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第一章・グラン聖国のスリジャ

5・湧き立つ心

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 シルファ兄上。あなた何か知ってます?もしかして父上も┉?
 
 ロイ王子との出会いの事なんて話した事あったかな?って疑問に思いながらも、そんな事どうでも良いと思ってしまうほどに心は千々に乱れていた┉。
 
 どうやっても湧き立つ心は止められない!!
 
 『──もしかしてロイ王子にしてみれば迷惑かもしれない┉。』

 『──こんなとうが立ったそれも男、嫌だと思われるかもしれない┉。』

 『──もしも偽装結婚だったとしても平穏無事に過ごせるだけでも有り難いんじゃないか┉? 』
 
 などと、頭の中でぐるぐると悪い方に考えてしまうけど、ほんのちょっと┉本当に少しだけ自分を望んでくれているのかもしれないと言う甘い考えが浮かんでは消える。
 
 でもどちらにしても、考えれば考えるほどロイ王子に対しては申し訳ない気持ち┉。
 
 ──だけどもう一度会ってみたいという気持ちが勝ってしまう。だってずっと会いたいと思っていた!
 
 そのロイ王子との結婚┉そんな夢のような事があって良いのだろうか?
 この先は世捨て人のように死が訪れるまで大人しく過ごすつもりだったのに┉。

 
 一人で赤くなったり青くなったりするスリジャの顔を見ていた三人は、人並みな感情を爆発させるその姿を泣き笑いの表情で眺めていた──。

 「スリジャ。安心しろ!もうあちらの王家には話しを通してある。是非ともお前を迎え入れたいと。だからアレコレ心配していてもキリがないぞ。」
 と父上が可笑しそうに笑う。

 うわ!皆んなに見られてた┉恥ずかしい。
 自分では昔と違ってかなり冷静な人間になれていると思ってきたのに。まだまだダメだな┉。

 「それともう一つ大事な事がある。すまないがアルジェ、一緒にラシア王国に行ってやってくれないか? 一人で他国にやるには心配で┉。」
 任せてください!と弾んだ声でこたえるアルジェに皆安堵する。

 ラシアへ行くように言われたアルジェには申し訳ない気持ちで一杯だけど、着いてきてくれるとやっぱり嬉しい┉。

 「さあ、明日から準備が忙しいぞ!あちらは取り敢えず婚約式をする為になるべく早く来て欲しいと言っている。悩んでる間なんてないぞ!」
 兄上が満面の笑顔でからかうように言ってくる。

 ──心配な気持ちは正直まだあるけど、行ってみるしかない!と前向きな気持ちで執務室をあとにした。
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