【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね？

第四章・Yesterday,Today,Forever…

53・クリスとレオ

　ク、クリス！もしかしてさっきのレオの言葉…聞いてたの！？
　自分が皇太子じゃ無かったら、歯牙にもかけないって言われた…あの発言を？

　「レオ殿下の僕に対するお気持ちは、良く分かりました。でも、あの皇太子じゃ無かったら…発言は否定させて下さい！僕はお二人に…第一王子とレオ殿下と最初に会った時からずっとあなただけを好きだったんです！だから何とか第一王子との婚約を解消したかった…。それで隣国ガシアンの王子を第一王子の部屋へと手引きまでして…」

　──ハッ？何だって…ああ！あれ、クリスの手引きだったの？第一王子が子供出来ちゃったやつ？
　可怪しいと思ってたんだよー！こんなセキュリティバッチリの城の中、それも王族の居住スペースでそんな妊娠しちゃうような行為をスンナリ？って。
　いくらレオ殿下の友人のガシアンの王子だって、手引きする者が居なきゃ入れないでしょ？
　はじめは乃恵留が手引きを？って思ったけど、妊娠してしまった事に一番驚いていたのが乃恵留だったしね。
　二人が恋人同士になって、あちらの学校に一緒に通うとか、隣国に遊びに行く程度の事を考えていたと思うんだ乃恵留は。
　小説の中で病気になって死ぬ可能性がある時期だけこの国に居なければいいんだからね。なのに、まさか自分が皇太子にならなきゃいけなくなる未来なんて、考えてなかったんじゃねぇの？
　
　あとは第一王子本人が手引きを？だけど、それも皇太子殿下だった方だよ？いくら好意を持っていたとしても、第一王子側がそれに応じるって相当覚悟が必要なハズだ…。それも受け側！

　妊娠でもしちゃったら大スキャンダル！！結局その通りになっちゃったんだけどね？その結果今や、死亡した事になっちゃってるワケですけども…

　──やっぱりクリス…恐ろしい子！！ちょっと手段を選ばないところ、あるね？
　
　ほんのちょっぴり怖いけど、それだけレオと結婚したかったんだろうなぁ…と理解は出来る。第一王子の婚約者のままじゃ無理だもん！

　おっと！乃恵留…茫然としてますけど？

　「えっ、クリスが？お前が自由に城内を行き来できる立場を利用して、ガシアンの王子を兄上のところに？」

　「僕だって馬鹿じゃない。あの二人がお互いを想い合っているのが分かってたからだよ！だからほんの少し後押ししてあげただけだよ。」

　そりゃあそうだけどよ…と呟く乃恵留もすっかりと困惑ぎみで…。だけどそんな乃恵留に、クリスは厳しい視線を向ける。

　「だけどもういい！さっきも言ったけど気持ちは良く分かったから。もう僕は諦めます！さようなら…レオ様。」

　目に涙を一杯溜めてレオをじっと見つめてから、クリスは踵を返して去って行く。
　あっ！引き止めようと声を掛けようとしたけどあっという間に遠くに！
　
　「の、乃恵留！いいの？本当に…。もう最後になるかも知れないよ？引き止めるなら今だよ早く！」

　思わず乃恵留の腕を引っ張って追うように言った。だけど乃恵留は動かない。

　「俺よく分からないんだ…どうしたらいいのか。クリスの事は嫌いじゃない！だけど」　
　
　──好きなのかどうか、確証がないんだね？うーん…困った。

　「僕は無理強いはしないよ。だけど、あれ程乃恵留を愛してくれる人は、他にはいないと思う。確かに皇太子という立場からすると政略結婚だってあるからね？愛のない結婚も一般的なのかも。だからこそ愛のある結婚のチャンスだったんじゃない？」

　僕は言いたい事は全て言った！後は本人達の判断だ…そう思ってそろそろ退散する事にした。

　──ミシェルも待ってるだろうしな～帰ってラブラブしよ！

　それから去り際に、前から思っていた事をちょっと思い出して聞いてみる。

　「そう言えばさ、小説の終わり方ってどんなだったの？僕最後まで…って言うか全然読んでなかったからね？知らないんだけど？」

　「ん…小説の最後か？ミシェルとクリスが結婚してメデタシメデタシになって、確か最後の一文は…あなたが主人公なら『真実の愛』の物語をどう紡ぎますか？って感じだったような…」

　ちょっと待ったー！どう考えてもそれは…