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第11章 断罪官の逆襲
第293話 決戦、断罪官26 春風vs「鉄鬼」再び5
しおりを挟むウォーレンを助ける。
春風のその決意を聞いて、ヘファイストスは「よく言った!」と言わんばかりの笑みを浮かべたが、
「『助ける』だとぉ? 上等だコラァ! やれるもんならやってみやがれぇっ!」
と、怒りに燃える「炎の神」を名乗るカルドが、ウォーレンが握っている大剣・エクスプロシオンからそう怒鳴ってきた。
その後すぐに、そのカルドに操られているウォーレンが、エクスプロシオンに更に力を加えた。
操られているとはいえ、ウォーレンから発せられた凄まじい気迫に、ヘファイストスは少し押されそうになったが、春風はそれに怯むことなく、真っ直ぐウォーレンを見て彼岸花を構えた。
そんな春風に、ヘファイストスは話しかける。
「こいつはすげぇ気迫だ。春風、奴を助けるってんなら急いだほうがいいぞ」
「……そうですね、ウォーレンさんの腕が更に黒く染まってるのが見えます。あのままだと両腕どころか上半身まで染まってしまいますよ」
「ああ、そうだな。それで、どうやって奴を助けるつもりだ?」
「まずは、あのムカつく悪党がいる大剣を折ります」
「ほうほう。で、その次は?」
「殴って正気に戻します」
「なるほど……え、マジで?」
そんなやり取りをしていると、力を込め終えたウォーレンが、春風に向かって突撃してきた。
「ヘファイストス様、下がってください!」
「わ、わかった!」
と、若干不安な表情になっているヘファイストスを下がらせると、春風は彼岸花を構えたままウォーレンを迎え撃った。
「……」
ウォーレンは無言でエクスプロシオンを振り上げると、勢いよく春風に向かって振り下ろした。
「っ!」
春風はすぐにそれを避ける。
目標を見失ったその攻撃は、春風が立っていた地面を大きく抉ったが、春風は「ここだ!」と言わんばかりに彼岸花を振り上げると、その真紅の刀身に魔力を流した。
そして、エクスプロシオンの刀身に向かって、その魔力を纏わせた彼岸花を振り下ろした。
ここでエクスプロシオンの刀身を折る予定だったのだが……。
ガキィン!
「うげ! かてぇ!」
と、春風がショックを受けたように、刀身は折るどころかヒビ1つ入れることが出来なかった。
エクスプロシオンからカルドが叫ぶ。
「ハーハッハッハッハ! 馬鹿が、このエクスプロシオンは俺の分身、いわば『神』そのものと言ってもいい! そんな魔剣如きで、折れるわけねぇんだよ!」
そう叫んですぐ、ウォーレンはエクスプロシオンを横に振るった。
「くぅっ!」
春風は間一髪のところで後ろにジャンプして、その攻撃を避けた。
「春風、大丈夫か!?」
地面に着地した春風に、ヘファイストスが話しかけてきた。
そんなヘファイストスに、春風はウォーレンに視線を向けたまま、
「問題ありません!」
と答えたが、
(ヤッベェ、こりゃ相当手強いぞ。早くしないとウォーレンさんが危ないってのに!)
と、心の中ではかなり焦っていた。
すると、
ーー春風君。
「え?」
春風の頭の中で声が聞こえたのだ。
それは、聞き覚えのある声だったので、春風は恐る恐る、
「……もしかして、オーディン様ですか?」
と小さい声で尋ねると、
ーーそうだよ、久しぶりだね。
と、声の主、オーディンはそう答えた。
「お、お久しぶりです。どうしたんですか一体?」
まさかの契約神の声に驚いた春風は、小さい声のまま再びオーディンに尋ねると、
ーー彼のこと、本気で助けたい?
と、尋ね返してきたので、
「はい! 勿論、助けたいです!」
と、はっきりと即答した。
すると、オーディンは「フフ」と笑って、
ーーそれじゃあ、僕の『力』……と言ってもほんの少しだけど、君に貸すよ。
と言った。
「え、良いんですか?」
ーーうん。今から僕が指示を出すから、それに従って。
「わかりました」
そう言うと、春風は彼岸花を両手でしっかり握って構えると、静かに両目を閉じて、大きく深呼吸した。
ヘファイストスを含めた周囲の人達が、
「な、何をする気だ!?」
と言わんばかりの表情をする中、春風はゆっくりと口を開く。
「……契約神オーディンよ、あなたの『槍』、お借りします!」
すると次の瞬間、春風が握る彼岸花が、白い光に包まれた。
その後、眩い光を放って、それからすぐにその光が消えると、春風の手には彼岸花ではなく、白い長い柄に彼岸花と同じ真紅の鋭い穂先を持つ「槍」が握られていた。
「こ、こいつは!」
突然のことに驚いたヘファイストスをよそに、春風はその真紅の穂先に白い柄を持つ槍を構え直すと、
「彼岸花、神槍武装っ!」
と、その槍の名を叫んだ。
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