ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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間章5

間話29 新たな旅立ち(内緒)

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 それは、春風と水音の「決闘」から少しだけ時が流れた、ある日のことだった。

 セイクリア王国王城内では、異世界「地球」から召喚された、「勇者」こと小夜子とクラスメイト達の訓練が行われていたが、全員何処か訓練に身が入らない様子だった。

 「……」

 特にその中の1人、力石煌良は、あの「決闘」を見てからずっと何かを考えているようで、他のクラスメイト以上に訓練に集中出来ていなかった。

 「「……」」

 そして、同じく「勇者」の1人である渡世学と白銀麗生も、そんな煌良を心配しつつ、彼と同じように何かを考えていた。

 それから訓練が終わると、煌良はいつものように、

 「自主練をしてくる」

 と言って、1人黙々と訓練を続けていると、

 「煌良」

 「ん?」

 不意に名前を呼ばれた煌良が声がした方へと振り向くと、そこには学と麗生がいた。

 「僕達も一緒に良いかい?」

 と、学が煌良に尋ねると、

 「ああ、構わない」

 と返したので、そのまま3人は自主練を続けることになった。その最中、

 「ねぇ煌良」

 と、学が口を開いた。

 「……何だ?」

 「煌良さぁ、何かがあるでしょ?」

 学にいきなりそんなことを尋ねられた煌良は、

 「……何故わかった?」

 と尋ね返すと、

 「わかるさ。そういう時のお前、わかりやすいくらい態度に出ているんだよ」

 と、今度は麗生がそう答えた。

 それを聞いて、煌良は「ハァ」と小さく溜め息を吐くと、

 「学。麗生。お前達は、幸村と桜庭の決闘を見て、どう思った?」

 と、煌良は学と麗生に尋ねた。

 尋ねられた2人は少しの間黙っていたが、真っ直ぐ煌良を見て、

 「……凄く、凄まじいものを感じたね」

 「ああ、私も同じくだ」

 と答えた。

 その答えを聞いた煌良は、

 「そうだ。あの2人の戦いは凄まじい。途中女神の邪魔が入ったが、そこから先も更に凄まじいものを感じた」

 「「……」」

 「特に幸村、『固有職保持者』が何なのかは知らんが、後衛系の職能でありながら、魔術を使えるだけじゃなくあれほどの接近戦をこなす奴の実力を見て、久しぶりにゾクゾクするものを感じたよ」

 「あ、それ僕もわかるよ」

 「そうだな。あいつ、普段学校では大人しそうにしていたが、この世界に来てからいきなり見せつけてくれたな」

 「「あぁ……」」

 その時3人の脳裏に浮かんだのは、セイクリアに召喚された初日の、春風のだった。

 しかしその後すぐに真面目な表情になった煌良は、

 「学。麗生」

 「?」

 「何だ?」

 「俺達は一応、この世界を救う使命を帯びた『勇者』なんだよな?」

 と、再び学と麗生に尋ねた。

 「まぁ、そうだね」

 「うむ。その通りだ」

 そう答えた2人を見て、煌良は答えるのを躊躇ったが、やがて意を決したような表情になって、

 「だが俺は、そんな使命よりも……」
 
 と、最後まで言おうとしたその時、

 「「幸村(君)と戦いたい」」

 と2人に言われて、煌良はポカンとなって、

 「……何故わかった?」

 と、2人に尋ねると、

 「いやだから、わかりやすすぎるんだって」

 「ああ。お前と私達、一体どれくらいの付き合いだと思っているんだ?」

 と、呆れ顔で言われたので、煌良は「参ったな……」と頭を掻いて、

 「ああ、そうだ。俺は奴と戦いたい。故郷とこの世界で培ってきた技術、その全てをぶつけたいと思っている」

 と、2人に真剣な眼差しを向けながらそう言った。

 学と麗生はそんな煌良を見て「ハハ」小さくと笑うと、

 「安心しなよ。それは僕達も同じだから」

 「うむ」

 と、笑顔で煌良に向かってそう言ったので、煌良は少しホッとしたような表情になった。

 その後、夜になって自主練を終えた3人が食堂に向かおうとすると、

 「ん? あれは……」

 「ラルフ先生?」

 と、何処かへ向かっている最中のラルフを見つけた。

 本当ならそのまま食堂へ向かいたい筈の3人だったが、なんとなく気になってしまい、急遽ラルフの後をつけることにした。

 そして、途中で出会った数人の騎士達にラルフが声をかけると、3人は物陰に隠れてその会話を聞いた。

 「お前、モーゼス教主からの命令だ。すぐに『ウォーリス帝国』に行く準備をしろ。準備が済み次第、出発する」

 『ハッ!』

 その内容に、煌良達は驚愕の表情を浮かべた。
 
 ウォーリス帝国。それは、春風と水音がいる国の名前だった。

 そして、ラルフと騎士達がその場を去った後、煌良は背後の学と麗を見て、

 「なぁ、2人共」

 「「?」」

 「俺が今、何を考えているのかわかるか?」

 と、ニヤリと笑いながら尋ねると、

 「「勿論!」」

 と、2人もニヤリと笑いながらそう答えた。

 その後、すぐに自分達の部屋に戻った3人は、自分達が出来る最大限の支度を済ませると、大急ぎでラルフと騎士達、そして五神教会教主モーゼスを見つけ出し、彼らに見つからないようにウォーリスへ向かう馬車の荷台に乗り込んだ。

 そしてそうとは知らないラルフ達は、煌良達を乗せたままセイクリアを出てウォーリスへと向かうのだった。

 翌日、王城では煌良達の行方がわからなくなって大騒ぎになったのは、言うまでもない。

 更にその数日後、ウォーリスで春風と煌良達の戦いが勃発したのもまた、言うまでもない。


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 どうも、ハヤテです。

 というわけで、今日から暫くの間は本編はお休みして、新しい間章となります。

 
 
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