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第三章・伯爵家当主マリン
35・そしてプロローグへと
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僕はその日、朝早くにオリヴァーに叩き起こされる。
「マリン様、お休み中のところ申し訳ありません。すみませんが、今直ぐ起きていただけますか?至急お伝えしないといけない事がございます!」
そんなオリヴァーの、只ならぬ声に僕は飛び起きる。
「な、何?どうしたの?伝えたい事って…」
寝起きのまだぼうっとした感じの僕は、目を擦りながらそう聞いた。
「落ち着いて聞いて下さい。これはロテシュ伯爵家に長年勤める使用人から聞いた話しですので、まず間違いありません!ロテシュ伯爵様と兄上のベンジャミン様が馬車の事故でお亡くなりになりました。一昨日の事です。」
──はぁっ?あのロテシュ伯爵と兄上が…死んだだって?まさか!!
僕は余りの事に声が出なかった。
悲しいんじゃない!冷たいかもしれないけど、悲しくはないんだ。だって、虫けらのように扱われたからね?悲しい筈がないじゃないか。
だけどあの殺しても死にそうになかった、あの人達が…
それに肝心な事は、小説の中にそんな記述がなかったように思う。
乃恵留も言っていたけど、何もかもが小説通りになるなんて事はないんだ。
だけど何もしなかったとしたら?そうなると小説の内容と同じになる可能性が高いだろう。
今回は何もしていないのに、変わった!
直接何かをしたのではないけれど、僕の行動からそうなったのかもしれないね?
それは、もしかしたら僕とミシェルの関係性なのかも…
──それで一つ、疑問が湧く。
今回のロテシュ伯爵家の二人が死んだら、僕達の関係がどう変わってしまうのだろう?もしかして…
「ところでオリヴァー、今後ロテシュ伯爵家はどうなるの?本妻の子供はベンジャミンだけだったよね。僕の他にも誰かいたりする?兄弟だけじゃなくて、跡目を継げるそんな存在が?」
それにオリヴァーは考え込む。それから遠慮がちに口を開いた。
「私の知るところではマリン様だけです。領地の方に分家筋の者が居るようですが、嫡流なのはマリン様ですから。マリン様を差し置いて、継げる者は居ないと思います。」
──やはりそうなのか。
「それじゃあ、僕とミシェルはどうなる?同じ嫡男同士という事になるね?もしもそうなったら…」
オリヴァーは僕の問いに、今まで見た事もないような苦しそうな表情になる。そして…
「そういう場合は、結婚は白紙になるのではないかと。どうしても結婚したい場合は、一旦離れてそれぞれ当主になり、どちらかが他に後継ぎを立てる場合も。どちらにしても直ぐに結婚するのは難しくなると思います。」
──これはまさしく僕達の結婚が困難になった…という事だ。
これこそ小説の「強制力」じゃないのか?
僕達の結婚が、白紙…もしくは延期になろうとしている。
このまま平穏だったら、後半年くらいで結婚していたかも知れない。それがこの事故で…
ミシェルの気持ちを疑いたくはないけれど、僕とクリスの間で揺れているとしたら、その運命を受け入れて一旦離れてみるのも、一つの方法かも…
と言うより、その「強制力」に乗ってみる!が正解かもしれない。ワザと離れるんだ。
本当に「運命」という物があって、この先にミシェルとの未来があるのだとしたら小説なんて関係ない!また僕達は共に暮らし結婚するだろう。
正直、僕に伯爵家当主になる自信は無いが、前世を思い出してからは色んな事にチャレンジしてきた。
それならまたやれるのでは?と思うんだ。
──元々その座は僕の物では無かった。だから、失敗した時はその時だし!
そう前向きに思って、怖がらずに前に進むぞ!って息巻いていたら、執事のスミンさんの声が。
「早朝に申し訳ありません。ミシェル様が、マリン様に執務室に来て欲しいとおっしゃっていますが…」
──来た!恐らく父と兄の件だ。ちょっとミシェルの反応が気になるけど、きちんと僕の気持ちを伝えなくては!と、自分を奮い立たせて、はい!今直ぐ参ります…と返事をした。
「マリン様、お休み中のところ申し訳ありません。すみませんが、今直ぐ起きていただけますか?至急お伝えしないといけない事がございます!」
そんなオリヴァーの、只ならぬ声に僕は飛び起きる。
「な、何?どうしたの?伝えたい事って…」
寝起きのまだぼうっとした感じの僕は、目を擦りながらそう聞いた。
「落ち着いて聞いて下さい。これはロテシュ伯爵家に長年勤める使用人から聞いた話しですので、まず間違いありません!ロテシュ伯爵様と兄上のベンジャミン様が馬車の事故でお亡くなりになりました。一昨日の事です。」
──はぁっ?あのロテシュ伯爵と兄上が…死んだだって?まさか!!
僕は余りの事に声が出なかった。
悲しいんじゃない!冷たいかもしれないけど、悲しくはないんだ。だって、虫けらのように扱われたからね?悲しい筈がないじゃないか。
だけどあの殺しても死にそうになかった、あの人達が…
それに肝心な事は、小説の中にそんな記述がなかったように思う。
乃恵留も言っていたけど、何もかもが小説通りになるなんて事はないんだ。
だけど何もしなかったとしたら?そうなると小説の内容と同じになる可能性が高いだろう。
今回は何もしていないのに、変わった!
直接何かをしたのではないけれど、僕の行動からそうなったのかもしれないね?
それは、もしかしたら僕とミシェルの関係性なのかも…
──それで一つ、疑問が湧く。
今回のロテシュ伯爵家の二人が死んだら、僕達の関係がどう変わってしまうのだろう?もしかして…
「ところでオリヴァー、今後ロテシュ伯爵家はどうなるの?本妻の子供はベンジャミンだけだったよね。僕の他にも誰かいたりする?兄弟だけじゃなくて、跡目を継げるそんな存在が?」
それにオリヴァーは考え込む。それから遠慮がちに口を開いた。
「私の知るところではマリン様だけです。領地の方に分家筋の者が居るようですが、嫡流なのはマリン様ですから。マリン様を差し置いて、継げる者は居ないと思います。」
──やはりそうなのか。
「それじゃあ、僕とミシェルはどうなる?同じ嫡男同士という事になるね?もしもそうなったら…」
オリヴァーは僕の問いに、今まで見た事もないような苦しそうな表情になる。そして…
「そういう場合は、結婚は白紙になるのではないかと。どうしても結婚したい場合は、一旦離れてそれぞれ当主になり、どちらかが他に後継ぎを立てる場合も。どちらにしても直ぐに結婚するのは難しくなると思います。」
──これはまさしく僕達の結婚が困難になった…という事だ。
これこそ小説の「強制力」じゃないのか?
僕達の結婚が、白紙…もしくは延期になろうとしている。
このまま平穏だったら、後半年くらいで結婚していたかも知れない。それがこの事故で…
ミシェルの気持ちを疑いたくはないけれど、僕とクリスの間で揺れているとしたら、その運命を受け入れて一旦離れてみるのも、一つの方法かも…
と言うより、その「強制力」に乗ってみる!が正解かもしれない。ワザと離れるんだ。
本当に「運命」という物があって、この先にミシェルとの未来があるのだとしたら小説なんて関係ない!また僕達は共に暮らし結婚するだろう。
正直、僕に伯爵家当主になる自信は無いが、前世を思い出してからは色んな事にチャレンジしてきた。
それならまたやれるのでは?と思うんだ。
──元々その座は僕の物では無かった。だから、失敗した時はその時だし!
そう前向きに思って、怖がらずに前に進むぞ!って息巻いていたら、執事のスミンさんの声が。
「早朝に申し訳ありません。ミシェル様が、マリン様に執務室に来て欲しいとおっしゃっていますが…」
──来た!恐らく父と兄の件だ。ちょっとミシェルの反応が気になるけど、きちんと僕の気持ちを伝えなくては!と、自分を奮い立たせて、はい!今直ぐ参ります…と返事をした。
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