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第一章・僕が公爵家に居るワケ
19・皇太子殿下の謎
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こ、皇太子殿下だぁ~!?なんで?
「私ではなくて、マリンに来ているのですか?手紙が。マリン、皇太子殿下と面識が?」
流石のミシェルも驚いている様子で、そう聞いて僕の返事を待っている。
「僕は全く知りません!この国の王族なんて、見た事もありませんから!」
僕は激しく首を横に振りながらそう言ったけど頭の中が真っ白になっていた。
──だって、僕は元平民だよ?それも田舎の村出身で。面識どころか、一目でさえも見た事がない。それに、このまま公爵家に居るのならまだしも、追い出されると分かってからは、一生関わる事もないって思ってたから、興味も皆無で。
そう言えば、ロテシュ家でも勉強してなかったな?王族の事についてなんて…
でも、ミシェルは違うよね?公爵家といえば、王族と近い立場の筈だ。
きっと面識もあるだろうし、お話した事だってあるだろう。
それでちょっとだけ聞いてみる。
「ミシェル様はもちろん面識がお有りですよね?どういった方なんでしょうか?」
それにはミシェルは何故か、うーんと唸って考え込む。
「私でさえも、お会いしたのは数回程度だ。実は今の皇太子殿下は第二王子なんだ。元々第一王子が皇太子だったのだが、二年ほど前にお亡くなりに。それで急遽第二王子が。だけどちょっと変わった方で…。ずっと城から離れて生活されていたんだ、それまでは。」
──えっ、何か複雑そうだね?
そんな変わった性格の殿下が僕に何の用なのよ~。
全く思い当たる事がなくって困惑しきりだが、埒が明かないので意を決して手紙を恐る恐る開封してみる。
すると、僕が作った刺繍の作品を見たと書いてある。そして…えっ、僕の作品が欲しいって!?でも何で作ったのが僕だって分かったのー!
──なんか、怖っわ!!
「どうしよう…皇太子殿下が僕の刺繍の作品が欲しいと。でも僕は、リンダさんにもロテシュ家のマリンだって言って無かったんです!どうして僕だと分かったんでしょうか?」
そう言った後に、待てよ?って思う。記憶の中に引っかかるものが…
「もしかして、皇太子殿下って金髪碧眼ですか?それに若くてお綺麗な方なんでしょうか…」
この前、リンダさんが言っていた『花鳥風月』デーブルクロスを買った人。
僕の名前を聞いていた…っていう。
「そうだ!金髪碧眼で確か、マリンと同じ歳だったと思う。それに見目も麗しい方だと思うが…?」
──やっぱり!でもベタな展開だね?王子様って金髪碧眼じゃないといけない訳~?そのままじゃん!
皇太子の力を以ってすれば、『カイト』の素性を調べることなんて、容易いのかもしれない…
「やっぱりそうだったのですね。以前リンダさんのお店でその風貌の方が僕の作品を買っていったと。恐らく、その方が皇太子殿下だったのだと思います。」
だけど手紙では…お城に来てくれって書いてある。
ここから遠くに見えているあの城に行くの?僕が?何だか怖い…
僕は急に不安になってしまって、僕なんかが行っていいの?って落ち込む。
そんな様子の僕をミシェルは心配そうにじっと見つめて、それから口を開く。
「では、私も一緒に行こうか?返事にそう書いておけばいい。それに殿下に作品を見せるとなると、いくつか必要だろうし一ヶ月…いや、二ヶ月後くらいにするか。それなら用意出来そうか?」
ミシェルがそう優しく言ってくれて、僕は涙が出そうだった。それに、忙しいのに一緒に行ってくれるだなんて…
本当に涙が滲んできて、それを拭いながら頷いて、是非それでお願いします!って答えた。
──もーう!ミシェルが優しい。優し過ぎるよー!ホントに好きになっちゃうだろ?
僕はそのミシェルの気遣いに感謝して、皇太子殿下を満足させられる自信はないけれど、精一杯やってみよう!って思えた。それに、何よりもミシェルに渡す誕生日プレゼントも頑張らなきゃ!
急にやる気が漲って、これ以上はマズい…って分かっているけど、また一歩ミシェルに近付けたような気がして嬉しかったんだ。
「私ではなくて、マリンに来ているのですか?手紙が。マリン、皇太子殿下と面識が?」
流石のミシェルも驚いている様子で、そう聞いて僕の返事を待っている。
「僕は全く知りません!この国の王族なんて、見た事もありませんから!」
僕は激しく首を横に振りながらそう言ったけど頭の中が真っ白になっていた。
──だって、僕は元平民だよ?それも田舎の村出身で。面識どころか、一目でさえも見た事がない。それに、このまま公爵家に居るのならまだしも、追い出されると分かってからは、一生関わる事もないって思ってたから、興味も皆無で。
そう言えば、ロテシュ家でも勉強してなかったな?王族の事についてなんて…
でも、ミシェルは違うよね?公爵家といえば、王族と近い立場の筈だ。
きっと面識もあるだろうし、お話した事だってあるだろう。
それでちょっとだけ聞いてみる。
「ミシェル様はもちろん面識がお有りですよね?どういった方なんでしょうか?」
それにはミシェルは何故か、うーんと唸って考え込む。
「私でさえも、お会いしたのは数回程度だ。実は今の皇太子殿下は第二王子なんだ。元々第一王子が皇太子だったのだが、二年ほど前にお亡くなりに。それで急遽第二王子が。だけどちょっと変わった方で…。ずっと城から離れて生活されていたんだ、それまでは。」
──えっ、何か複雑そうだね?
そんな変わった性格の殿下が僕に何の用なのよ~。
全く思い当たる事がなくって困惑しきりだが、埒が明かないので意を決して手紙を恐る恐る開封してみる。
すると、僕が作った刺繍の作品を見たと書いてある。そして…えっ、僕の作品が欲しいって!?でも何で作ったのが僕だって分かったのー!
──なんか、怖っわ!!
「どうしよう…皇太子殿下が僕の刺繍の作品が欲しいと。でも僕は、リンダさんにもロテシュ家のマリンだって言って無かったんです!どうして僕だと分かったんでしょうか?」
そう言った後に、待てよ?って思う。記憶の中に引っかかるものが…
「もしかして、皇太子殿下って金髪碧眼ですか?それに若くてお綺麗な方なんでしょうか…」
この前、リンダさんが言っていた『花鳥風月』デーブルクロスを買った人。
僕の名前を聞いていた…っていう。
「そうだ!金髪碧眼で確か、マリンと同じ歳だったと思う。それに見目も麗しい方だと思うが…?」
──やっぱり!でもベタな展開だね?王子様って金髪碧眼じゃないといけない訳~?そのままじゃん!
皇太子の力を以ってすれば、『カイト』の素性を調べることなんて、容易いのかもしれない…
「やっぱりそうだったのですね。以前リンダさんのお店でその風貌の方が僕の作品を買っていったと。恐らく、その方が皇太子殿下だったのだと思います。」
だけど手紙では…お城に来てくれって書いてある。
ここから遠くに見えているあの城に行くの?僕が?何だか怖い…
僕は急に不安になってしまって、僕なんかが行っていいの?って落ち込む。
そんな様子の僕をミシェルは心配そうにじっと見つめて、それから口を開く。
「では、私も一緒に行こうか?返事にそう書いておけばいい。それに殿下に作品を見せるとなると、いくつか必要だろうし一ヶ月…いや、二ヶ月後くらいにするか。それなら用意出来そうか?」
ミシェルがそう優しく言ってくれて、僕は涙が出そうだった。それに、忙しいのに一緒に行ってくれるだなんて…
本当に涙が滲んできて、それを拭いながら頷いて、是非それでお願いします!って答えた。
──もーう!ミシェルが優しい。優し過ぎるよー!ホントに好きになっちゃうだろ?
僕はそのミシェルの気遣いに感謝して、皇太子殿下を満足させられる自信はないけれど、精一杯やってみよう!って思えた。それに、何よりもミシェルに渡す誕生日プレゼントも頑張らなきゃ!
急にやる気が漲って、これ以上はマズい…って分かっているけど、また一歩ミシェルに近付けたような気がして嬉しかったんだ。
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