【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

文字の大きさ
上 下
55 / 107
第七章・エリオットの正体

54・告白の行方(アルベルトSide)

しおりを挟む
 「な、何だと?エリオットと結婚するだと!もしかして…あの従者か!?」

 この広い本邸に、突如響き渡る主人の声。その屋敷で働く使用人達はそれに慄き、そして困惑した。エリオットって、まさかあの子じゃないよね?…と。

 エリオット…不思議な青年だ。小柄で、どちらかというと可愛らしい容姿をしている割に、大胆不敵というか怖いものなしの行動にいつも驚かされている。そんなエリオットと初めて会ったのは、俺がエドモア公爵家で働き始めて三年ほど経った時だ。

 兄弟が多く、口減らしの為に公爵家へと奉公させたれた俺は、子供の扱いが馴れているだろうとジュリアス様付きの護衛兼従者にと抜擢される。元々身体能力が高くて喧嘩も強い、そして要領の良いタイプの俺は、そんなの楽勝だと笑った。だけど…そのジュリアスという公爵家の嫡男は、常識では決して測れない曲者の令息だったんだ。

 まず喜怒哀楽がない!物凄く美しい容姿だが、感情の起伏に乏しいお方だった。政略結婚だったご両親の仲は最悪で、ジュリアス様の下の御兄弟も望めないほどで…だから愛情に飢えていた。そして頭が良過ぎるのも問題だったのだと思う。だから当時三歳の口癖が「つまらない」だったんだ。それが…

 あの日を境にジュリアス様は変わられた。あの時、路地裏で拾った汚い子…エリオットと出会って。ジュリアス様の側にいたい!と言った少年は、それから片時も離れない徹底ぶりで…

 ジュリアス様を「坊ちゃま」と呼び、特大の愛情を向けるエリオット。坊ちゃまはエリオットと出会ったあの時、本当の意味で人として生まれ変わったのだろう。エリオットに対して程ではないが、俺達にも親しげに接したり、微笑んでくれるようになった。それまでジュリアス様を遠巻きに見ていた使用人達もそれに感化され、親しげに坊ちゃまとお呼びするようになる…それからはエドモア公爵家はすっかりと明るい雰囲気になる。何もかもがエリオットのお陰だと思った。だけど…

 坊ちゃまが代表として選ばれた、王都学園と騎士学園の交流戦。俺は妹のステファニーの応援と坊ちゃまの応援を兼ねて、円形闘技場へと足を運んでいた。

 騎士学園の先鋒として出場した妹は、我が家の誇りだ。平民ながら第一騎士団への入団も決まり、騎士としての妹の人生は順調そのもので。三年生になり今回が最後の代表となるので、どうしても!とお願いして休みを貰った。その後に何と坊ちゃまも王都学園側の代表に選ばれたと聞いて、尚の事楽しみにしていたんだ。試合は妹が一勝し、その後坊ちゃまの「美の暴力」に屈したのには、流石俺の妹!と妙に納得して、その後も面白い試合が続いた。それから勝敗は引き分けになり、良く頑張った!と妹と坊ちゃまを激励しに控え室に行くと…そこで耳を疑う真実を聞くことに!

 ──何だって!エリオットがアノー伯爵の息子だって?

 その瞬間、今まで感じていた違和感の正体が分かった。人懐っこくて、まるで弟のようだと思って接していたけど、俺とは何かが違う!そう思ってきた。ああ、そうか…。

 そして、ずっと二人の気持ちにも気付いていた。坊ちゃまは最初から、そしてエリオットのヤツは最近までそれを恋だと思ってなかったようだが、最近は別人みたいに坊ちゃまを熱く見つめている。それを陰ながら応援していたけど、同時に先を危ぶんでもいた。だけど…良かった!あの時、心の底からそう思った。同じ貴族同士だったら、結ばれるのも可能だろうし…だけど。

 最大の障壁は大旦那様だ。坊ちゃまがそれ程長くもない休暇に、領地に行くことを決めたと聞いた時これは行動を起こされるのだと理解した。坊ちゃまが意を決してエリオットとのことを告白し、案の定大旦那様は激昂される。我々使用人一同もビリッ!とそれに震え上がるほどの怒りの波長で…
 だけど坊ちゃまは、怯んでは居ない。

 「エリオットはアノー伯爵家の令息です。私と添い遂げられる資格はあるでしょう?だけど…誤解なさらないで下さい!エリオットが例え平民だったとしても私の気持ちは同じだったことでしょう。それ程に強い想いなのです!ご理解いただけないでしょうか?」

 坊ちゃまはそう大旦那様へと訴える。それに大旦那様は目を閉じて小さく首を振り、それから一つ溜息を吐いた。

 「知っていた。私だってエリオットがアノー家の者だと最初から知っていたわい!誰だと思ってるのだ。でもだから何だというのだ?伯爵家の者と繋がって、家門の『得』になるのか?なるまいて…」

 「だから!…だから父上と母上はああなのでしょう?あれが不幸ではなくて何なのですか?家門の為…その結果があれだったら、私は生きている意味がありません!」

 坊ちゃまはそう毅然として言い張った。そして二人は睨み合い一触即発だ!最初は少し離れたところで見ていたエリオットも、いつの間にか坊ちゃまの隣にと来ている。誰もがその間に入る事出来ず、オロオロとして成り行きを見守って…

 そんな時だが俺は決めた!坊ちゃまとエリオット、二人の為に行動しようと。そのことで恐らくキツイお叱りを受けるだろう。最悪公爵家を辞めさせられるかも知れない…でも、それがどうした?俺だったらどうにでも生きていけるさっ。我が家にはステファニーもいて、将来安泰だしな!

 そう決心して、一歩前に出る。二人の側で落ち着かない様子のエリオット、スミンさんやルーシー、その他の王都邸の使用人だって何事か?と驚いて目を見開いている。それに構わず俺は声を上げた。

 「大旦那様、お取り込みのところ失礼致します。ずっと前から依頼されていたあの方の行方が分かりました」

 それには大旦那様は怒りも忘れたように、「何?」と呆然としている。そして追い打ちをかけるように一言…

 「そうです。大旦那様が唯一愛したあの方です」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@中華BL発売中
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶
BL
 BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。  乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。  子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ? 本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様

冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~ 二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。 ■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。 ■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります

ナナメ
BL
 8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。  家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。  思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!  魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。 ※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。 ※表紙はAI作成です

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

処理中です...