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第五章・西の離宮

30・アルジェは見た!

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 「アルジェ、美味おいしいな!この肉。」

 もう┉この男は雰囲気というものを知らないのだろうか?
 豪快に肉を食うアスバルを横目よこめで見て、ふうぅ~っ┉と溜息ためいきをつく。

 今、絶賛晩餐中ぜっさんばんさんちゅうだ。
 目の前ではスリ様がほんのちょっぴりづつパンをお食べになっている。
 
 もっとガツガツ食べていいんですよ?スリ様は。

 隣を見ると豪快な食べっぷりのアスバル。
 斜め前には甲斐甲斐かいがいしくスリ様をお世話するロイ王子の姿が。

 スリ様、流石さすが大物おおものですねぇ~王子殿下にお世話されるとは。

 「ロイ王子┉アリかも知れない。スリ様に。」

 私はスリ様にとって幸せなのはロイ王子かアラン王子なのか判断出来ずにいた。
 アラン王子には申し訳ないが、スリ様の心はロイ王子のところにあるのは間違いないのだが┉。

 そんな所にこの晩餐。
 普通ならば、私がこの席に着くなんて考えられない┉。
 一介いっかいの使用人の私──。

 チラッと隣を見る。
 この男はこう見えて伯爵家嫡男ちゃくなんだ。だからこの人は王家の方との同席どうせきは許されるだろう。 
 なら私は?なんだが、スリ様が今回だけでも!と強くお望みになったのだ。
 
 正直、スリ様とは普段から同席させていただいていた。
 ずっと神殿でもそうだったしグラン聖国でも乳母うばであった母の功績こうせきが認められ王家の方々とは割合わりあい親密しんみつにさせていただいていたのだ。

 でも┉ロイ王子との同席はいけなくない?
 ちょっと緊張しながら席に着く。

 ┉ん?┉んん?アルジェは見た┉ロイ王子はスリ様しか見ていなかった。
 私はもちろんアスバルの事も見ていない┉。
 だからアスバルはやりたい放題で肉にかじり付いている。

 「ちょっとアスバル。ロイ王子ってスリ様しか見てなくない?」との問いに

 「あ?いつもの事だろう?放っておけば大丈夫だって!それよりコレ美味しいぞ!食べろ。」と言って骨付の肉を器用に骨を抜いてくれ目の前の皿に取り分けてくれる。

 んん。美味しい!と二人で舌鼓したつづみを打つ。

 アルジェは本当に心配性だな!って頭を撫でられた。
 ┉笑顔でじっと見てそうするので照れてしまう。

 もう┉アスバルの奴!!



 「スリジャ、もっと食べないと!だからあんなに身体細いんだろう?」とロイ王子。

 へっ、何ておっしゃいました?今┉。

 スリ様を見るとお顔が真っ赤になってらっしゃって┉。

 ん?んんんん?身体┉?

 スリ様はロイ王子に、もーーう!とか何とかおっしゃっているのだが。

 ロイ王子という人は、同じ男の私から見ても魅力的だ┉。
 なんだか男の色気が凄いのだ!
 このエキゾチックな浅黒あさぐろい肌は健康的に見えるし、そのムキムキな筋肉の流線りゅうせんがエロい、エロ過ぎる!
 見た事もないようなあざやかな青い瞳は切れ長で鼻筋がスッと通っていて唇が薄いのがエロい、エロ過ぎる!

 結局はエロいのか┉。いいな、エロくて┉うらやましい。

 私は全くエロくないんだろうなーと隣を見る┉。
 と、肉に食らいついていたはずのアスバルがこっちをじっと見ていた┉。

 「アルジェ。ロイを見ていたのか?俺だけを見て┉くれないか?」と何時いつになく真剣な顔で言ってきた。

 ドキン!見つめられて胸がドキドキしている┉。
 そして┉テーブルの下で手をぎゅっと握ってきた──。


 「アルジェ。今夜俺の部屋に来ないか?」


    ──to be continued.

 
 
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