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第二章・小説の中の僕

33・ついにこの時が┉

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 つ、ついにこの時が来てしまった…

 出来る事なら一生会わせたくはない!そう願っていた僕を嘲笑あざわらうかのように二人は出会ってしまう。

 あぁミシェル、あなたは結局小説の強制力に負けてしまうのか──?



 (その半日前…)

 この前、殿下と会ってからミシェルに物凄く警戒されてしまって、暫くの間はリンダさんの店に行くのは禁止になった。
 もちろんミシェルと行くならOKで。それ以外はオリヴァーに作品を届けて貰ったり、伝言して聞いてきてもらったり…

 あれだけ怒らせたから仕方がないんだけどね?
 だから秘密裏に手紙のやり取りをしている。
 リンダさんに頼んで、お店で交換してもらう仕組みだ。
 だったらミシェルにはバレないし、自分が出しに行く事もない。
 殿下は誰に頼んでいるのかは知らないけど、僕の場合はオリヴァーがお店に行く時に持って行って、返事を受け取ってきてもらっている。

 その手紙によるとレオ殿下の兄上、第一王子の真相はこうだ!
 この世界では二年前死んだ事になっているけど、小説の中では一年前流行り病で亡くなると…
 僕の母親と同じ病でその時期に亡くなる筈だったのが、この国に居なければいいのでは?と考えたそうだ。

 小説の中でも隣国に留学に行ったレオはそこで隣国ガシアンの第二王子と親友になる。
 同じ王子同士という事で意気投合してお互いの城に滞在するほどになったそうだ。
 その時、実は第一王子とガシアン第二王子が恋に落ちる。
 だけど、その時はもうその病に罹患していて呆気なく死んでしまう。

 だからレオはそれを早めてしまえば…と思ったと。
 それで小説よりもかなり早く留学したらしい。

 まんまと上手くいったのだが、困った事に妊娠してしまう…この国の王子の方が!受けだったのね?

 それで皇太子だったが為に世間には発表出来ずに、二人でガシアンに旅立って行った。
 そこで無事出産して三人で今も幸せに暮らしている。おまけに二人目を只今妊娠中らしいよ?

 それはメデタシメデタシ!なんだけど…クリスだよ!! 

 なんで男なの?『令嬢』って、小説に書いてあったよね?

 何だか複雑な気持ちになってきた…だって『女の人』だから諦めなきゃ!って思えてたんだよ?
 ミシェルは異性愛者で僕は男で対象じゃないんだ!って。
 最近のミシェルの僕に対する行動で、異性愛者でもないんじゃね?って思ってはいたけど…
  
 『同じ男』なら…全く意味合いが違ってくる。
 だから僕はそれに対する対策を考えられずに居たんだ…

 そんなある日、珍しくミシェルが朝から出掛けていた。夜遅くまで帰らないという。

 僕はちょっとした出来心で久しぶりに出掛けようか?って。
 あれから三ヶ月経ち、もうすっかり初夏だ。
 気持ちの良い季節の街、見てみたいなー!自由に。
 そう思い付いてオリヴァーを誘う。

 「ええっ!ミシェル様にまた怒られても知りませんよ~?前の時、結局次の日の昼までミシェル様の寝室から出して貰えなかったじゃないですか?今度そうなったら…怖い!!」
 オリヴァーはそう言ってブルブル震える。

 確かにあの時、大変だったけどさ。次の日声出なかったもんね?だけど…今日はバレないんじゃない?そう言って頼む。

 「私は責任持てませんよ?それでも良ければ…。バレたらマリン様だけで罰受けて下さいよ~!」

 僕はうんうん!分かった!!って答えて、やっと了承してもらう。
 今回は以前みたいに通用門からそっと出た。

 ──ひっさしぶりの自由~!!はーあ、気持ちイイ!

 今日は特に予定も無いし、久しぶりに買い食いしちゃう?って、オリヴァーと二人屋台の店がある場所に向かう。
 ここは人で溢れていて、いい匂いの食べ物も沢山あって心が躍る。

 オリヴァーと色々買って食べてみたりして満喫して大満足だった。
 そろそろバレる前に早めに帰ろうか?ってなり、帰路を急ぐ。
 この辺りは初めて来るところだな?って見渡しながら歩いていると…一軒のレストランに目を向ける。
 
 高級そうなその店は、通りに面してガラス張りになっていて、店内が少し見える。

 ──わっ、オシャレ~!こんな店にミシェルと二人で来てみたいな!他のお客さんも皆んな素敵なミシェルに釘付けになるだろうなぁ。
 
 そう思って微笑んでいると、その店内の一つの席が目に入る。
 そこに赤毛の人物がこちらに背を向けて座っていたからだ。

 ──あの鮮やかな赤毛は…もしかしてクリス?
 あれ程の赤毛って、なかなか居ないよね!?

 そう考えて、更に目を凝らしてじっと見た。
 その赤毛の人は一人で座っていて、それから俯いていた顔を上げた。

 ──やっぱり!あれはクリスだよ。こんな高級な店で一人?待ち合わせなのかな…?

 次の瞬間、クリスは笑顔になって手を振っている。
 その先に目を向けると…僕は衝撃を受けた!!

 ──ミ、ミシェル!!どうして?何でクリスと…

 この前…と言っても三ヶ月前だが知らないって言った。名前を聞いても、知らないって!

 もう既に二人は…出会ってた?

 言い知れない不安にさいなまれて、震えて立っていられない…

 な、何でミシェルは嘘を!?
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