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第八章・アノー家の人達
64・意外な縁
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あの指輪の値段を思うと空恐ろしい!考えるだけでもドキドキものだ…だけど、坊ちゃまが僕のことを考えて造ってくれたのは物凄く嬉しい!まるでいつだって坊ちゃまが僕の側にいるような…そんな安心した気持ちになる。そのことにひとしきり感動して涙ぐんでからふと我に返ると、ケースには僕をイメージしたらしい指輪がもう一つ。それを見て僕も!と…
「ぐしッ…坊ちゃま、僕もお返しに嵌めさせていただけますか?」
もう泣いてるんだか笑ってるんだかの様相でそう言うと、坊ちゃまがはにかんだ笑顔で僕の前へと手を差し出してくる。その顔にまた感動して、また涙が噴き出てくる。それを何とか堪えて、その白魚のような手を握ったままケースから指輪を引き抜いた。
見ると、全く同じデザインだが台座は珍しいブラウンゴールドで、赤紫色の石が嵌め込まれている。この宝石はなんだろうか?そう思いながらも、持つ手をほんの少し震わせながら薬指へと通していった。
そして今、坊ちゃまの白くて長い指に僕の象徴のような指輪が!思わずそれに沿うように僕の手を近づけると、まるでこれから共に歩んでいく僕達の化身のようで…それからぎゅっと手を握り合う。本当はいつのもように抱き着きたいくらいなんだけど、ここでそうしたら顰蹙かな?って頑張って抑える。
「ありがとう!思った通りの凄く良い出来だよ。このまま付けて帰ってもいいかな?」
「どうぞそのままお持ちくださいませ。それからこちらがお二人の指紋でしか開かない魔道具のケースとなっておりますので…ご安心かと」
──何?魔道具の…ケースだって!?僕と坊ちゃまの指紋認証でしか開けられないってコトだよね?これはこれで更にお値段が張りそう!
この世界には魔法は存在しない。ただ、ごく少量の魔法石というものが産出される。この石はまるで魔法のような効果をもたらすもので、国を上げてずっとそれを研究してきた。最近それを利用していろんな便利な道具を作る者が現れたんだ。これらは何しろ希少で高価なもので…貴族だといっても手に入れられる人はほんの一握り。ほら!伯爵家以上の当主の証のプロミスリング。その認証に使われているのも魔法石だから!血液に反応するその効果は早くに判明していて、既に一般的にも使われていたんだけど、こんな指紋認証にまで使える日がくるなんてねぇ~。ということは、僕にとって二つ目の魔道具になるのか?
スミンさんが恐る恐るそのケースを受け取って、坊ちゃまが先程の分厚い封筒を取り出している。それをオーナーに手渡してからサッと立ち上がったので、僕も慌てて立ち上がる。
それにしてもあれ…いくら入ってるのよ?って思うけど、怖くてとてもじゃないけど聞けない!それから坊ちゃまは軽く会釈して、颯爽とこの部屋を出て行こうとする。そんなことを考えてもたもたしている僕に、坊ちゃまはニッコリしながら手を差し出して「記念に手を繋いで帰ろう!」って…
うぐーっ!鼻血出そう…と思わず鼻を摘んで、うんうん頷きながら連れられて行く僕。
「ぶおっひゃま、そころてこのいひ、ふぁんれすか?」
坊ちゃまの指で燦然と輝く、僕をイメージした宝石。それがさっきから気になって聞いてみた。存在自体が希少な坊ちゃまと違って、僕なんてその辺の石だろうと思って聞いてみたんだが…あっ!そうなると、僕の指輪の方だけ高価になるのか…何か申し訳ねぇ!そう思って坊ちゃまを見上げると…
「これ?レッドベリルだよ。ルベライトやパパラチアサファイアと迷ったんだけどね!」
──ど、どっちも凄い希少石やん!あっ、そう…
僕はもうそれ以上何も聞くまいと思った。聞いたら絶対、今後怖くて指輪嵌められなーい!
それからハッと気付く…家一軒分くらい指に付けてる?怖っ!
そうおっかなびっくりで眺めていると坊ちゃまが振り向いて…
「これでもう遠慮はいらないよね?正式に婚約者になったんだから!また結婚指輪も造ってもらわないとねー」
──あう、あう…坊ちゃま!もう僕はこれ以上適応できましぇん!遠慮って何を?そうは思ったが、今日はお許しを~
それから僕と坊ちゃま、スミンさんは馬車留めまで歩いた。あの店、大通り沿いじゃないから歩くしかないんだよね~。それに護衛の騎士を引き連れて歩くから目立つ、目立つ!はあぁ~コレもしも盗まれたら、死んでお詫びを…案件でしょ?ただでさえ僕は二度も泥棒に…一回目は王都に出てきて直ぐに宿で、二回目はこの前財布を…と思って突然、はたと気付いた。そういえば、あの宿の荷物どうした?もしかしてそのまま…?
──うっかりしてたー!宿代の変わりに荷物置いてきたよね?それと親切な宿主さんが、お金持ってきてくれたら荷物返す…って。僕って、何てボケてるんだろう?十年近く経って思い出すなんて…だけど今更行っても荷物はないだろうな。でも、それでもお金は返すべきだ!また近いうちに返しに行こうと心に誓う。
「それにしてもスミン。あんなに良い店を紹介してくれてありがとう」
その坊ちゃまの一言でスミンさんの知り合いの店なんだと気付く。そういえば、さっきのスミンさんの様子可怪しかったよね?そのことと何か関係があるのかな…
「いえいえ坊ちゃま。お役に立ててようございました。あのオーナーのブランさんは、以前名だたる家の執事をしておりまして、その際に非常にお世話になり尊敬しておりました。今は引退して元々の家業を継いだようです」
へえぇ~有名な貴族家の執事をしていた人が、引退後あのような高級宝石店を!?あの丁寧な物言いと所作はそれを表しているけど、元の仕事と全く違うといっていい分野でまた活躍出来るなんて凄いやぁ~
それにあのスミンさんに尊敬してる!なんて言われて、イケオジなだけじゃなくて本当に素晴らしい人なんだろうな。
「元執事で今は宝石店のオーナーのブランさんか…」
歩きながらそう呟く。その時、何故かさっきの宿屋の荷物のことが思い出させる。うん?ブランさん。なんだろうな…何か忘れてるような…あれっ?あの人は!?
「ぐしッ…坊ちゃま、僕もお返しに嵌めさせていただけますか?」
もう泣いてるんだか笑ってるんだかの様相でそう言うと、坊ちゃまがはにかんだ笑顔で僕の前へと手を差し出してくる。その顔にまた感動して、また涙が噴き出てくる。それを何とか堪えて、その白魚のような手を握ったままケースから指輪を引き抜いた。
見ると、全く同じデザインだが台座は珍しいブラウンゴールドで、赤紫色の石が嵌め込まれている。この宝石はなんだろうか?そう思いながらも、持つ手をほんの少し震わせながら薬指へと通していった。
そして今、坊ちゃまの白くて長い指に僕の象徴のような指輪が!思わずそれに沿うように僕の手を近づけると、まるでこれから共に歩んでいく僕達の化身のようで…それからぎゅっと手を握り合う。本当はいつのもように抱き着きたいくらいなんだけど、ここでそうしたら顰蹙かな?って頑張って抑える。
「ありがとう!思った通りの凄く良い出来だよ。このまま付けて帰ってもいいかな?」
「どうぞそのままお持ちくださいませ。それからこちらがお二人の指紋でしか開かない魔道具のケースとなっておりますので…ご安心かと」
──何?魔道具の…ケースだって!?僕と坊ちゃまの指紋認証でしか開けられないってコトだよね?これはこれで更にお値段が張りそう!
この世界には魔法は存在しない。ただ、ごく少量の魔法石というものが産出される。この石はまるで魔法のような効果をもたらすもので、国を上げてずっとそれを研究してきた。最近それを利用していろんな便利な道具を作る者が現れたんだ。これらは何しろ希少で高価なもので…貴族だといっても手に入れられる人はほんの一握り。ほら!伯爵家以上の当主の証のプロミスリング。その認証に使われているのも魔法石だから!血液に反応するその効果は早くに判明していて、既に一般的にも使われていたんだけど、こんな指紋認証にまで使える日がくるなんてねぇ~。ということは、僕にとって二つ目の魔道具になるのか?
スミンさんが恐る恐るそのケースを受け取って、坊ちゃまが先程の分厚い封筒を取り出している。それをオーナーに手渡してからサッと立ち上がったので、僕も慌てて立ち上がる。
それにしてもあれ…いくら入ってるのよ?って思うけど、怖くてとてもじゃないけど聞けない!それから坊ちゃまは軽く会釈して、颯爽とこの部屋を出て行こうとする。そんなことを考えてもたもたしている僕に、坊ちゃまはニッコリしながら手を差し出して「記念に手を繋いで帰ろう!」って…
うぐーっ!鼻血出そう…と思わず鼻を摘んで、うんうん頷きながら連れられて行く僕。
「ぶおっひゃま、そころてこのいひ、ふぁんれすか?」
坊ちゃまの指で燦然と輝く、僕をイメージした宝石。それがさっきから気になって聞いてみた。存在自体が希少な坊ちゃまと違って、僕なんてその辺の石だろうと思って聞いてみたんだが…あっ!そうなると、僕の指輪の方だけ高価になるのか…何か申し訳ねぇ!そう思って坊ちゃまを見上げると…
「これ?レッドベリルだよ。ルベライトやパパラチアサファイアと迷ったんだけどね!」
──ど、どっちも凄い希少石やん!あっ、そう…
僕はもうそれ以上何も聞くまいと思った。聞いたら絶対、今後怖くて指輪嵌められなーい!
それからハッと気付く…家一軒分くらい指に付けてる?怖っ!
そうおっかなびっくりで眺めていると坊ちゃまが振り向いて…
「これでもう遠慮はいらないよね?正式に婚約者になったんだから!また結婚指輪も造ってもらわないとねー」
──あう、あう…坊ちゃま!もう僕はこれ以上適応できましぇん!遠慮って何を?そうは思ったが、今日はお許しを~
それから僕と坊ちゃま、スミンさんは馬車留めまで歩いた。あの店、大通り沿いじゃないから歩くしかないんだよね~。それに護衛の騎士を引き連れて歩くから目立つ、目立つ!はあぁ~コレもしも盗まれたら、死んでお詫びを…案件でしょ?ただでさえ僕は二度も泥棒に…一回目は王都に出てきて直ぐに宿で、二回目はこの前財布を…と思って突然、はたと気付いた。そういえば、あの宿の荷物どうした?もしかしてそのまま…?
──うっかりしてたー!宿代の変わりに荷物置いてきたよね?それと親切な宿主さんが、お金持ってきてくれたら荷物返す…って。僕って、何てボケてるんだろう?十年近く経って思い出すなんて…だけど今更行っても荷物はないだろうな。でも、それでもお金は返すべきだ!また近いうちに返しに行こうと心に誓う。
「それにしてもスミン。あんなに良い店を紹介してくれてありがとう」
その坊ちゃまの一言でスミンさんの知り合いの店なんだと気付く。そういえば、さっきのスミンさんの様子可怪しかったよね?そのことと何か関係があるのかな…
「いえいえ坊ちゃま。お役に立ててようございました。あのオーナーのブランさんは、以前名だたる家の執事をしておりまして、その際に非常にお世話になり尊敬しておりました。今は引退して元々の家業を継いだようです」
へえぇ~有名な貴族家の執事をしていた人が、引退後あのような高級宝石店を!?あの丁寧な物言いと所作はそれを表しているけど、元の仕事と全く違うといっていい分野でまた活躍出来るなんて凄いやぁ~
それにあのスミンさんに尊敬してる!なんて言われて、イケオジなだけじゃなくて本当に素晴らしい人なんだろうな。
「元執事で今は宝石店のオーナーのブランさんか…」
歩きながらそう呟く。その時、何故かさっきの宿屋の荷物のことが思い出させる。うん?ブランさん。なんだろうな…何か忘れてるような…あれっ?あの人は!?
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