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祝!奨励賞☆投票御礼・番外編
99・兄として出来ること
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「うん…ア◯エルって誰?」
ジェイデンが不思議そうな顔をして僕を見ている。やべぇ、赤髪といえば…で、あの御馴染みの人魚姫を想像して思わず声に出ちゃったよ?
まあまあいいから!と誤魔化しながら、父さんの腕の中の赤ちゃんを笑顔で覗き込む。紅葉のような小さな手をギュッと握って、スヤスヤと眠っている。そんなイザベラを見ていると、誰もが笑顔になって…
「かっわいい~!癒されるよなぁ。だけどさ、父さんが面倒を見ているの?大変じゃないかな。それにしてもイーライのやつ、こんなに小さな子供を置いてどういうつもりで…」
そう口にしてしまったところで、トトトッと小さな足音が聞こえて思わず口をつぐむ。
「ちっちゃい伯父たま~」
「わーん!リリアン~♡」
部屋の奥から、甥っ子のリリアンが現れた。それを追いかけるように三十代半ばほどの女性も現れて、僕の顔を見るなり深々と頭を下げた。どうもその人が乳母なんだと分かる。うん?二人共にアノー家に預けられているのかな。
それはそうと、足元にいるリリアンは可愛らしい笑顔で、僕の足をギュッと抱き着ついている。もう少ししたら三歳になる甥っ子は、今が可愛い盛りだ。僕らの結婚式の時よりも大きくなって、前は女の子みたいだったのがようやく男の子のような体格になってきた。僕はそのリリアンの頭をナデナデしながら、どうしてリリアンもイザベラもここに?と思う。それがどうでも良くなる程には会えて嬉しいけどね。
「実は兄さん、イーライ兄さん一家も一緒に住むことになったんだ。だって、この屋敷には沢山部屋が余っているし、イーライ兄さん達がお金を払って別に家を借りる必要ないよね?僕も父さんも、家族が増えて嬉しいし。それに子供達も、僕達がいれば安心でしょ?」
「そうなのか…ガイくんがいいのなら、僕は全然構わないけど?」
甥っ子姪っ子の為にはその方が良いだろうと思う。乳母を信用してないのではないけれど、ここだったら父さんとジェイデンの目もあるし安心だ。二人が健全に育ってくれるのがなによりだしね。だけど…
「だけどさ、少し甘え過ぎなんじゃないかとも…」
そう言いながら、チラッと乳母を見る。それに乳母は咄嗟に激しく頷きながら、「坊ちゃま、お嬢ちゃま、お昼寝のお時間ですよ~」と言って父さんの腕からイザベラをそっと抱き上げる。それから二人を連れて、応接室を出て行った。あの乳母、デキるな!僕の言わんとしていることを察知して、連れ出してくれた。これから先は、子供に聞かせる話じゃなくなりそうだし…乳母として合格だよ。
「兄さん…言いたいことは分かる。僕や父さんだって思ってることなんだ。だけどイーライ兄さんは、自分に自信が皆無なんだよね。こんなに早期に騎士団に復帰したのも、ガイ兄さんを誰かに取られないかと心配なんだよ。そんなのないのに…」
──はあぁ…やっぱりか、そうじゃないかと思った。あの子はね…トラウマがあるんだよね。そう思って、ふうぅと深い溜め息を吐いていると、ジェイデンが更に…
「僕だって実は自信が無かったよ。だけどエリオット兄さんと二人で暮したあの時、兄さんが何かっていうと僕を褒めてくれたじゃない?あれで僕は自信がついたし、辛い思い出もどうでもよくなった。あの暮しを思い出すと、今でも戻りたいと思うくらいだ…。だけどイーライ兄さんは、そんな経験もないじゃない?もちろん全力でガイ兄さんから愛されているんだけど、それも信じられないほど心が傷付いているんだよね。だから…今日泊まってくれない?出来たら、イーライ兄さんと話してあげて欲しい!」
そう言うジェイデンの目は真剣だ。僕も以前から感じていた…ガイくんは初めて会った時からイーライしか見ていないと言っていて、それは間違いないと思う。だから浮気の心配なんてない筈なのに、それでもやっぱり心配になってしまうんだろう。これは…兄である僕の出番だ!
「うん、分かった!今日は泊まらせて貰うよ。そして僕とイーライ、同じ部屋にしてくれるかい?二人でじっくり話してみるよ」
それにはホッとした様子のジェイデンと父さんが。二人の可愛い子供の為にも、話し合わなくちゃ!
「エリオット、本当にすまない!父さんが不甲斐ないばかりに…。イーライとジェイデンの母親とは、媚薬を盛られてのキッカケでそうなって、納得できる間柄じゃ無かったけれど、亡くなった今となっては二人の立派な息子を残してくれて、感謝してるんだ」
そう弱々しく呟いて、項垂れる父さん。だから…その二人への気持ちを伝えろ!つーの。ジェイデンも自分のことを立派だと思ってたなんて初めて聞いたけど?みたいに、目を剥いてるで!もうこのオヤジはぁ~と思うけど。でもさ、こういうこと言うようになったからマシだね。以前は何を考えているのか、全然分からない人だったから…それも可愛い孫効果かもね。
そうこうしているうちに、やっぱりというか疲れた顔をしながらイーライが帰って来た。ガイくんはやはり元攻略対象者だけあって、あの若さで最近近衛騎士団の副団長に抜擢された。だからどうしても忙しいみたいで、早い時間に帰って来たのはイーライだけだ。こういうところもイーライが心配する一因になっているのかもな。そんなイーライは、やっと僕が来ていることに気付いて…
「エリオット兄さん!お久しぶりです。イザベラを見に来てくれたの?だけど俺が居なくて、すみませんでした。今日はゆっくり出来るのかな?もしかしてもう帰るんじゃ…」
心配げに俺の顔を覗き込むイーライに、頭をふるふると振る。イーライはどういう意味か分からず、キョトンとしている。それに僕は宣言する。
「今夜は…パジャマパーティーするぞ!」
ジェイデンが不思議そうな顔をして僕を見ている。やべぇ、赤髪といえば…で、あの御馴染みの人魚姫を想像して思わず声に出ちゃったよ?
まあまあいいから!と誤魔化しながら、父さんの腕の中の赤ちゃんを笑顔で覗き込む。紅葉のような小さな手をギュッと握って、スヤスヤと眠っている。そんなイザベラを見ていると、誰もが笑顔になって…
「かっわいい~!癒されるよなぁ。だけどさ、父さんが面倒を見ているの?大変じゃないかな。それにしてもイーライのやつ、こんなに小さな子供を置いてどういうつもりで…」
そう口にしてしまったところで、トトトッと小さな足音が聞こえて思わず口をつぐむ。
「ちっちゃい伯父たま~」
「わーん!リリアン~♡」
部屋の奥から、甥っ子のリリアンが現れた。それを追いかけるように三十代半ばほどの女性も現れて、僕の顔を見るなり深々と頭を下げた。どうもその人が乳母なんだと分かる。うん?二人共にアノー家に預けられているのかな。
それはそうと、足元にいるリリアンは可愛らしい笑顔で、僕の足をギュッと抱き着ついている。もう少ししたら三歳になる甥っ子は、今が可愛い盛りだ。僕らの結婚式の時よりも大きくなって、前は女の子みたいだったのがようやく男の子のような体格になってきた。僕はそのリリアンの頭をナデナデしながら、どうしてリリアンもイザベラもここに?と思う。それがどうでも良くなる程には会えて嬉しいけどね。
「実は兄さん、イーライ兄さん一家も一緒に住むことになったんだ。だって、この屋敷には沢山部屋が余っているし、イーライ兄さん達がお金を払って別に家を借りる必要ないよね?僕も父さんも、家族が増えて嬉しいし。それに子供達も、僕達がいれば安心でしょ?」
「そうなのか…ガイくんがいいのなら、僕は全然構わないけど?」
甥っ子姪っ子の為にはその方が良いだろうと思う。乳母を信用してないのではないけれど、ここだったら父さんとジェイデンの目もあるし安心だ。二人が健全に育ってくれるのがなによりだしね。だけど…
「だけどさ、少し甘え過ぎなんじゃないかとも…」
そう言いながら、チラッと乳母を見る。それに乳母は咄嗟に激しく頷きながら、「坊ちゃま、お嬢ちゃま、お昼寝のお時間ですよ~」と言って父さんの腕からイザベラをそっと抱き上げる。それから二人を連れて、応接室を出て行った。あの乳母、デキるな!僕の言わんとしていることを察知して、連れ出してくれた。これから先は、子供に聞かせる話じゃなくなりそうだし…乳母として合格だよ。
「兄さん…言いたいことは分かる。僕や父さんだって思ってることなんだ。だけどイーライ兄さんは、自分に自信が皆無なんだよね。こんなに早期に騎士団に復帰したのも、ガイ兄さんを誰かに取られないかと心配なんだよ。そんなのないのに…」
──はあぁ…やっぱりか、そうじゃないかと思った。あの子はね…トラウマがあるんだよね。そう思って、ふうぅと深い溜め息を吐いていると、ジェイデンが更に…
「僕だって実は自信が無かったよ。だけどエリオット兄さんと二人で暮したあの時、兄さんが何かっていうと僕を褒めてくれたじゃない?あれで僕は自信がついたし、辛い思い出もどうでもよくなった。あの暮しを思い出すと、今でも戻りたいと思うくらいだ…。だけどイーライ兄さんは、そんな経験もないじゃない?もちろん全力でガイ兄さんから愛されているんだけど、それも信じられないほど心が傷付いているんだよね。だから…今日泊まってくれない?出来たら、イーライ兄さんと話してあげて欲しい!」
そう言うジェイデンの目は真剣だ。僕も以前から感じていた…ガイくんは初めて会った時からイーライしか見ていないと言っていて、それは間違いないと思う。だから浮気の心配なんてない筈なのに、それでもやっぱり心配になってしまうんだろう。これは…兄である僕の出番だ!
「うん、分かった!今日は泊まらせて貰うよ。そして僕とイーライ、同じ部屋にしてくれるかい?二人でじっくり話してみるよ」
それにはホッとした様子のジェイデンと父さんが。二人の可愛い子供の為にも、話し合わなくちゃ!
「エリオット、本当にすまない!父さんが不甲斐ないばかりに…。イーライとジェイデンの母親とは、媚薬を盛られてのキッカケでそうなって、納得できる間柄じゃ無かったけれど、亡くなった今となっては二人の立派な息子を残してくれて、感謝してるんだ」
そう弱々しく呟いて、項垂れる父さん。だから…その二人への気持ちを伝えろ!つーの。ジェイデンも自分のことを立派だと思ってたなんて初めて聞いたけど?みたいに、目を剥いてるで!もうこのオヤジはぁ~と思うけど。でもさ、こういうこと言うようになったからマシだね。以前は何を考えているのか、全然分からない人だったから…それも可愛い孫効果かもね。
そうこうしているうちに、やっぱりというか疲れた顔をしながらイーライが帰って来た。ガイくんはやはり元攻略対象者だけあって、あの若さで最近近衛騎士団の副団長に抜擢された。だからどうしても忙しいみたいで、早い時間に帰って来たのはイーライだけだ。こういうところもイーライが心配する一因になっているのかもな。そんなイーライは、やっと僕が来ていることに気付いて…
「エリオット兄さん!お久しぶりです。イザベラを見に来てくれたの?だけど俺が居なくて、すみませんでした。今日はゆっくり出来るのかな?もしかしてもう帰るんじゃ…」
心配げに俺の顔を覗き込むイーライに、頭をふるふると振る。イーライはどういう意味か分からず、キョトンとしている。それに僕は宣言する。
「今夜は…パジャマパーティーするぞ!」
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