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第9章 出会い、波乱、そして……
第220話 状況説明、からの……
しおりを挟む「英雄転生召喚。それが、ハル様がやろうとしている『凄いこと』なのですね?」
「はい、その通りです」
「美少女」になった春風の登場により混沌と化した中庭。
あれから少しして漸くその状況が収まると、春風はイブリーヌに、これから自身がやろうとしている「凄いこと」についての説明をした。
「わたくしが謁見の間を出た後に、そのようなことがあったなんて。ですが、何故今夜なのですか? それもこの場所で」
そう尋ねたイブリーヌに対して、春風はある方向を指差した。
イブリーヌは「?」を浮かべてその指を差した方を見ると、
「……月?」
そこにあったのは、夜空に輝く月で、大きさは丁度「満月」だった。
「アマテラス様が言ってたことなんですけど、月の満ち欠けは魔力を含むあらゆるエネルギーに影響を及ぼすんです。ですから、その及ぼす影響が最も大きくなる満月、つまり今夜が、英雄転生召喚の儀式をやるのに最適な時なんです。そして、その満月の光が大きく照らす場所が、この中庭というわけなんです」
「そうだったのですか。それでは、あそこにあるのは何なのですか?」
再びそう尋ねたイブリーヌは、中庭の中央にあるものを指差した。そこには、3つの大きな棺の様なものがあった。それぞれ蓋がしてある為、中を見ることは出来ないが。
「ああ、あれはギルバート陛下がこの時の為に用意してくれた『媒体』です。あれを使って『英雄』をこの世界に召喚するんですよ」
「そ、そうですか。あの、それでもう1つお尋ねしたいことがあるのですが」
「何でしょうか?」
「あの、何故、ハル様はそのようなお姿をしているのですか?」
「あ、やっぱり変ですか?」
「い、いえ、大変似合っておりますし、とってもお美しいです!」
「アハハ、ありがとうございます。この衣装は、師匠が俺の為に用意してくれたものなんです」
「凛依冴様が?」
「ええ、地球のとある村に伝わる、神に仕える巫女が着る衣装だそうです」
「巫女……ですか?」
「ええ。といっても、実際に着るのはある『条件』を満たした男なんですが、詳しい話は……後ほどゆっくりとお話します」
「わ、わかりました」
「で、俺がこれを着ることになった理由ですが、その……『師匠命令』ということで、ご理解していただけると大変嬉しいのですが」
「わ、わかりました」
そう言って、イブリーヌはたらりと冷や汗を流した。その後、イブリーヌがチラリと凛依冴を見ると、彼女は今とっても満足そうな笑みを浮かべていた。
するとその時、ジリリリリリと左腕のアガートラームMkーⅡに装着された零号【改】が鳴り出した。
その音を聞いて、春風は「あ、来ましたか」と言って零号【改】の画面に触れると、その画面の上に魔法陣が描かれて、そこから2人の人物が現れた。
1人は白いワイシャツに青いジーンズ姿の、長い銀髪を持つ凛々しい雰囲気をした女性。
もう1人は黒いワイシャツとジーンズを着た美男子ではあるが、何処か具合の悪そうな長い黒髪と青白い肌を持つ痩せ細った男性だった。
中庭にいる誰もがその2人を見つめる中、銀髪の女性が春風を見て口を開く。
「こんばんは、そしてはじめまして春風君。私の名は、アルテミス。ツクヨミ殿と同じく、『月』を司る女神だ」
その女性、アルテミスがそう名乗った後、それに続く様に具合の悪そうな男性も口を開く。
「ど、どうも、春風君。冥府の神、ハデスです。今日は、よろしくね」
まさかの、ギリシャ神話の「月の女神」と「冥府の神」の登場に、その場にいる者達は皆ゴクリと固唾を飲んだ。そんな状況の中、
「あ、あの、ハル様、この方達は一体……」
と、イブリーヌが恐る恐る春風に尋ねた。
春風はそんなイブリーヌを「大丈夫ですよ」と言って優しく撫でると、
「今夜、英雄転生召喚をサポートしてくれる方達です」
と、穏やかな笑みを浮かべてそう答えた。
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