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第七章・エリオットの正体
52・大旦那様
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たんたた、たらたらたらららーん!
マズい…そう思いながらも、頭の中でゴッド◯ァーザーのテーマ曲を元気に歌う。だってさ、歌わないとやってらんないでしょ?
それから僕は落ち着く為にハァーッと一つ溜息を吐いて、笑顔で坊ちゃまの方を見る。…その隣で僕を睨んだままの大旦那様の方は極力見ないようにして。
「エリオットは本邸は初めてだから、一緒においで!」
「はい…かしこまりましたぁ」
楽しげに談笑しながら歩くお二人の後ろを、ちょっと俯きがちに付いて行く。それにしても大旦那様は、齢六十は過ぎている筈だ…それなのに何て言うのかな、燻し銀の魅力?間近で見る大旦那様は、めっちゃパンチが強かった!
白髪の御髪がキラキラと煌めいていて、もうプラチナなんだか白なんだか分からない。どっちでもいいっていうか?そんなものでこのお方の魅力は変わらないだろう。その顔の皺一つ一つまでもがマイナスなんかじゃなく、彩りの一つなんだと思う。それと坊ちゃまと同じ深い藍色の瞳で見つめられると…
──見~て~る~!怖っ。
「ところでお前、まだいたのか?とっくに辞めたと思っておったぞ!」
いつの間にか大旦那様にジロジロと見られていた僕は、思わずギクッと後ずさる。
「はい!いまだお世話になっておりますっ」
途端、ビシッと姿勢を正し90°の角度でお辞儀をする。それを見ながらフンと鼻を鳴らす大旦那様。怖いなぁ…怖すぎるって~!
「お祖父様、エリオットは私の大事な従者です。それこそ共にいないなど考えられないほどに…」
坊ちゃまはそう言って、振り返りながら僕にと微笑みかける。その瞬間、この場が癒やしのスポットに!ブワッと清らかな空気を浴びてレベルMAXまで回復する僕のHP。はあぁぁ~坊ちゃまぁ!
「ジュリアス、その考えは危険だ!前からそう言っているだろう?使用人はどこまでいっても所詮、使用人だと…」
大旦那様はそう厳しく言い聞かせようとする。僕はここまで言い切る大旦那様に、何かこの考えに至る理由があるのかな?って思った。確かに公爵家の使用人といえば平民が主で、たまに没落貴族の子女なんかも…それに僕のような訳アリ貴族とかだ。仕える主人に対して馴れ馴れしいのは、褒められることじゃないけど…だけど同じ人間同士だ。少しくらいなら…と思うのは罪なのかな?
やはり貴族の中には、そういう考えが主流なんだ…と改めて考えさせられた。
それから大旦那様と坊ちゃまはリビングルームで暫く楽しそうにお話をされていたが、「疲れただろうから今日は休みなさい」と言われた坊ちゃまが、リビングを後にする。
そしてこの屋敷の二階にあるという、坊ちゃまのお部屋へと二人で向かう。
初めての本邸は王都のお屋敷よりも重厚な造りで、廊下に飾られた絵画や彫像も凄く豪華だ。価値は全く分からないけど一体おいくら?って思うほど。はーっ、へーっ!と驚きながら階段を上がって奥まで進む。そして大きな扉の前まで来ると…
「ここだよ!ここが私の部屋だ。といっても滅多に使わないけどね」
それに僕はサッと前に回り込んでその扉を開ける。すると空気の入れ替えの為か窓が開いていて、スーッと頬を風が撫でていく。
「わあ!気持ちの良い部屋ですね。今窓を閉めますから」
そう言いながら部屋に入り、窓へと近付いて行く。するとその窓からは大きな庭園が!
真ん中に噴水があり、それを囲むように円形に植栽されている。紫陽花かツツジかな?今は冬で花はないけれど、春になればきっと素晴らしい眺めなんだと思う。また違う季節にも来てみたいな…
それからパタンと窓を閉めて、坊ちゃまの近くに戻ろうとすると、ふと隣にある飾り棚が目に入った。その棚の上には何と!沢山の写真立てが。
──こ、これは!お宝ですぞ~
そこには僕と出会う前の幼気なお姿の坊ちゃまが…天使かな~?
御父上と御母上、その真ん中には三歳くらいだろうか?ニコニコと微笑む坊ちゃまが写っている。その可愛さに悶絶して、口を手で押さえながらフルフルと首を振る。
「それかい?初めてこの本邸に来た時写したものだよ。可愛いって?だけどね…この時本当につまらないと思ってるんだよ。この世はホントにつまらない…って」
僕はその言葉にキョトンとして坊ちゃまを見つめる。この世が…つまらない?そんな風にいつも思っていたのだろうか…こんなに小さいのに?そういえば以前、僕の存在だけが生きているのを実感させる…って言ってたね…
「さっきは祖父が酷いことを言ってごめん…。私は祖父のような考えじゃない!エリオットはもちろんだけど、公爵家で働いてくれている皆を大事に思っている。だから…」
「大丈夫ですよ!坊ちゃま。僕はちゃんと分かっています。坊ちゃまが僕を大事に思っていること。僕だって坊ちゃまが一番大事ですから!」
大旦那様が言うことは正論だ、間違ってますとは言えない。だけど…坊ちゃまの気持ちは坊ちゃまだけのものだ。それを無理矢理変えようとするのだけは止めて欲しい。それを大旦那様に認めてもらうのは難しいのかな?そう思ってしまうが、僕はそれでいいんだと伝えたい気持ちから精一杯微笑んだ。坊ちゃまへの想いを込めて…
それに坊ちゃまは、僕の気持ちを汲んでくれたのだろう、ちょっと悲しい顔をしながらも笑顔を作ってくれる。そして…
坊ちゃまがスッと僕の間近へと近付いた。えっ…近すぎない?そう思った瞬間、僕をぎゅっと抱き締める。突然そう抱き締められて正直戸惑った。だって、僕から抱き締めることはよくあるけれど、坊ちゃまからなんて…ないよね?
「エリオット、結婚してくれないか?」
──け、結婚!?これって、プロポーズ?
マズい…そう思いながらも、頭の中でゴッド◯ァーザーのテーマ曲を元気に歌う。だってさ、歌わないとやってらんないでしょ?
それから僕は落ち着く為にハァーッと一つ溜息を吐いて、笑顔で坊ちゃまの方を見る。…その隣で僕を睨んだままの大旦那様の方は極力見ないようにして。
「エリオットは本邸は初めてだから、一緒においで!」
「はい…かしこまりましたぁ」
楽しげに談笑しながら歩くお二人の後ろを、ちょっと俯きがちに付いて行く。それにしても大旦那様は、齢六十は過ぎている筈だ…それなのに何て言うのかな、燻し銀の魅力?間近で見る大旦那様は、めっちゃパンチが強かった!
白髪の御髪がキラキラと煌めいていて、もうプラチナなんだか白なんだか分からない。どっちでもいいっていうか?そんなものでこのお方の魅力は変わらないだろう。その顔の皺一つ一つまでもがマイナスなんかじゃなく、彩りの一つなんだと思う。それと坊ちゃまと同じ深い藍色の瞳で見つめられると…
──見~て~る~!怖っ。
「ところでお前、まだいたのか?とっくに辞めたと思っておったぞ!」
いつの間にか大旦那様にジロジロと見られていた僕は、思わずギクッと後ずさる。
「はい!いまだお世話になっておりますっ」
途端、ビシッと姿勢を正し90°の角度でお辞儀をする。それを見ながらフンと鼻を鳴らす大旦那様。怖いなぁ…怖すぎるって~!
「お祖父様、エリオットは私の大事な従者です。それこそ共にいないなど考えられないほどに…」
坊ちゃまはそう言って、振り返りながら僕にと微笑みかける。その瞬間、この場が癒やしのスポットに!ブワッと清らかな空気を浴びてレベルMAXまで回復する僕のHP。はあぁぁ~坊ちゃまぁ!
「ジュリアス、その考えは危険だ!前からそう言っているだろう?使用人はどこまでいっても所詮、使用人だと…」
大旦那様はそう厳しく言い聞かせようとする。僕はここまで言い切る大旦那様に、何かこの考えに至る理由があるのかな?って思った。確かに公爵家の使用人といえば平民が主で、たまに没落貴族の子女なんかも…それに僕のような訳アリ貴族とかだ。仕える主人に対して馴れ馴れしいのは、褒められることじゃないけど…だけど同じ人間同士だ。少しくらいなら…と思うのは罪なのかな?
やはり貴族の中には、そういう考えが主流なんだ…と改めて考えさせられた。
それから大旦那様と坊ちゃまはリビングルームで暫く楽しそうにお話をされていたが、「疲れただろうから今日は休みなさい」と言われた坊ちゃまが、リビングを後にする。
そしてこの屋敷の二階にあるという、坊ちゃまのお部屋へと二人で向かう。
初めての本邸は王都のお屋敷よりも重厚な造りで、廊下に飾られた絵画や彫像も凄く豪華だ。価値は全く分からないけど一体おいくら?って思うほど。はーっ、へーっ!と驚きながら階段を上がって奥まで進む。そして大きな扉の前まで来ると…
「ここだよ!ここが私の部屋だ。といっても滅多に使わないけどね」
それに僕はサッと前に回り込んでその扉を開ける。すると空気の入れ替えの為か窓が開いていて、スーッと頬を風が撫でていく。
「わあ!気持ちの良い部屋ですね。今窓を閉めますから」
そう言いながら部屋に入り、窓へと近付いて行く。するとその窓からは大きな庭園が!
真ん中に噴水があり、それを囲むように円形に植栽されている。紫陽花かツツジかな?今は冬で花はないけれど、春になればきっと素晴らしい眺めなんだと思う。また違う季節にも来てみたいな…
それからパタンと窓を閉めて、坊ちゃまの近くに戻ろうとすると、ふと隣にある飾り棚が目に入った。その棚の上には何と!沢山の写真立てが。
──こ、これは!お宝ですぞ~
そこには僕と出会う前の幼気なお姿の坊ちゃまが…天使かな~?
御父上と御母上、その真ん中には三歳くらいだろうか?ニコニコと微笑む坊ちゃまが写っている。その可愛さに悶絶して、口を手で押さえながらフルフルと首を振る。
「それかい?初めてこの本邸に来た時写したものだよ。可愛いって?だけどね…この時本当につまらないと思ってるんだよ。この世はホントにつまらない…って」
僕はその言葉にキョトンとして坊ちゃまを見つめる。この世が…つまらない?そんな風にいつも思っていたのだろうか…こんなに小さいのに?そういえば以前、僕の存在だけが生きているのを実感させる…って言ってたね…
「さっきは祖父が酷いことを言ってごめん…。私は祖父のような考えじゃない!エリオットはもちろんだけど、公爵家で働いてくれている皆を大事に思っている。だから…」
「大丈夫ですよ!坊ちゃま。僕はちゃんと分かっています。坊ちゃまが僕を大事に思っていること。僕だって坊ちゃまが一番大事ですから!」
大旦那様が言うことは正論だ、間違ってますとは言えない。だけど…坊ちゃまの気持ちは坊ちゃまだけのものだ。それを無理矢理変えようとするのだけは止めて欲しい。それを大旦那様に認めてもらうのは難しいのかな?そう思ってしまうが、僕はそれでいいんだと伝えたい気持ちから精一杯微笑んだ。坊ちゃまへの想いを込めて…
それに坊ちゃまは、僕の気持ちを汲んでくれたのだろう、ちょっと悲しい顔をしながらも笑顔を作ってくれる。そして…
坊ちゃまがスッと僕の間近へと近付いた。えっ…近すぎない?そう思った瞬間、僕をぎゅっと抱き締める。突然そう抱き締められて正直戸惑った。だって、僕から抱き締めることはよくあるけれど、坊ちゃまからなんて…ないよね?
「エリオット、結婚してくれないか?」
──け、結婚!?これって、プロポーズ?
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