時だ。
「ちょっといいかしら?」
という声に春風達が一斉に「ん?」と反応すると、春風のポケットの中に入っていた零号【改】からジゼルが出てきた。
ジゼルは彼岸花に近づくと、
「ねぇ、彼岸花ちゃん」
「は、はい、何ですか?」
「あなたは、春風様の側にいたいんだよね?」
穏やかな笑みでそう尋ねるジゼルに、彼岸花は自信なさそうに、
「……はい」
と答えると、ジゼルは穏やかな笑みのまま言う。
「それなら、私と1つにならない?」
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