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第十一章・僕らの幸せ

91・愛の誓い

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 僕達の結婚式に先んじて、公爵夫人になるべく教育が行われた。僕だって決して頭は悪くない。ちょっとおっちょこちょいなだけ…
 それでも余りのやることの多さに、途中で音を上げそうになった。だけどその度に考えるのは、僕が行方不明になっていた間の坊ちゃまの苦労だ。

 ──やってやれねぇことはねえ!絶対になれるさ公爵夫人。それを合言葉に頑張る僕。メバ◯ンかなぁ~(ヒント…王◯の紋章)

 今更ながらに社交界にデビューする僕は、もちろん教養にダンスまでみっちり仕込まれる。もうダメだ…これ以上は踊れん!だけど持ち前の根性と坊ちゃまへの愛とで何とか乗り切り、笑われずには済む程度には身につけることが出来た。大変なのね…公爵夫人って!
 それから続けて結婚式の準備と大忙しで一日を過ごして、全てをやり切った後は燃え尽きて、真っ白い灰になっていた…ジ◯ー!

 まあ、冗談はこれくらいにして、明日はいよいよ結婚式。そして公爵家だけあって、凄い人数を招待することになっている。だからさ、かかる日数は二日!信じられる?結婚式に二日もかかるって…
 
 この国の結婚式は、神殿に行き女神の前で結婚を宣言する。まずは親族だけで結婚式を執り行い、そして次の日は披露宴だ!こちらは僕達に関わりがある全ての人達をご招待するつもり。皆んな来てくれるかな?ってドキドキ。あと一つドキドキするのは、初夜ってどっちなのよ?ってコト…。初日の夜?それとも全てが終わった後なの?それって聞いてもいいんだろうか…
 そんな僕のお悩みはつゆ知らず、坊ちゃまも公爵家の皆んなも忙しく駆け回っている。だからさ、聞けもしねぇって言うの?もうこうなりゃ当日までのお楽しみだな!ハハッ…
 
 ──そんなこんなであと一つ寝たら、結婚式さっ。


 +++++


 今日は雲一つない快晴。そんな日に僕らの結婚式だなんて、どんだけ徳積んでるのよ?
 結婚式は親族だけとはいえ、やっぱり緊張はする。衣裳はお互いのカラーで!というお約束通り、僕は銀糸の細やかな刺繍が施してある白のタキシードで、それに藍色の薔薇のコサージュを付けている。坊ちゃまはといえば、金の刺繍の琥珀色のタキシードに若紫のカトレアのコサージュで。正直言うけど、めっちゃ金が掛かっている!それに明日の披露宴は、また違う衣裳だからね?怖っわ!
 
 だけど公爵家の嫡男の結婚式ではなく、公爵様と公爵夫人の結婚式だから…そのくらい普通なんだそうで。まあ、一生に一度だからね!

 「今日は二人の為にありがとうございます」

 「ありがとうございます!お義父様、それに父さん」

 坊ちゃまと僕がそうお礼を言って、目の前の二人を見つめる。今日の為にロウヘンボクから、大旦那様と前公爵様が来てくれている。それに僕の父も…
 僕がこの王都へ帰って来てから直ぐ、父さんは心配して会いに来てくれた。己の心の弱さと自信のなさから、皆を不幸にしてしまったと素直に謝った父。その時はイーライも同席していた。正直、まだ全てを赦した訳ではないけれど、少しづつ近付けたらいいなと思っている。そしてルンダ村のジェイデンにも会いに行って詫びたそうだ。これで取り敢えずは一件落着だね!

 神殿で執り行われる結婚式は、女神の祭壇で居並ぶ皆の前で愛を誓う。その祭壇まで僕らと共に歩むのは、それぞれの父親だ。人によっては母だったり兄弟だったり友だったりするんだけれど、僕達は父にお願いすることにした。

 厳かな雰囲気の中、それぞれの父の手を取って祭壇へと歩く。美しく着飾った僕達が横を通り過ぎると、皆は驚き感嘆の声を上げる。

 「流石に美しいな…見たこともないくらいに美麗だ!」

 「あれは誰だ?馬子にも衣装だなぁ~フムフム」

 そんな声があちこちで聞こえる。どうせフムフム…の方が僕を見た感想だろうな。分かる…分かるよ!今日の坊ちゃまってば、超絶イケメンなんだぁ~
 輝きを放つプラチナブロンドの髪をスッと横に流して、蒼く澄んだ瞳は僕を見つめフッと笑うと、ユラユラと幻想的に揺れるんだ。隣に並び立っていても目が離せなくなる…
 もうね、直視出来ないくらい綺麗なんだなぁ~。だけど僕だってさ、そこそこカッコよくしてきたよ?年齢不詳の童顔は、三つも歳上だなんて誰も思わないだろう。それにチリアンパープルに光る瞳は、宝石よりも美しいって!…そう言うの、僕が知る限り坊ちゃまだけだけどね?

 そんなことを考えていると、あっという間に祭壇の前へと着いた。それから手を取ってくれていた父さんに頭を下げる。その目にはキラリと涙が光って…

 「幸せになりなさい…エリオット」

 そう密かに呟いて、笑顔になった。それは僕の子供の頃、まだ母が生きていた時以来の嬉しそうな笑顔で… 
 それにコックリと頷いて、そして僕の手を坊ちゃまへと渡した。

 ぎゅっ!二人は強く手を握り合う。それから祭壇の前に立ち、女神の名の元に誓いを捧げる。

 「本日、私ことジュリアス・エドモアは、エリオット・アノーを妻に迎えます。そして女神と皆様に誓います…二人で助け合って共に人生を歩むと。エリオットを未来永劫愛し続けます!」

 そう涼やかな声が響く。その声色にホウッと皆は声を上げ、真剣で愛に溢れた宣言に感心する。それには僕も負けないぞ!って…

 「私、エリオット・アノーも誓います。夫となるジュリアス・エドモアを愛し、そして支え続けます。死ぬまで…そして死んだ後も、変わらぬ愛を捧げると」

 そう二人が決意を持って宣言すると、割れんばかりの拍手が送られる。大旦那様、そしてお義父様。それから今日は、坊ちゃまの母である離婚した前夫人も駆けつけてくれた。それから僕の父、それからイーライとその旦那様であるガイ、そしてジェイデンも…

 異例のことだろうが、公爵家の使用人達もこの場に招待した。だって、家族同然だから…。僕が十歳という年齢でエドモア公爵家に来て、それから共に過ごして来た。それを家族じゃないなんて言えないだろう?ここにはそんな笑顔が溢れている。

 「おじちゃま!どうじょ~」

 そこにもう一人の今日の主役、ガイとイーライの一歳になる息子リリアンが、指輪を持って登場だ!
 僕が行方不明になった時、イーライはガイの子供を妊娠していて…それで結婚して出産していたんだ。母と同じ赤い髪の円らな瞳のリリアンは「あい!」とケースに収められた指輪を渡してくる。

 これは僕が坊ちゃまの為にデザインしたリング。プラチナの地金に、坊ちゃまの海のような瞳をイメージした波の模様を彫り込んである。それに非加熱の二色のサファイア、ブルーとパパラチアを並べて留めてある。そして、全く同じ物二つだよ!この二つ以外はこの世に一切存在しない指輪。それは僕が、坊ちゃまへと贈る愛の証となるように…

 そこで少し緊張してしまって、震える指で坊ちゃまの左手の薬指へと通す。それからお返しにと僕の薬指にも通されて…そして二人は、晴れて夫婦となった!

 そしてその夜…僕の予想が外れる。明日の披露宴の後だと思っていた初夜が、まさか今夜だったなんてぇ!
 疲れてるし、明日でもいいんでは?なんて思ったけど、それを赦さない公爵家の面々が…
 
 僕は皆さんの手で隅々まで身体を磨き上げられ、何か知らないイイ匂いの粉をパタパタやられて、ドギマギしながら一人寝室で待った。えーっと、これってマジ?
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