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第11章・アリシア危機一髪
82・ルシードのお茶会
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皇居に到着すると、今回はちょっと大人数なのでズラリと馬車が並んでいる。それも物凄く大きくて豪華な馬車ばかりだ。そして来たもの順に降りてゆき、私達の順番がやって来た。それで三人で降りると…
「アリシア様!今日はようこそおいでくださいました」
いつものように満面の笑顔でジャックマンが出迎えてくれている。だけど…他の人そっちのけだけどいいの?よっぽど皆んなの方が身分が高いし…と、そのジャックマンの行動にはちょっと面食らう。公爵家が三人で、侯爵家が一人、一番下の伯爵家が私なんですけど?皇居の侍従長ともなると、相当偉いから大丈夫なのかもね。それにしても今日は、かなりの歓待ぶりだと思う…久しぶりだからかなっ。
皇居の広い玄関ホールには、今回招待された殆どの者が集まっている。家から付いて来た使用人の手前、ほんの少し手を振る程度で声を掛け合うことはしない。いつも騒がしい面々が、まるで借りてきた猫のようになっていて、思わずフフッと笑ってしまう。この中の殆どが皇居でのお茶会など初めてだろうし、緊張するわよね。だけど…私は余裕があるわよ?と胸を張った。
それから各家の使用人達は、いつものように別室へと案内されることになる。他の人達はキョロキョロと見渡し不安気な顔をしている中、ロッテは「行ってきまーす!」と言いながらとっとと行ってしまう。あの子、物凄く慣れてるから!恐ろしい子…。おまけにロメオもかつて知ったる家のように、私に向かって拳を胸の前で握り、ガンバ!ポーズをしてくる…余裕過ぎるでしょう?それに何を頑張るってーのよ。
「緊張するわよね…」
「何だか落ち着かないなぁ」
招待された私達だけになったところで、やっといつものようにブツブツ言い出した。やっぱり皆んな、緊張しているよう。そんな私達にジャックマンは声を掛ける。
「皆様大丈夫ですよ。別に皇帝陛下にお会いする訳じゃありませんから。ウィリアム様は陛下に良く似てらっしゃって、大らかな方ですし」
ウィリアム殿下が?陛下に似てらっしゃるなら大丈夫かも。スティーブ殿下はどこか威圧的なところがあったけれど、そうでないなら良かった!あの優しい皇后様のお子だものね。それにジャックマンがそう言うし…大丈夫な気がしてきた!
それからジャックマンの後ろを、ゾロゾロと付いて行く。すると…ヤバっ!アンドリューと副会長、手足同じ側が出てる~
緊張するのは皆んな同じなのねぇと、どこか安心しながら歩くと、一度も足を踏み入れたことがない皇子宮にやって来る。ジャックマンによると、この皇子宮は二人の皇子の為に造られたとのこと。それがスティーブ殿下がいなくなり、今はお一人でこの大きな建物を使われているそう。こんな大きなところに一人でなんて、お寂しいだろうな…と思ったりして。だけど、どういうお方なんだろう?
上品で洗練された皇后宮とは違い、落ち着いた木目調のどこか男性的な印象の内部。前世日本人の私には、こういった方が懐かしい感じがして落ち着く。
そして奥まで進むと、突然開けたところに出て…
「うわ!何?ここは…」
確かにここは室内なのに、天井が全てガラス張り!サンルームみたいなものかしら?それほど強い光ではなくて、柔らかな日差しが降りそそぐよう。その一面ガラスの窓からは、大きな池と美しい庭園が見える。何度も皇居に来ているのに、まだまだ知らないところがあるのだと驚いて…
「そうこそ!皆さん」
その声に目を向けると、にこやかな笑顔のルシードが。そしてその隣には…
「はじめまして!この帝国の第二皇子であるウィリアムだ。皆さんよりは、かなり年下だが…よろしく頼む。アハハッ」
そう歯を見せて豪快に笑う、ウィリアム殿下に目を奪われる。ホントに…そっくり!まるで皇帝陛下のお若い頃のよう。もちろん私は見たことはないが、お若い時はきっとこういうお姿だったのだろうと思わせる。おまけに三つも年下だなんて思えない!あのお美しい皇后様を思い浮かべて、どこか似てらっしゃると思ってたんだけど…陛下100%!へえぇ、遺伝って不思議だわぁ~
それから一人一人、上の身分から挨拶を返していく。そして…いよいよ私の番が!
「ランドン伯爵家アリシアでございます。本日はお招きいただきまして、光栄でございます。また皇子殿下とは…」
「君がアリシアか!前から会いたいと思っていたんだ。あっ…ゴメンね!挨拶の腰を折ってしまった。でも…初めてだとは思えないし、是非今後とも頼むね」
こんなところまで陛下にそっくり!と、初めて皇帝陛下にお会いした時を思い出す。それに笑顔で「是非お願い致します」と答える。
「さあさあ、知らない間柄でもないし、皆んなこっちに!」
ルシードがそう言って、奥のテーブルへと誘ってくれる。今日はいつもとはちょっと違って、完璧な王子ぶりで迎えてくれている。それにほんの少し笑ってしまいながら近付くと…
「会長はこちらへ。副会長はそっち!アンドリューとブリジットは隣がいいよね?フィリップはその間に!」
などと言いながら席を割り振って…えっ?私ここなの。
何故かルシードとウィリアム殿下に挟まれた席に座る私が。
──今日は…主役じゃないんですけど!何故ここに?
「アリシア様!今日はようこそおいでくださいました」
いつものように満面の笑顔でジャックマンが出迎えてくれている。だけど…他の人そっちのけだけどいいの?よっぽど皆んなの方が身分が高いし…と、そのジャックマンの行動にはちょっと面食らう。公爵家が三人で、侯爵家が一人、一番下の伯爵家が私なんですけど?皇居の侍従長ともなると、相当偉いから大丈夫なのかもね。それにしても今日は、かなりの歓待ぶりだと思う…久しぶりだからかなっ。
皇居の広い玄関ホールには、今回招待された殆どの者が集まっている。家から付いて来た使用人の手前、ほんの少し手を振る程度で声を掛け合うことはしない。いつも騒がしい面々が、まるで借りてきた猫のようになっていて、思わずフフッと笑ってしまう。この中の殆どが皇居でのお茶会など初めてだろうし、緊張するわよね。だけど…私は余裕があるわよ?と胸を張った。
それから各家の使用人達は、いつものように別室へと案内されることになる。他の人達はキョロキョロと見渡し不安気な顔をしている中、ロッテは「行ってきまーす!」と言いながらとっとと行ってしまう。あの子、物凄く慣れてるから!恐ろしい子…。おまけにロメオもかつて知ったる家のように、私に向かって拳を胸の前で握り、ガンバ!ポーズをしてくる…余裕過ぎるでしょう?それに何を頑張るってーのよ。
「緊張するわよね…」
「何だか落ち着かないなぁ」
招待された私達だけになったところで、やっといつものようにブツブツ言い出した。やっぱり皆んな、緊張しているよう。そんな私達にジャックマンは声を掛ける。
「皆様大丈夫ですよ。別に皇帝陛下にお会いする訳じゃありませんから。ウィリアム様は陛下に良く似てらっしゃって、大らかな方ですし」
ウィリアム殿下が?陛下に似てらっしゃるなら大丈夫かも。スティーブ殿下はどこか威圧的なところがあったけれど、そうでないなら良かった!あの優しい皇后様のお子だものね。それにジャックマンがそう言うし…大丈夫な気がしてきた!
それからジャックマンの後ろを、ゾロゾロと付いて行く。すると…ヤバっ!アンドリューと副会長、手足同じ側が出てる~
緊張するのは皆んな同じなのねぇと、どこか安心しながら歩くと、一度も足を踏み入れたことがない皇子宮にやって来る。ジャックマンによると、この皇子宮は二人の皇子の為に造られたとのこと。それがスティーブ殿下がいなくなり、今はお一人でこの大きな建物を使われているそう。こんな大きなところに一人でなんて、お寂しいだろうな…と思ったりして。だけど、どういうお方なんだろう?
上品で洗練された皇后宮とは違い、落ち着いた木目調のどこか男性的な印象の内部。前世日本人の私には、こういった方が懐かしい感じがして落ち着く。
そして奥まで進むと、突然開けたところに出て…
「うわ!何?ここは…」
確かにここは室内なのに、天井が全てガラス張り!サンルームみたいなものかしら?それほど強い光ではなくて、柔らかな日差しが降りそそぐよう。その一面ガラスの窓からは、大きな池と美しい庭園が見える。何度も皇居に来ているのに、まだまだ知らないところがあるのだと驚いて…
「そうこそ!皆さん」
その声に目を向けると、にこやかな笑顔のルシードが。そしてその隣には…
「はじめまして!この帝国の第二皇子であるウィリアムだ。皆さんよりは、かなり年下だが…よろしく頼む。アハハッ」
そう歯を見せて豪快に笑う、ウィリアム殿下に目を奪われる。ホントに…そっくり!まるで皇帝陛下のお若い頃のよう。もちろん私は見たことはないが、お若い時はきっとこういうお姿だったのだろうと思わせる。おまけに三つも年下だなんて思えない!あのお美しい皇后様を思い浮かべて、どこか似てらっしゃると思ってたんだけど…陛下100%!へえぇ、遺伝って不思議だわぁ~
それから一人一人、上の身分から挨拶を返していく。そして…いよいよ私の番が!
「ランドン伯爵家アリシアでございます。本日はお招きいただきまして、光栄でございます。また皇子殿下とは…」
「君がアリシアか!前から会いたいと思っていたんだ。あっ…ゴメンね!挨拶の腰を折ってしまった。でも…初めてだとは思えないし、是非今後とも頼むね」
こんなところまで陛下にそっくり!と、初めて皇帝陛下にお会いした時を思い出す。それに笑顔で「是非お願い致します」と答える。
「さあさあ、知らない間柄でもないし、皆んなこっちに!」
ルシードがそう言って、奥のテーブルへと誘ってくれる。今日はいつもとはちょっと違って、完璧な王子ぶりで迎えてくれている。それにほんの少し笑ってしまいながら近付くと…
「会長はこちらへ。副会長はそっち!アンドリューとブリジットは隣がいいよね?フィリップはその間に!」
などと言いながら席を割り振って…えっ?私ここなの。
何故かルシードとウィリアム殿下に挟まれた席に座る私が。
──今日は…主役じゃないんですけど!何故ここに?
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