【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第十一章・僕らの幸せ

93・思いがけない提案

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 朝起きたら、身体が動かない…そんな経験を自分がするとは!

 そう気付いてから、公爵家の者達の反応は早かった。まるでそれを予想していたかのように。
 熱い風呂に入れられ、丹念にマッサージされる。頭の先から足の指先までされてない所など無いんじゃないか?と思うほど。すると不思議に感覚が戻ってきて…

 「あっぶな!とんだ恥をかくところだったよ?」

 思わずそう口にしていると、何故だかふぅーっと溜め息が聞こえる。おや?

 「俺らから言わせてもらえば、まだだったことが驚きですけどね!」

 ん…?

 「そうねぇ…もしやと思って、用意しておいて本当に良かった!間に合いそうですねエリオット様~」

 んん…?

 「取り敢えず衣裳を!早く用意しないと間に合いませんからー!」

 ──何か対応が雑じゃなーい?まあ、気を遣われるよりいっか!

 なんてことを考えながらも準備を進める。今日の披露宴はこのブラシリア国全ての貴族が集まるといっても過言ではない。王族からはラウル殿下やマクベス大公夫妻、それに何と!国王陛下からも行こっかな~と打診を受けたが、警備上の問題で丁重にお断りした。残念だけどさ、王族勢ぞろいしたら主役の僕達が霞むじゃん!
 それにさ、マクベス大公んとこは、二人もおチビちゃん連れてくんのよ?おまけに大公妃のアラン君は三人目妊娠中だし…話題を大さらいでしょ!それにしてもいつの間にそんなに仕込んだのよ?三人目って…絶対在学中に一人は産んでるでしょ!元攻略対象者の執着怖っわ~

 そんなこんなで何とか着替えを終えて、バッチリ決めたジュリアスと合流して会場に向かう。今日の衣裳はドレス…みたいな裾の長いジャケットで。濃紺のシルク生地に、肩から胸にかけてまるで星のようにダイヤモンドを散りばめてある。正真正銘本物っすよ?おまけにベールに見立てた飾りマントは、紗織物でふわっと足の先まで垂らして。もちろん留め金具にはでっかいカナリーダイヤモンド…国宝なんじゃね?

 それにさびっくりなのは、こんなに豪華な衣裳…着るの一回きりなんですよ!勿体なくない?
 そうは思うが、楽しそうにノリノリで生地から決めたジュリアスのことを思うと、言い出せなくて…
 
 そのジュリアスはというと、その辺のパジャマを着ててもスタイリッシュなんだが、披露宴の定番なんちゃって騎士になっている。この詰め襟の軍服がまたカッコいいのなんのって!
 臙脂色の生地に細やかな伝統の刺繍。それに使っているのは金とプラチナの糸で…その高級感たるやレベチ!
 マズい…ラウル殿下が今後結婚する時、立場的にこのレベルを上回らないといけないんだよ?そんなの無理~今から可哀想になってきた…

 そんな僕達が登場すると、会場は勿論のこと興奮の坩堝で!

 「エグい…公爵家の財産どんだけあるの?」

 「あのダイヤモンド一個落ちないかな?」

 などと口々に言っている。結婚式の時もそうだったが、世間に公爵家の威光を知らしめることには大成功だ。それを狙っているのかは知らんけど!それに僕への愛のデカさを表現するのも…

 「本日は私達二人の為においで下さってありがとうございます。昨日無事女神の前で宣言を致しまして、名実ともに夫婦となりました。今後とも二人をよろしくお願いいたします。」

 そうにこやかに居並ぶ皆様に挨拶をして、それから二人で深々と頭を下げる。すると皆からはワッ!と温かい拍手が巻き起こる。それにホッとして息をつく。それから食事と歓談している招待客のところへと、二人して挨拶して回る。正直、もうへとへとだ…。疲れ過ぎて緊張はもはやしていないが、色んな疲れが一変にやってくる。

 「エリオット…大丈夫?昨日無理させちゃったからかなぁ。だけど今日までだから頑張ろう。明日は好きなだけ寝ていようね!」

 ジュリアスのその言葉に大いに励まされる。今日さえ乗り切ればいいのだし、明日はジュリアスと二人でベッドから降りずに過ごそう。一日中イチャコラしてやるぜっ!!
 そう心を奮い立たせて何とか挨拶回りを済ませる。それから甘い物でもつまんで元気をチャージしようとしていると…

 「兄さん、昨日は大変そうだったから声を掛けるのを控えたよ。結婚おめでとう!幸せになってね」

 その声にハッと振り向くと、そこには笑顔のジェイデンが。一人暮らしでどんなにか痩せてしまっているかと心配だったが、変わらない姿でホッとする。僕はそれに一変に元気が出たような気持ちになる。

 「ありがとう!ジェイも元気そうで安心したよ。だけど一人で暮らして寂しくないかなぁ?それで王都に出てくるつもりは…」

 思わずそう心配して聞く。それにジェイは少し考えるように黙って、それから意を決したように口を開いた。

 「そうだね。そろそろあの家を出ようと思っている。それに隣のマロリー爺さんの娘さん一家が村に帰ってくるらしいんだ。それであの家を譲ったらいいかなって。子供達もいるみたいだし、ジャッキーのことも可愛がってくれるだろ?そしたら心配もないし」

 ジェイデンはそう笑顔で言う。だけど僕は嬉しいと思う反面、途端にあの村での楽しい暮らしを思い出してしまって…ちょっとだけ寂しくなってしまう。それにあの家にもう帰れないと思うと…。すると、そんな僕にと近付く誰かの気配が…
 
 いつの間にか側へと寄り添ってくれているジュリアスの姿。優しい笑顔を浮かべて、ポンと肩へと手を乗せてくる。それにフフッと笑って、そのおかげで寂しい気持ちも吹き飛んだ!
 そうだ…これからもっと、沢山の楽しいことが待っている。もう過去は振り返らずに前だけを向いて行こう!二人で…

 「あのね…父上から、アノー伯爵家を継いだらどうか?って言われてるんだ。昔のことを何度も謝ってくれて、そしたらやっぱり僕は思うんだ…父上が大好きだって!どう思う?」

 ジェイデンの口から思いがけない言葉が飛び出す。驚いたが、そのことは勿論嬉しい。そうしてくれると父のことを考えても安心だし…でも、そうなると王都には来ないってコトなのかなぁ。思いがけない提案に、そう心配になってジェイデンを見つめた。
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