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祝!奨励賞☆投票御礼・番外編
98・新アノー邸訪問
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「あのさ、立派過ぎない?」
僕は思った以上の大豪邸を目の前に、ビビり散らしていた。これ、どんだけ金が掛かっているのよ?と。
今、アノー伯爵家の王都邸に来ている。ジェイデンが本格的に魔導具の事業を始める為に、便利が良かろうと王都に居を構える決意をしたのが一年前。それから、エドモア公爵邸からもそれほど離れていない一等地に土地を買った。もちろん僕の愛する旦那様♡ジュリアスの口利きがあってこそだ!でなければポッと出の田舎の伯爵家など、門前払いだよ?
これから益々交流が増えるだろうし、やっぱり家が近いのは嬉しい。それから約半年以上かけて完成したのがこの御屋敷。建設中は近隣への配慮で、ぐるりと簡易壁に覆われていた。だからどういう建物が建つかなんて、全く知らなかったんだよね…僕今まで、アノー家を舐めていたんだと気付いた!
──スゲェ大豪邸!こんなにデッカイ家…いる?
大々的な完成お披露目会に先立って、まずは僕だけ来て大丈夫かチェックして!とお願いされて来てみたけど、ビックリしちゃったよ…
「あのね…小じんまりしつつも、使い勝手がいい快適さがギュッと詰まった、リ◯ちゃんハウスみたいな家なんだろうなぁって思ってたんだけど?」
全然小じんまりなんてして無かった!無茶苦茶デカいよ。父さんとジェイデンの二人暮らしなのに?もちろん使用人はいるだろうけどさぁ…
──全然リ◯ちゃんハウスじゃ無いじゃん!どっちかって言ったらキャッスル?でっかいリ◯ちゃんが玄関で皆様をお出迎えしちゃうよー!
そう呆然としていると、公爵家の馬車の音を聞きつけたらしいジェイデンが、玄関からヒョッコリと顔を出す。
「兄さん!いらっしゃい~。そろそろかな?って思って待ってたんだよっ」
ジェイデンは待ちかねたようにトトトッと駆けて来て、僕の身体にギュッと抱き着く。僕はそんな平常運転のジェイに、いつまでも子供だな?ってフフフッと笑う。それからいつものように背中をポンポンとして…
「あれ…?ジェイデンってば、また背が伸びてない?どこまで伸びるのよ!それに何で僕だけ小さいの?不思議~」
「ハハッ、兄さんはこのままで可愛いから!」
ジェイデンもイーライも、すくすく伸びやがってぇ!と兄弟の違いに納得出来ずにブーたれながら、でもやっぱり嬉しくて笑ってしまう。
「ところでイーライはまだいるの?二人目を出産して、まだ一カ月も経ってないよね?里帰り出産したって聞いたけど。今日はそのお祝いも渡そうと持ってきたんだけど…」
最近イーライが二人目を産んだ。長い間一人息子のリリアンだけだったのが、今回何と…お姫様がご誕生!一男一女で理想的だね。その出産時期に風邪をひいていた僕は、完全に治るまで対面を控えていた。だから今日、晴れて姪っ子ちゃんに会えるのを楽しみにしてきたんだけど?
「うん!イザベラは家に居るよ。だけどイーライ兄さんは、もう近衛騎士団に戻ってるんだけど…」
「な、何だと!アホなの?あの子…」
その事実にびっくら仰天之助の僕は、目をこれでもかと見開いた。だってさ、産後だよ?それを一カ月くらいで仕事に復帰するなんて!おまけに騎士団の仕事なんて、身体に負担な筈だ。これはいっちょ兄として言ってやらねば!と息巻いている僕を、ジェイデンは取り敢えず家の中にとグイグイ引っ張った。
そして初めての新アノー邸に一歩足を踏み入れると、豪華な見た目の建物とは真逆で、意外とシンプルかつ品の良い調度が設えてあるのが見える。色の違う大理石のタイルを組み合わせて、花のようなデザインの小粋な玄関ホール。それだけでもう洗練されたイメージだが、ホールの中央の飾り台には瑠璃色に光る花瓶に色とりどりの花々が生けてあった。わお!お洒落~と横目に見ながら奥を見ると、壁際に雄大なアノーの領地を彷彿させる風景画が掛けてあり目を奪われる。それに僕は懐かしいなぁ…と、ちょっとだけ涙ぐんだ。名残り惜しいその絵画を後にして、気を取り直して広い廊下を進むと、やがて大きな扉の前に来た。ここがどうやら応接室のようだ。そしてジェイが「どうぞこちらに!」とすまし顔でその扉を開けると…
「よく来たなエリオット。待っていたよ」
その声のする正面に顔を向けると、そこには父さんが満面の笑顔で僕を見ていた。うっ…昔と同一人物だとは思えない!そのくらいの衝撃を密かに受けながらも、部屋の中へと入って行く。
「今日はお招きいただきましてありがとうございます!物凄く立派な建物で驚いた。それに内装も完璧じゃない?貴族的な豪華さの中にも凄く上品で。その一つ一つが、インテリアにそれほど興味がない僕でさえ良いものなんだと分かるよ」
僕はそう言ってウンウン頷く。これならどんな貴族を前にしても、田舎者だと馬鹿にされることはないと思う。自信を持ってお披露目しても大丈夫だと太鼓判を押す!
「そうか?良かった。実はジュリアス様に手伝っていただいたんだよ。私やジェイデンだけでは、どうにも分からないことだらけで…。聞いてなかったかい?」
──聞いてません!そうか…僕の知らないところで、色々と協力してくれたんだね。もしかして、秘密にして僕を驚かせようと?もーう!ジュリアスったら、どんだけ僕のこと好きなのよー。いけね、そんなこと考えてたら会いたくなっちまった…僕だって、どんだけなんだっての。
それにへへっと誤魔化し笑いをしながら父さんの方へ近付くと、その腕に抱かれている小さな赤ちゃんが見える。よくよく見ると、赤い髪の毛がフサフサ生えていて…えっ、この子はまさか?
「ぐはっ…可愛い!流石僕の姪っ子。アリ◯ルかな~?」
──つづく
僕は思った以上の大豪邸を目の前に、ビビり散らしていた。これ、どんだけ金が掛かっているのよ?と。
今、アノー伯爵家の王都邸に来ている。ジェイデンが本格的に魔導具の事業を始める為に、便利が良かろうと王都に居を構える決意をしたのが一年前。それから、エドモア公爵邸からもそれほど離れていない一等地に土地を買った。もちろん僕の愛する旦那様♡ジュリアスの口利きがあってこそだ!でなければポッと出の田舎の伯爵家など、門前払いだよ?
これから益々交流が増えるだろうし、やっぱり家が近いのは嬉しい。それから約半年以上かけて完成したのがこの御屋敷。建設中は近隣への配慮で、ぐるりと簡易壁に覆われていた。だからどういう建物が建つかなんて、全く知らなかったんだよね…僕今まで、アノー家を舐めていたんだと気付いた!
──スゲェ大豪邸!こんなにデッカイ家…いる?
大々的な完成お披露目会に先立って、まずは僕だけ来て大丈夫かチェックして!とお願いされて来てみたけど、ビックリしちゃったよ…
「あのね…小じんまりしつつも、使い勝手がいい快適さがギュッと詰まった、リ◯ちゃんハウスみたいな家なんだろうなぁって思ってたんだけど?」
全然小じんまりなんてして無かった!無茶苦茶デカいよ。父さんとジェイデンの二人暮らしなのに?もちろん使用人はいるだろうけどさぁ…
──全然リ◯ちゃんハウスじゃ無いじゃん!どっちかって言ったらキャッスル?でっかいリ◯ちゃんが玄関で皆様をお出迎えしちゃうよー!
そう呆然としていると、公爵家の馬車の音を聞きつけたらしいジェイデンが、玄関からヒョッコリと顔を出す。
「兄さん!いらっしゃい~。そろそろかな?って思って待ってたんだよっ」
ジェイデンは待ちかねたようにトトトッと駆けて来て、僕の身体にギュッと抱き着く。僕はそんな平常運転のジェイに、いつまでも子供だな?ってフフフッと笑う。それからいつものように背中をポンポンとして…
「あれ…?ジェイデンってば、また背が伸びてない?どこまで伸びるのよ!それに何で僕だけ小さいの?不思議~」
「ハハッ、兄さんはこのままで可愛いから!」
ジェイデンもイーライも、すくすく伸びやがってぇ!と兄弟の違いに納得出来ずにブーたれながら、でもやっぱり嬉しくて笑ってしまう。
「ところでイーライはまだいるの?二人目を出産して、まだ一カ月も経ってないよね?里帰り出産したって聞いたけど。今日はそのお祝いも渡そうと持ってきたんだけど…」
最近イーライが二人目を産んだ。長い間一人息子のリリアンだけだったのが、今回何と…お姫様がご誕生!一男一女で理想的だね。その出産時期に風邪をひいていた僕は、完全に治るまで対面を控えていた。だから今日、晴れて姪っ子ちゃんに会えるのを楽しみにしてきたんだけど?
「うん!イザベラは家に居るよ。だけどイーライ兄さんは、もう近衛騎士団に戻ってるんだけど…」
「な、何だと!アホなの?あの子…」
その事実にびっくら仰天之助の僕は、目をこれでもかと見開いた。だってさ、産後だよ?それを一カ月くらいで仕事に復帰するなんて!おまけに騎士団の仕事なんて、身体に負担な筈だ。これはいっちょ兄として言ってやらねば!と息巻いている僕を、ジェイデンは取り敢えず家の中にとグイグイ引っ張った。
そして初めての新アノー邸に一歩足を踏み入れると、豪華な見た目の建物とは真逆で、意外とシンプルかつ品の良い調度が設えてあるのが見える。色の違う大理石のタイルを組み合わせて、花のようなデザインの小粋な玄関ホール。それだけでもう洗練されたイメージだが、ホールの中央の飾り台には瑠璃色に光る花瓶に色とりどりの花々が生けてあった。わお!お洒落~と横目に見ながら奥を見ると、壁際に雄大なアノーの領地を彷彿させる風景画が掛けてあり目を奪われる。それに僕は懐かしいなぁ…と、ちょっとだけ涙ぐんだ。名残り惜しいその絵画を後にして、気を取り直して広い廊下を進むと、やがて大きな扉の前に来た。ここがどうやら応接室のようだ。そしてジェイが「どうぞこちらに!」とすまし顔でその扉を開けると…
「よく来たなエリオット。待っていたよ」
その声のする正面に顔を向けると、そこには父さんが満面の笑顔で僕を見ていた。うっ…昔と同一人物だとは思えない!そのくらいの衝撃を密かに受けながらも、部屋の中へと入って行く。
「今日はお招きいただきましてありがとうございます!物凄く立派な建物で驚いた。それに内装も完璧じゃない?貴族的な豪華さの中にも凄く上品で。その一つ一つが、インテリアにそれほど興味がない僕でさえ良いものなんだと分かるよ」
僕はそう言ってウンウン頷く。これならどんな貴族を前にしても、田舎者だと馬鹿にされることはないと思う。自信を持ってお披露目しても大丈夫だと太鼓判を押す!
「そうか?良かった。実はジュリアス様に手伝っていただいたんだよ。私やジェイデンだけでは、どうにも分からないことだらけで…。聞いてなかったかい?」
──聞いてません!そうか…僕の知らないところで、色々と協力してくれたんだね。もしかして、秘密にして僕を驚かせようと?もーう!ジュリアスったら、どんだけ僕のこと好きなのよー。いけね、そんなこと考えてたら会いたくなっちまった…僕だって、どんだけなんだっての。
それにへへっと誤魔化し笑いをしながら父さんの方へ近付くと、その腕に抱かれている小さな赤ちゃんが見える。よくよく見ると、赤い髪の毛がフサフサ生えていて…えっ、この子はまさか?
「ぐはっ…可愛い!流石僕の姪っ子。アリ◯ルかな~?」
──つづく
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