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第十一章・僕らの幸せ
89・いざ!王都へと
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僕は今、公爵家の馬車に乗っている。今まで全く気付いて無かったけれど、エドモア公爵家の馬車の座席は最高級のクッション性で…お尻にこの上なき優しさで溢れている。パン◯ースかなぁ~
だけどこれって、もしかして僕の為に?なんてあり得ないことを考えて車窓の景色を眺める。すると…
「そうだ。エリオットのお尻の為だよ」
──っつ!!何だって?どうして考えていることが分かったんだろう…偶然なのか?前から思っていたけど、坊ちゃまって本当にサトリなんじゃないだろうか…
「何でって、考えていることが口から出てるからだよ。聞こえてるから」
「うそ…」
今更ながら明かされる事実に目を丸くして…だけど今まで、散々変なことを考えていたけど、大丈夫だったんだろうか?と心配になる。だけど今更だ!それを含めて僕なんだと開き直る。
あれから僕とジェイデンは、腹を割って話し合った。僕は学園に戻ることを勧めたけれど、ジェイは元々学園で学ぶことをそれ程重視していなかったらしい。アノー伯爵家にいた五年ほどで、必要な勉強は全て家庭教師から学びきってしまったと。流石僕の弟だ!僕だって同じだったから。本人は義母から父の血筋じゃないかも?なんて言われて傷付いていたけど、間違いなく兄弟だって言える。だってそういうところも、ソックリじゃないか?兄弟じゃないなんてあり得ないよ!
そもそもジェイが学園に通い始めたのは、僕に再び会いたい一心だったそうだ。それなのに僕は全く気付きもせずに…それでジェイは、一度だけ強硬策に出たらしい。それで思い出したのは、あの日のこと…
以前僕は、カフェで坊ちゃまウォッチングを日課にしていた。ある日ラウル殿下にそれを目撃されてしまったんだけれど、その時飛んできた銀色に光る物を僕は咄嗟に打ち落とした。それが何とフォークだったんだけど、その場はラウル殿下を狙ったものかと騒然として。それが本当は、ジェイが僕に気付いて欲しくて投げたものだったなんて!もちろん本当に当てようとしたものでは無かったんだが、手元が狂いよりによってラウル殿下の近くへと飛んでしまったらしい…
──危ねぇ…刺客だと疑われるところだったよ?
あの時僕は、日頃の鍛錬の成果が発揮され機敏に動けたんだよねぇ~それにシャツの袖に仕込んだ金属の棒で打ち落としたりして!忍者みたいだって自画自賛だったけど、知らないうちにジェイを助けていたなんて。
結局ジェイは、ルグル村に残ることになった。ずっとではなくて、頭を整理する為にも暫く一人で暮らしたいと…
いつか必ず王都に来て、僕らを訪ねて来るのを条件にそれを許した。この先ずっと一人では寂し過ぎるし、田舎に引っ込むには若すぎる。それと今後の魔道具の取引先はエドモア公爵家が運営する商会との専属契約することに。これでジェイは適切価格で買い上げて貰えるし、商会としては良い製品を買えるしWin Winだ!あと、魔法石についても上質なロウヘンボク産を先に提供されることとなった。それで金額を気にすることもなく、思う存分製作に集中出来るだろう。それともう一つの気掛かり…僕の親友ジャッキーのお世話も頼んだ。王都に連れて行く?とも思ったが、元々野生のシマリスだ。それでは可哀想だろう…それにジェイもその方が寂しくないだろうし。
僕はといえば、もちろん一年間慣れ親しんだ家や人々、それから楽しかったジェイとの生活を手放すのは凄く辛かった。だけどこれ以上、愛する人と離れてはいけない…その想いを胸に、それらを振り切ってきたんだ。そして後悔はしないと…
出発前、ジェイデンは僕にある物をそっと手渡した。あの時僕が指に嵌めていた、坊ちゃまからの大切な贈り物…婚約指輪を。これを見たら僕が思い出してしまうかも?と隠していたが、ずっと厳重に保管してあったらしい。それと一緒に渡されたのは、魔道具のチェーンネックレス。
これはジェイデンが僕にと作ってくれた物なんだ。以前坊ちゃまから贈られたネックレスは、倒れた拍子に魔法石が粉々に砕けたらしい。そうなると『切れない』という効果は無くなってしまう。それで使えなくなっていたのをずっと気にしていたって…それで最近僕が、王都に行きたいと言い出したことで、この生活の終わりを予感していたらしい…それで以前から、片手間に製作を始めていたんだとか。おまけにこれに使った魔法石は、なんと祭の日にルーカス・マルドゥからお詫びに貰ったもので…
「これ、最高級の魔法石だったんだよ?これでおいそれとは砕けることもない。恐らくだけどこの石、王都で一軒家が買えるくらいの金額だと思うけど…ルーカスさんって、あの時の記憶あったのかな?まあ、兄さんがあの人に抱きつかれたお詫びで貰ったんだからいいか!」
そう言ってジェイデンは、鮮やかに笑う。本当に楽しそうで、嘘偽りのない笑顔だ…
この笑顔を見ていたら、大丈夫だと思えた。今は一度離れてしまうけど、いつかまた会える。そして兄弟の絆は決して消えないと!そう思って感動していると、後ろから坊ちゃまの声が…
「コラッ!何だと?抱きつかれた…だって!?ルーカスあいつ…」
「約一年ぶりの坊ちゃまの…コラッ!頂きましたぁ~」
そんなふうに皆んなで笑って、ルグル村を出発してきた。それから二日かけて王都まで帰って来た僕。離れている間に坊ちゃまは、結婚出来る年齢十八になっている。そして後半年ほどで学園を卒業だ。そうなったら後は…?そんなことを考えながら僕は、久しぶりの王都の景色をワクワクして見つめていた。
だけどこれって、もしかして僕の為に?なんてあり得ないことを考えて車窓の景色を眺める。すると…
「そうだ。エリオットのお尻の為だよ」
──っつ!!何だって?どうして考えていることが分かったんだろう…偶然なのか?前から思っていたけど、坊ちゃまって本当にサトリなんじゃないだろうか…
「何でって、考えていることが口から出てるからだよ。聞こえてるから」
「うそ…」
今更ながら明かされる事実に目を丸くして…だけど今まで、散々変なことを考えていたけど、大丈夫だったんだろうか?と心配になる。だけど今更だ!それを含めて僕なんだと開き直る。
あれから僕とジェイデンは、腹を割って話し合った。僕は学園に戻ることを勧めたけれど、ジェイは元々学園で学ぶことをそれ程重視していなかったらしい。アノー伯爵家にいた五年ほどで、必要な勉強は全て家庭教師から学びきってしまったと。流石僕の弟だ!僕だって同じだったから。本人は義母から父の血筋じゃないかも?なんて言われて傷付いていたけど、間違いなく兄弟だって言える。だってそういうところも、ソックリじゃないか?兄弟じゃないなんてあり得ないよ!
そもそもジェイが学園に通い始めたのは、僕に再び会いたい一心だったそうだ。それなのに僕は全く気付きもせずに…それでジェイは、一度だけ強硬策に出たらしい。それで思い出したのは、あの日のこと…
以前僕は、カフェで坊ちゃまウォッチングを日課にしていた。ある日ラウル殿下にそれを目撃されてしまったんだけれど、その時飛んできた銀色に光る物を僕は咄嗟に打ち落とした。それが何とフォークだったんだけど、その場はラウル殿下を狙ったものかと騒然として。それが本当は、ジェイが僕に気付いて欲しくて投げたものだったなんて!もちろん本当に当てようとしたものでは無かったんだが、手元が狂いよりによってラウル殿下の近くへと飛んでしまったらしい…
──危ねぇ…刺客だと疑われるところだったよ?
あの時僕は、日頃の鍛錬の成果が発揮され機敏に動けたんだよねぇ~それにシャツの袖に仕込んだ金属の棒で打ち落としたりして!忍者みたいだって自画自賛だったけど、知らないうちにジェイを助けていたなんて。
結局ジェイは、ルグル村に残ることになった。ずっとではなくて、頭を整理する為にも暫く一人で暮らしたいと…
いつか必ず王都に来て、僕らを訪ねて来るのを条件にそれを許した。この先ずっと一人では寂し過ぎるし、田舎に引っ込むには若すぎる。それと今後の魔道具の取引先はエドモア公爵家が運営する商会との専属契約することに。これでジェイは適切価格で買い上げて貰えるし、商会としては良い製品を買えるしWin Winだ!あと、魔法石についても上質なロウヘンボク産を先に提供されることとなった。それで金額を気にすることもなく、思う存分製作に集中出来るだろう。それともう一つの気掛かり…僕の親友ジャッキーのお世話も頼んだ。王都に連れて行く?とも思ったが、元々野生のシマリスだ。それでは可哀想だろう…それにジェイもその方が寂しくないだろうし。
僕はといえば、もちろん一年間慣れ親しんだ家や人々、それから楽しかったジェイとの生活を手放すのは凄く辛かった。だけどこれ以上、愛する人と離れてはいけない…その想いを胸に、それらを振り切ってきたんだ。そして後悔はしないと…
出発前、ジェイデンは僕にある物をそっと手渡した。あの時僕が指に嵌めていた、坊ちゃまからの大切な贈り物…婚約指輪を。これを見たら僕が思い出してしまうかも?と隠していたが、ずっと厳重に保管してあったらしい。それと一緒に渡されたのは、魔道具のチェーンネックレス。
これはジェイデンが僕にと作ってくれた物なんだ。以前坊ちゃまから贈られたネックレスは、倒れた拍子に魔法石が粉々に砕けたらしい。そうなると『切れない』という効果は無くなってしまう。それで使えなくなっていたのをずっと気にしていたって…それで最近僕が、王都に行きたいと言い出したことで、この生活の終わりを予感していたらしい…それで以前から、片手間に製作を始めていたんだとか。おまけにこれに使った魔法石は、なんと祭の日にルーカス・マルドゥからお詫びに貰ったもので…
「これ、最高級の魔法石だったんだよ?これでおいそれとは砕けることもない。恐らくだけどこの石、王都で一軒家が買えるくらいの金額だと思うけど…ルーカスさんって、あの時の記憶あったのかな?まあ、兄さんがあの人に抱きつかれたお詫びで貰ったんだからいいか!」
そう言ってジェイデンは、鮮やかに笑う。本当に楽しそうで、嘘偽りのない笑顔だ…
この笑顔を見ていたら、大丈夫だと思えた。今は一度離れてしまうけど、いつかまた会える。そして兄弟の絆は決して消えないと!そう思って感動していると、後ろから坊ちゃまの声が…
「コラッ!何だと?抱きつかれた…だって!?ルーカスあいつ…」
「約一年ぶりの坊ちゃまの…コラッ!頂きましたぁ~」
そんなふうに皆んなで笑って、ルグル村を出発してきた。それから二日かけて王都まで帰って来た僕。離れている間に坊ちゃまは、結婚出来る年齢十八になっている。そして後半年ほどで学園を卒業だ。そうなったら後は…?そんなことを考えながら僕は、久しぶりの王都の景色をワクワクして見つめていた。
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