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第三章・伯爵家当主マリン

45・愛するが故に

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 いつの間にかベッドで眠ってしまって、それから目を開けると辺りはすっかりと暗くなっていた。

 僕はミシェルは?って思って辺りを見渡すと、ベッドの天蓋の布が下ろされていて、その布の奥に小さな灯りが見える。
 その灯りが映る辺りをめくって見ると、机に向かって書き物をしているミシェルが見えて安心する。

 ──あぁ…やっぱり好きだ!

 ミシェルが僕の一体どこを好ましく思っているのか皆目かいもく分からないけど、ミシェルの事は全てが好き!

 一見いっけん冷たく見えるけど本当は温かい眼差しも好きだし、その高潔さ故融通がきかない性格だけど、意外と柔軟な考えを持っている所も好きだ。
 容姿は言うまでもなく、向かうところ敵なしで完璧。更には僕のようなちんちくりんでも好きでいてくれるのも大好きだ!!結局、非の打ち所がない。

 そんな事を思いながらニヤついていると、僕が起きた事に気付いて微笑み返してくれる。

 「マリン、起きたのか。あぁ…目が腫れてるな?可哀想に。ロテシュ伯爵家にはこちらで泊まる事を連絡してあるから安心しろ。そして今夜は私の側にいてくれ。」

 そう言ってミシェルは、僕の目元をそっと親指でなぞって、優しい口づけを一つ落とす。

 ──僕は愛されている…この上ない幸運だよ。

 それから何か少しでも腹に入れたほうがいいと言われて、消化の良いスープを持って来て貰った。
 ミシェルはスプーンですくって一口づつ食べさせてくれる。
 僕はすっかりと子供のようになって、何の躊躇もなくそれを受け入れて…
 やがて食べ終わったところでミシェルが口を開く。

 「一つだけ確認させてもらってもいいか?私がマリンの先程の話を聞いて、一番気になったことだけど…」

 僕は何だろう?って少し緊張した後、頷いた。

 「マリン、君が元の世界に還ってしまう事は…ないのか?ある日突然私の前から居なくなってしまうような…そうなったら私は、もう生きていられない!」

 僕はそのミシェルの言葉で、ハッと息を呑む。そんなミシェルからもう目を離せない。うっ!

 ──ミシェルは特大の愛で、僕を萌え殺す気なんだろうか?

 僕はそのミシェルからの、これでもか!っていう愛情の一撃を受けて、息も絶え絶えだけど、何とか正気を取り戻して答えた。

 「それは大丈夫!自覚はないけど、そっちの僕は事故でもう死んでいるんだ。それはきっとレオ殿下も。僕達は死んで、こっちの世界に転生したんだと思う。だから安心して!ミシェルに黙って消えたりなんかしないからね。」

 僕は安心して欲しいと自信満々でそう答えたけど、その瞬間バッと抱き締められる。

 「し、死んだのか!?」そう言いながらミシェルは動揺して、痛かっただろ?って身体を擦ってくる。
 …痛いも何も、一瞬だし感じ無かったんだけど?って思ったけど、もはや抵抗するすべもなし!

 ──愛されるって、重いんだなぁ~!フゥーッ…

 僕はそう悟りながら、もしも乃恵留がクリスに同じように告白したとして、きっと僕と同じ流れになるのは決まりだな!と、根拠のない確信が湧いてきた。
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