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第5章 対決、断罪官
第58話 「断罪官」という者達
しおりを挟むあの後、無事にシャーサルに戻った春風は、その足で白い風見鶏の自室に戻ると、疲労の所為かすぐにベッドに寝転んだ。当然、自作した魔術で体を綺麗にした後で、だ。そして、そのまま食事も摂らずに眠りについた。
翌日、いつもより多めに朝食を摂った後、昨日の出来事を忘れようと、仕事を受けに総本部に向かった。
ところが、
「あれ? 何だろう?」
総本部に着くと、見たこともない集団が、入り口付近に集まっていた。よく見ると、彼らは全員、黒と銀の鎧(メインカラーは黒)を纏っていた。
春風は変な因縁をつけられない様に、スキル[気配遮断]で自身の気配を消すと、そのまま彼らの横を通り過ぎた。その際、チラリと集団を見てみると、全員、何処か疲れている様な表情だった。
その後、総本部内に入ると、横の壁際に寄って、誰にも気づかれない様にスキルを解除した春風は、
「ふぅ。何とか入れたな」
と、一息入れて気持ちを落ち着かせた。
「あの人達、一体何なんだ?」
誰もいないところを確認した春風が、1人、小さい声でボソリとそう呟くと、
「……春風様」
と、左腕のガントレットに装着した零号から、ジゼルが話しかけてきた。
春風はすぐにその場を離れて、さらに誰もいない所に移動すると、
「どうしたんですかジゼルさん?」
と、ガントレット越しにジゼルに話しかけた。勿論、誰かに見られない様に注意しながら、だ。
「……春風様、あの連中には気を付けてください」
「ちょ、ちょっと、ホントにどうしたんですかジゼルさん?」
震えながら話すジゼルに、春風は戸惑いながらも尋ねた。
ジゼルはさらに震えながら答える。
「……あの連中は、『断罪官』という者達です」
「断罪官?」
「はい、『五神教会』が誇る、異端者討伐部隊です」
「!」
久々に聞いた「五神教会」という言葉に、春風は驚いて声を上げそうになったが、すぐにハッとなって周囲を見回した。
そして、誰もいないのを確認すると、再びガントレット越しにジゼルに尋ねた。
「あの、どういう連中なんですか?」
春風の質問に、ジゼルは零号の中から答える。
「はい、彼らは異端者ーー教会、いえ、正しくは『神』に背く者達を、殺す為に作られた部隊なのです」
そう答えるジゼルの声は先程以上に震えていた。
(こ、『殺す為に』って……)
春風がゴクリと固唾を飲むと、ジゼルはさらに説明を続ける。
「それだけでも十分恐ろしいのですが、さらに恐ろしいのは、彼らは異端者だけでなく、それに関わった周囲の人間さえも殺してしまうのです」
「はあ!? そんな、どうして!?」
この説明には流石の春風も声を荒げた。だがすぐに口を塞いで周囲に誰かいないか確認した。そして誰もいないのがわかると、
「どうして、そんな事するんですか?」
と、静かに質問した。
「『異端者に関る事はそれ自体が罪であり、神はそれを許さない』という警告と、『異端者に関わった者は皆こうなるぞ』という見せしめの意味が込められているのです。ですから、ほんの少しでも異端者に関わってしまったら、たとえ相手が女子供でも容赦無く抹殺されてしまうのです。故に、彼らは『虐殺部隊』という異名で呼ばれてもいるのです」
「そんな……」
震えているジゼルの説明に、春風は顔が真っ青になっていくのを感じた。しかし、ふと気になった事があったので、春風はまたジゼルに質問した。
「あの、なんか随分と詳しいですね?」
「それは……」
春風の質問に、ジゼルは言葉を詰まらせるが、意を決した様に話す。
「私も、彼らに殺された身だからなのです」
「!」
「もっと言ってみれば、私の大切な人達も、彼らに殺されてしまったのです」
「な、何だって!?」
ジゼルのその言葉に、春風はショックで絶句するのだった。
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