ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第11章 断罪官の逆襲

第302話 救出、そして……

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 (うぅ、水音。恥ずかしいから俺の過去話すの、やめてくれないかなぁ……)

 水音がギルバートらに、「春風が本気でブチキレた時のこと」について話している最中、肝心の春風はというと、

 「求めるは“火”、『ファイア』」

 シュボっ!

 『ぎゃあああああああっ!』

 まだアッシュ達の「大事な部分」を燃やしていた。

 ただ、といっても、ずっと燃やし続けていたというわけではない。ある程度ダメージを与えたところで、

 「求めるは“水”、癒しの雫、『キュアドロップ』」

 と、水の回復魔術で、燃やした部分を治癒した後、

 「求めるは“火”、ファイア」

 と、また火の魔術で燃やすを繰り返していた。

 そして、何度目かの「ファイア」発動後、

 (うん。取り敢えずこんなものか)

 と考えた春風は、視線をアッシュ達から異形の戦車……というより、そこに囚われている少女に移した。

 「……すぐに助けますから」

 と、小さく呟くと、両足に魔力を込めて脚力を強化した後、ダッシュでアッシュ達を通り過ぎて、ジャンプで異形の戦車のボディに飛び乗った。

 (よし、まずは……)

 飛び乗った春風は、早速[英知]のスキルで異形の戦車の解析をしようとしたが……。

 結果は、解析不能。

 なんと、[英知]での解析が出来ないことがわかったのだ。

 (え、解析出来ないの? だったら……)

 仕方ないので、春風は以前作った土の魔術「リーディング」を使うことにした。

 その結果、

 (うん、見つけた)

 と、心の中でそう呟くと、春風はボディの上を歩いて、とある場所で止まった。

 「よいしょっと!」

 そして、魔力で体全体を強化した後、ボディの一部を強引にひっぺがし、その内部を覗き込んだ。

 「みーつけた!」

 そこにいたのは、セイクリア王国騎士の鎧を纏った、4人の男女だった。因みに、男性が2人と、女性が2人だ。

 そう、春風がひっぺがしたのは、戦車の内部に入る為の「ハッチ」のようなものだったのだ。

 「お邪魔しまーす」

 春風はそこから内部に入ると、まずは男性2人を外へと放り投げた。

 その後、残った女性2人を見ると、

 「ど、ち、ら、に、し、よ、か、なっと……」

 と言いながら、女性を交互に指差した。

 「よし、こっち」

 そして、一方の女性を選ぶと、

 「てい!」

 「うっ!」

 もう一方の女性に近づき、当て身で気絶させた。

 「さて、と……」

 春風は彼岸花を抜いて、その切っ先を選んだ方の女性に向けると、

 「申し訳ありませんが、今すぐ小日向さんを解放してください。そうすれば、悪いようにはしませんので」

 と、穏やかな笑みを浮かべてそういった。

 女性は恐怖で涙を流しながらコクコクと頷くと、すぐに操作を始めた。

 次の瞬間、少女・小日向星乃香を閉じ込めていたガラスの筒の一部が開いて、そこから緑の液体が流れてきた。

 「あ、小日向さん!」

 美羽がそう叫んだ後、異形の戦車の中から春風がひょっこりと顔を出した。その腕には、気絶させた2人の女性騎士を抱えていた。

 「よっこらせっと」

 春風は一度地面に降りると、女性騎士達をそっとその場に置いた。

 その後、再び異形の戦車のボディに飛び乗ると、ガラスの筒内部で気を失ってる小日向星乃香を抱き抱えようとしたが、

 (うぉ! 忘れてた!)

 その途中で、彼女が全裸であることを思い出して、春風はすぐに腰のポーチに手を突っ込むと、そこから大きな布を取り出して、それを彼女の体に巻いた。

 (うん、これでよし)

 そして、布を巻き終えた後の彼女を抱き抱えると、すぐに地面に降りた。

 するとそこで、

 (おっと、最後に……)

 と、なにかを思いついたかのように、春風は腰のポーチをとってフタを外すと、

 「えい、収納!」

 『何ぃ!?』

 なんと、そのポーチの中に、異形の戦車を

 その行動を見て、その場にいる誰もが口をあんぐりとした。

 「うん、戦車ゲットォ!」

 そう言って、春風はポーチを腰のベルトにつけると、ちょっとルンルン気分で仲間達のもとへと戻った。

 「みんな、お待たせ!」

 その言葉に反応したのか、それまで呆然としていた彩織がハッとなって、

 「ほ、星乃香ちゃん!」

 と、春風の側へと駆け寄った。

 そしてそれに続くように、詩織も歩夢達もハッとなって、

 「星乃香!」

 「小日向さん!」

 と、一斉に彩織と同じように春風の側へと駆け寄った。

 「フーちゃん、小日向さんは!?」

 歩夢が焦った様子でそう尋ねると、春風は真剣な表情で、

 「大丈夫、命に別状はないよ」

 と答えると、皆「よかった」と言わんばかりにホッと胸を撫で下ろした。

 すると、春風は続けて言う。

 「ただ、かなり弱ってるから、急いで帝城に……」

 と、最後まで言おうとした、まさにその時、

 「まぁてぇ貴様ぁあああああああっ!」

 という叫び声が聞こえたので、春風は「なんだよもう」と言わんばかりにウンザリした表情でその声がした方へと振り向くと、そこには怒りで醜く顔を歪ませたアッシュ達が、それぞれ武器を構えていた。
 
 そんな彼らを見て、

 「く、あいつらまだ……!」

 と、鉄雄が前に出ようとすると、

 「ちょっと待って」

 と、春風が腕をスッと出して「待った」をかけた。

 「お、オイ、ハル、何で……!?」

 と鉄雄が春風に尋ねると、

 「多分だけど、を裁くのは、

 『……は?』

 その言葉を聞いて、鉄雄達が頭上に「?」を浮かべると……。

 ジリリリリリリリ!
 
 という音が、春風の左腕から鳴り出した。
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