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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第370話 ヘファイストス再び
しおりを挟むそれは、夢の中でエルードと再会した翌日のことだった。
「じゃあ、リアナも水音も、俺と同じ夢を見たんだね?」
「うん、お父さんとお母さんも一緒だよ」
「僕も同じく」
朝起きてみんなで朝食を済ませた後、春風はリアナと水音に昨日見た夢のことを聞いてみると、2人とも「見た」と答えた。それは、リアナの側にいるループスとヘリアテスも同様だった。
2人の答を聞いて、春風は小さく「そっか」と言うと、
「ねぇ、2人とも夢の中でエルードに聞いた話、どう思う?」
と、春風は再び尋ねた。
すると、リアナも水音も深刻そうな表情になって、
「……正直言うと、かなり衝撃的だなって想いってるよ」
「うん、それは僕も同じだ」
と答えたので、春風は「だよねぇ」と溜め息を吐きながら言うと、
「……じゃあさ、この話、誰かに相談した方がいいと思う?」
と、2人に更に尋ねた。
「「無理」」
即答でした。しかも、その側ではループスとヘリアテスが無言で「ウンウン」と頷いていた。
春風はそんなリアナ達の様子を見て、「ですよねぇ……」と小さく呟くと、
「「「どうすりゃあいいんだよ、もう!」」」
と、春風、リアナ、水音は同時に頭を抱えてそう叫んだ。その叫びを聞いて、周囲の人達は「何事っ!?」と一斉に春風達を見た。
しかし、春風達はそんな状況の中、
「どうしよう、こんなの誰に相談すればいいんだ?」
「絶対に信じてくれないよ、こんなこと」
「ギルバート陛下に話す? それともウィルフレッド陛下? それとも先生かな?」
「いや、多分信じてくれないと思う。寧ろ、『何言ってんだお前ら? 頭おかしいんじゃないか?』って言われるのがオチだよ」
「やっぱそう思う?」
と、頭を抱えたままそう言い合った。
そんな3人を見て、ループスとヘリアテスだけでなく、周囲の人達までもがオロオロしていると、突然春風のズボンのポケットから『ジリリリ!』という大きな音が鳴ったので、ビクッとなった春風はすぐにポケットに手を突っ込むと、そこから音が鳴った原因となったものーー魔導スマートフォン・零号【改】を取り出した。
春風は「なんだなんだ?」と思って零号【改】の画面を見ると、そこにはとある存在名前が表示されていたので、春風はすぐに零号【改】を通話モードにすると、
「はい、もしもし」
と、話しかけた。
すると、
「俺を呼べ、春風」
と聞こえてきた男性の声に従うように、春風は零号【改】の画面を上に掲げた。
次の瞬間、画面の上に大きな魔法陣が描かれて、そこから白いワイシャツに青いジーンズ姿をした、真っ赤な短髪に立派な髭を生やした、見事な筋肉を持つ男性が現れた。因みに素足である。
春風は現れたその男性に向かって、
「おはようございます、ヘファイストス様」
と、挨拶すると、
「おう、おはよーさん」
と、男性ーーヘファイストスはニコリと笑ってそう挨拶を返した。
突然現れたヘファイストスに、周囲の人達が「なんだなんだ!?」とゾロゾロ集まってくる中、
「あの、どうかしたんですかヘファイストス様?」
と、春風が尋ねると、
「お前さんら、昨日夢の中で『この世界の意思』に会ったんだってな?」
と、ヘファイストスは真面目な表情で尋ね返した。
「え、何故それを知ってるんですか?」
と、春風がまた尋ねると、
「前にも聞いたと思うが、お前とオーディンは繋がってるんだ。それは即ち、お前が見た夢はオーディンが見た夢だってことになるわけよ」
と、ヘファイストスはそう答えたので、春風達は「はぁ、そうですか」と納得した。
それを確認すると、ヘファイストスは話を続ける。
「そして、お前さんらはその『世界の意思』の言葉に従って、更に強くなろうと考えてるんだったな?」
「「「はい」」」
「で、その上で春風、俺はお前にどうしても言いたいことがある」
「な、何でしょうか?」
その言葉に春風が少しビビる中、ヘファイストスはゆっくりと手を動かし、
「悪いがその刀、認めるわけにはいかねぇな」
と、春風の腰に挿した彼岸花を指差してそう言ったので、
「ええぇっ!?」
と、春風は驚きの声をあげた。
「な、何故ですかヘファイストス様!?」
と、春風は戸惑った様子でそう尋ねると、ヘファイストスは真面目な表情のまま答える。
「いや何故ってお前、それ『外法』で作られた刀じゃねぇか」
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