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第一章・グラン聖国のスリジャ
2・久しぶりの父との再会
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「久しぶりだな、スリジャよ。15年ぶりか┉」
父の目の端に光るものが見えたスリジャは、もうそれで胸がいっぱいになる。
──あぁ、父は自分の事を忘れてはいなかったのだ┉という安堵と嬉しさで胸に熱いものが込み上げてくる。
「父上、お久しぶりにございます。ご健勝のご様子嬉しいかぎりです。こうして再びお会い出来ました事嬉しゅうございます。」
と、笑顔で父の顔を見つめる。
「スリジャ、御使いとしての務めご苦労であった。お前が神殿に召し上げられてから、一度も会う事が叶わずにいた┉。しかし私はずっと気にかけていたぞ┉。
アルジェには様子を知らせるよう頼んでおいたし、私もせめてもと自分の手の者に見守らせていた。」
そう言えばあの日、何も知らせてはいないのに、すぐに城からの使いがやって来た。
父上からの早々に城に帰ってくるように┉という書状を読んで心底安堵したのだ。
でなければこの先どうしたらいいのかと途方に暮れていたと思う。
きっと父上の言われる『手の者』が御使いを辞する事になったのを知らせたのだろう。
スリジャは父からの愛情を感じ入り思わず泣き出してしまう┉。
こんな歳になって泣くなど、恥ずかしい事だと分かってはいるが嬉しさでどうにも止まらない。
そんな様子の私をそっと抱きしめてくれる父┉。
──私は愛されていた。
大変な思いや寂しい思いも沢山したが、身を削ってやってきた事が父の愛情によって初めて報われた思いがした。
──あれから一ヶ月。
城の暮らしにもやっと慣れてきた。
10歳までここで暮らしていたはずだが、その後の生活とはかけ離れ過ぎているので戸惑ってしまったのだ。
「スリ様、今日は王立図書館に行ってみませんか?ついでに街へも行ってみましょうか。」
アルジェが暇そうにしている私に気を使って提案してくる。
「そうだな┉こうやって何もせずにいるより良いかもしれないね。でも神殿にも行ってみないかい? 新たな御使いに会ってみたいんだけど┉。」
スリジャが神の御使いから離れると、暫くして『印』の発現者が現れた。
今度は12歳の平民の子だった。
──きっと私の代わりとなる者だろう。
恐らく今頃は戸惑い辛くなっているかもしれない┉。私なら助言出来る事も多いと思うし、心の支えになれるかもしれない┉と思う。
神の御使いになる者は子供の時から神殿で暮らす事になる為、読み書きやなどの基本的な学びをそこで受ける事が出来る。
その後癒やしの力の鍛錬に入り、それを使う術を身に着ける。
それからスリジャのように、神託を受ける者として神殿付きの御使いになる者や大陸にある国々に派遣される者に分かれる。
そうして女神アイリスや人々の為に力を尽くした後、大抵40歳前後でその任が解かれる。
割合と年若い段階で御使いとしての役を終える理由┉実は癒やしの力を使うのは本当に自分の身を削る行為なのだ。
ようは命を削って人々に力を与える──だから長くは務める事が出来ない。
スリジャの25歳という年齢で任が解かれるのは異様なほど早い。
スリジャは王族としての誇りをもっている。
それで、人々を助けたい!私の持てる力の全てを┉と思うあまり、いつの間にか許容を超えた力を既に使ってしまっていたのだ。
これはある意味もう普通の25歳としての生命力は残っていないという事──。
だけど、スリジャは後悔してはいない。
愛している人々の、何より自分を愛してくれる人の助けになれる。
父上やアルジェ。兄弟達だって┉。
余生──と言うにはまだ早いかもしれないが、御使いを離れたとしても自分にはまだ何かきっと出来る事があるだろうと思っている。
と、自分を見ているアルジェに気づき、取り敢えず王立図書館に行こうか?と話していたところに、侍従によって父上が私達を呼んでおられるとの言伝てが。
「何の御用だろうか?」
私とアルジェに大切なお話しがあるそうだ┉。
──大切な┉とは何だろう?
父の目の端に光るものが見えたスリジャは、もうそれで胸がいっぱいになる。
──あぁ、父は自分の事を忘れてはいなかったのだ┉という安堵と嬉しさで胸に熱いものが込み上げてくる。
「父上、お久しぶりにございます。ご健勝のご様子嬉しいかぎりです。こうして再びお会い出来ました事嬉しゅうございます。」
と、笑顔で父の顔を見つめる。
「スリジャ、御使いとしての務めご苦労であった。お前が神殿に召し上げられてから、一度も会う事が叶わずにいた┉。しかし私はずっと気にかけていたぞ┉。
アルジェには様子を知らせるよう頼んでおいたし、私もせめてもと自分の手の者に見守らせていた。」
そう言えばあの日、何も知らせてはいないのに、すぐに城からの使いがやって来た。
父上からの早々に城に帰ってくるように┉という書状を読んで心底安堵したのだ。
でなければこの先どうしたらいいのかと途方に暮れていたと思う。
きっと父上の言われる『手の者』が御使いを辞する事になったのを知らせたのだろう。
スリジャは父からの愛情を感じ入り思わず泣き出してしまう┉。
こんな歳になって泣くなど、恥ずかしい事だと分かってはいるが嬉しさでどうにも止まらない。
そんな様子の私をそっと抱きしめてくれる父┉。
──私は愛されていた。
大変な思いや寂しい思いも沢山したが、身を削ってやってきた事が父の愛情によって初めて報われた思いがした。
──あれから一ヶ月。
城の暮らしにもやっと慣れてきた。
10歳までここで暮らしていたはずだが、その後の生活とはかけ離れ過ぎているので戸惑ってしまったのだ。
「スリ様、今日は王立図書館に行ってみませんか?ついでに街へも行ってみましょうか。」
アルジェが暇そうにしている私に気を使って提案してくる。
「そうだな┉こうやって何もせずにいるより良いかもしれないね。でも神殿にも行ってみないかい? 新たな御使いに会ってみたいんだけど┉。」
スリジャが神の御使いから離れると、暫くして『印』の発現者が現れた。
今度は12歳の平民の子だった。
──きっと私の代わりとなる者だろう。
恐らく今頃は戸惑い辛くなっているかもしれない┉。私なら助言出来る事も多いと思うし、心の支えになれるかもしれない┉と思う。
神の御使いになる者は子供の時から神殿で暮らす事になる為、読み書きやなどの基本的な学びをそこで受ける事が出来る。
その後癒やしの力の鍛錬に入り、それを使う術を身に着ける。
それからスリジャのように、神託を受ける者として神殿付きの御使いになる者や大陸にある国々に派遣される者に分かれる。
そうして女神アイリスや人々の為に力を尽くした後、大抵40歳前後でその任が解かれる。
割合と年若い段階で御使いとしての役を終える理由┉実は癒やしの力を使うのは本当に自分の身を削る行為なのだ。
ようは命を削って人々に力を与える──だから長くは務める事が出来ない。
スリジャの25歳という年齢で任が解かれるのは異様なほど早い。
スリジャは王族としての誇りをもっている。
それで、人々を助けたい!私の持てる力の全てを┉と思うあまり、いつの間にか許容を超えた力を既に使ってしまっていたのだ。
これはある意味もう普通の25歳としての生命力は残っていないという事──。
だけど、スリジャは後悔してはいない。
愛している人々の、何より自分を愛してくれる人の助けになれる。
父上やアルジェ。兄弟達だって┉。
余生──と言うにはまだ早いかもしれないが、御使いを離れたとしても自分にはまだ何かきっと出来る事があるだろうと思っている。
と、自分を見ているアルジェに気づき、取り敢えず王立図書館に行こうか?と話していたところに、侍従によって父上が私達を呼んでおられるとの言伝てが。
「何の御用だろうか?」
私とアルジェに大切なお話しがあるそうだ┉。
──大切な┉とは何だろう?
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