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第8章 友との決闘
第188話 蠢く者達と、動き出した者達
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*第8章最終話です。
それは、春風と水音の決闘が中止になった後のことだった。
地球でもなければ、エルードでもない別の空間で、
「マールの様子はどうだ?」
と、乱暴者の雰囲気を持つ赤髪の青年が、3人の仲間達にそう尋ねていた。
その中の1人、ちょっとぽっちゃりした体型を持つオレンジ色のショートヘアの女性が、のんびりとした口調で言いにくそうに答える。
「うーん、駄目ですねぇ。完全に怯えきってますねぇ」
女性に続くように、緑色の髪を持つ10代前半くらいの少年が口を開く。
「うん。何を質問しても『拳骨がぁ……拳骨がぁ』って言うだけだったよ。あれ、完全にトラウマになってると思う」
「そうかよ。畜生が!」
少年の言葉に、青年は怒りに震えた。
「幸村春風。まさか、あいつが異世界の神の使徒だったとはな」
「そうですねぇ。しかも今回、その異世界の神の介入を許してしまうなんてねぇ」
「それだけでも許せないってのに、あいつ、桜庭水音!」
「ああ、あいつか」
「私達を裏切るなんてぇ、許せませんねぇ」
3人がイライラしながらそう言い合ってると、
「3人共、愚痴の言い合いはそこまでだ」
と、長い金髪を持つ青年がそう切り出した。
赤髪の青年は「でもよぉ」と文句を言いたげだったが、
「マールの事は、今は放っておこう。彼女はああ見えて切り替えが早い。すぐにでも立ち直ってくれるだろう」
「「「……」」」
「それに、たとえ異世界の神が介入しても、1人や2人勇者がいなくなったとしても、前にも言ったが、最終的には我々が生き残ってればそれで良いのだから。我々は、そうなる為に動けば良い」
金髪の青年の話を聞いて、3人はまだ何か言いたそうだったが、すぐに「わかった」と納得した。
さて、それから時は進んで、その日の夜。
中立都市シャーサルの、ハンターギルド総本部内にある総本部長室では、総本部長のフレデリックが、
「うーん」
と、何やら考え込んでいた。
フレデリックの目の前には、1枚のギルドカードが置かれていた。
そのカードには、1人の少年の名前と、彼が持つ職能の名前が記されていた。
「さて、どうしたものですかねぇ……」
と、フレデリックは1人そんな事を呟いていると、トントンと総本部長室の扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
と、フレデリックがそう言うと、総本部長室の扉が開かれて、
「失礼します」
と、1人の女性職員が入ってきた。
「すみません、そろそろ帰宅の時間だと言うのに呼び出してしまって」
フレデリックが女性職員にそう謝罪すると、
「いえ、私の方は問題ありません。それで、私になんの御用でしょうか?」
女性職員は謝罪を受け入れた後、フレデリックにそう尋ねた。
フレデリックは一瞬答えるのを躊躇ったが、「よし」と意を決して口を開いた。
「実はあなたに、少々頼みたい事がありまして……」
そしてフレデリックは、その女性職員ーーメイベルに、とある「お使い」を頼んだ。
一方その頃。
シャーサル内に、一際大きな建物がある。
そこは、巨大レギオン「紅蓮の猛牛」が、拠点として使っている建物だ。
その中の一室で、2人の女性が向き合っていた。
1人は紅蓮の猛牛のリーダー、ヴァレリー・ウィンチェスター。
もう1人は10代後半から20代前半くらいの若い女性で、背中には彼女の身長と同じくらいの大きさを持つ大剣を背負っている。
その大剣を持つ女性に向かって、ヴァレリーは尋ねる。
「……本気で言っているのか?」
「勿論!」
真面目な表情のヴァレリーに対し、女性は明るい表情でそう答えた。
その態度を見て、ヴァレリーは「ハァ」と溜め息を吐くと、
「わかった。ただし、条件がある」
「何?」
「先程、ギルド総本部から職員が1人ウォーリス帝国に行く事になったそうだ。で、お前にはその職員の護衛をお願いしたい」
「わっかりましたぁ!」
「……ハァ。出発は明後日だ。それまで体をしっかり休めつつ準備をするといい」
「リョーカイ! んじゃ、失礼しまーす」
そう言って、女性は部屋を出ていった。
残されたヴァレリーはというと、
「……やれやれ。本当にあれで『白金級』ハンターとねぇ」
と、ボソリとそう愚痴をこぼした。
さて、ここまで長くなったが、かくして、ウォーリス帝国で行われた春風と水音の、波乱に満ちた決闘は終わった。
しかしそれは、新たな騒動の始まりでもあった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で第8章は終了です。
次回からは本編を一旦お休みして、久しぶりの本編と本編の間的な話になります。
こちらも本編に負けないくらい面白い話を投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。
それは、春風と水音の決闘が中止になった後のことだった。
地球でもなければ、エルードでもない別の空間で、
「マールの様子はどうだ?」
と、乱暴者の雰囲気を持つ赤髪の青年が、3人の仲間達にそう尋ねていた。
その中の1人、ちょっとぽっちゃりした体型を持つオレンジ色のショートヘアの女性が、のんびりとした口調で言いにくそうに答える。
「うーん、駄目ですねぇ。完全に怯えきってますねぇ」
女性に続くように、緑色の髪を持つ10代前半くらいの少年が口を開く。
「うん。何を質問しても『拳骨がぁ……拳骨がぁ』って言うだけだったよ。あれ、完全にトラウマになってると思う」
「そうかよ。畜生が!」
少年の言葉に、青年は怒りに震えた。
「幸村春風。まさか、あいつが異世界の神の使徒だったとはな」
「そうですねぇ。しかも今回、その異世界の神の介入を許してしまうなんてねぇ」
「それだけでも許せないってのに、あいつ、桜庭水音!」
「ああ、あいつか」
「私達を裏切るなんてぇ、許せませんねぇ」
3人がイライラしながらそう言い合ってると、
「3人共、愚痴の言い合いはそこまでだ」
と、長い金髪を持つ青年がそう切り出した。
赤髪の青年は「でもよぉ」と文句を言いたげだったが、
「マールの事は、今は放っておこう。彼女はああ見えて切り替えが早い。すぐにでも立ち直ってくれるだろう」
「「「……」」」
「それに、たとえ異世界の神が介入しても、1人や2人勇者がいなくなったとしても、前にも言ったが、最終的には我々が生き残ってればそれで良いのだから。我々は、そうなる為に動けば良い」
金髪の青年の話を聞いて、3人はまだ何か言いたそうだったが、すぐに「わかった」と納得した。
さて、それから時は進んで、その日の夜。
中立都市シャーサルの、ハンターギルド総本部内にある総本部長室では、総本部長のフレデリックが、
「うーん」
と、何やら考え込んでいた。
フレデリックの目の前には、1枚のギルドカードが置かれていた。
そのカードには、1人の少年の名前と、彼が持つ職能の名前が記されていた。
「さて、どうしたものですかねぇ……」
と、フレデリックは1人そんな事を呟いていると、トントンと総本部長室の扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
と、フレデリックがそう言うと、総本部長室の扉が開かれて、
「失礼します」
と、1人の女性職員が入ってきた。
「すみません、そろそろ帰宅の時間だと言うのに呼び出してしまって」
フレデリックが女性職員にそう謝罪すると、
「いえ、私の方は問題ありません。それで、私になんの御用でしょうか?」
女性職員は謝罪を受け入れた後、フレデリックにそう尋ねた。
フレデリックは一瞬答えるのを躊躇ったが、「よし」と意を決して口を開いた。
「実はあなたに、少々頼みたい事がありまして……」
そしてフレデリックは、その女性職員ーーメイベルに、とある「お使い」を頼んだ。
一方その頃。
シャーサル内に、一際大きな建物がある。
そこは、巨大レギオン「紅蓮の猛牛」が、拠点として使っている建物だ。
その中の一室で、2人の女性が向き合っていた。
1人は紅蓮の猛牛のリーダー、ヴァレリー・ウィンチェスター。
もう1人は10代後半から20代前半くらいの若い女性で、背中には彼女の身長と同じくらいの大きさを持つ大剣を背負っている。
その大剣を持つ女性に向かって、ヴァレリーは尋ねる。
「……本気で言っているのか?」
「勿論!」
真面目な表情のヴァレリーに対し、女性は明るい表情でそう答えた。
その態度を見て、ヴァレリーは「ハァ」と溜め息を吐くと、
「わかった。ただし、条件がある」
「何?」
「先程、ギルド総本部から職員が1人ウォーリス帝国に行く事になったそうだ。で、お前にはその職員の護衛をお願いしたい」
「わっかりましたぁ!」
「……ハァ。出発は明後日だ。それまで体をしっかり休めつつ準備をするといい」
「リョーカイ! んじゃ、失礼しまーす」
そう言って、女性は部屋を出ていった。
残されたヴァレリーはというと、
「……やれやれ。本当にあれで『白金級』ハンターとねぇ」
と、ボソリとそう愚痴をこぼした。
さて、ここまで長くなったが、かくして、ウォーリス帝国で行われた春風と水音の、波乱に満ちた決闘は終わった。
しかしそれは、新たな騒動の始まりでもあった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で第8章は終了です。
次回からは本編を一旦お休みして、久しぶりの本編と本編の間的な話になります。
こちらも本編に負けないくらい面白い話を投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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