上 下
51 / 95
第七章・エリオットの正体

50・弟のために

しおりを挟む
 な、何やってんの?あんたたち!ハーブって、宝の山ですやん?

 そう唖然とするが、肝心のガイは全く意味が分からないようだった。あれ?この世界にだって、ハーブ使ってるよね?そう思って暫し考える。
 料理に使うスパイスなんかはあるな。それにハーブも使うのかって考えたら、実は殆ど使ってないのかも?恐らく国によって相違があるのかも知れないが、このアイシャ国においては余り人気がないらしい。それに香水などにもハーブって使われると思うけど、果物や花、それに樹脂や木の皮、竜涎香などを使うのが主流なんだよね。となったらさ、今がチャンスなんじゃなーい?

 前世でもさ、前まではハーブ何それ?だったのに、いつの間にか皆んなハーブ、ハーブって言い出して。流行りだしたらもう止まらないのよ!そうなったら使うのが当たり前になるんだよね~。それ、狙ってみる価値あるんじゃありませんこと?いやらしい話かも知れないけど、もうお金の匂いプンプンだ!
 
 そして自慢じゃないけど、僕はその知識がある!おばあちゃんがさ、趣味が高じてハーブ園経営してたんだよね。僕なんかその影響で昔から花やハーブに親しんでたから。なんと枕にラベンダーのポプリ、入れてました!ぐっすり寝れるんだよね~。それからアロマオイルにすれば、リラクゼーションに使えたりマッサージにも!色々使えて便利だよね。

 そう閃いて、ガシッ!とガイの肩を掴んだ。だってさ、義理の兄弟になるかも?なんだよ。イーライだって、な侯爵家の令息と結婚するよりな侯爵家令息と結婚した方がいいでしょ!えっ…結婚の話はまだ早いって?イーライみたいなタイプは、付き合ったら一直線だよ!それにガイ君が僕を早速お兄さんって呼ぶこと自体、それをほのめかしてると思いまーす。

 「ガイ君、お兄さんとビジネスの話をしようか?是非シュテファン様もご一緒に!!」

 僕はムフフと笑って、晩餐の準備が整うまでクルーガー兄弟の前でハーブについての有効利用の方法や効能、そしてこれは特大のビジネスチャンスなんだとプレゼンした。最初は半信半疑だったお二人も、どんどん顔が輝いていく。

 「本当にありがとうございます!実は私、父の後を継ぐ為に近々騎士団を退団してこちらの領地に帰ることになっています。ですが、こっちの事業なんていっても殆どすることなどありませんから…凄く不安になっていました。ですがエリオット様からこの事業の可能性をお聞きして、俄然やる気が起きました!」

 そう言ってシュテファン様は僕の手をニギニギしてくる。それからガイ君は「流石お兄さん!」と叫びながら抱き着いてきた。でっかい男二人に熱烈歓迎され、そりゃ良かったねぇとホロリとしていると、そこにタイミング悪く、なかなか帰って来ない僕を心配して探しに来た坊ちゃまが…!

 「こ、コラッ!」

 いつものコラッ!いただきました~。慌てて僕は坊ちゃまに、事の次第を話して聞かせる。それには流石の坊ちゃまも驚いて…

 「エリオットにそんな知識があったなんて!」

 「たまたまです…。母から聞いたんだったかな?もしかして曾祖母の出身国アイシャから伝え聞いたのかも知れませんね」

 とりあえずはそう誤魔化しておいた。前世の世界で流行ってました!なんて言えないし。

 それから尚一層和やかな晩餐が始まって、僕達はクルーガー家のシェフが腕によりをかけた数々の料理をモリモリ食べながら色んな話をして盛り上がる。すっかりと打ち解けて気が大きくなってきた僕は、気になっていたことを聞いてみる。

 「ガイ君は確か近衛騎士団への入団が決まってるんだよね?それならイーライはどうするって言ってるのかな?もう決まってたりする?」

 「そうです…私は近衛騎士団へ。イーライは、第一騎士団の入団テストを受ける予定です。それで恐らく合格出来るんじゃないかと思うんです…実力はありますから!」

 そうか…二人は卒業後、進路は分かれてしまうんだな…近衛騎士団と第一騎士団。まるでロミジュリ!二つの騎士団は凄く仲が悪くて有名なんだ。それは近衛が王族や城を守るのに対して、第一は主に城外を守る任務に付く。どう考えたって近衛の方が上でしょ?ってなるよね~

 「そうなんだね!二人は目に見えない壁に阻まれてしまうかも知れないけど…しっかりね!お互いの想いが強ければ大丈夫だから」

 「お、お兄さん!」

 そして僕らは再びガッシリと抱き合った。またコラッ!て聞こえたよ?

 そんな楽しい晩餐はお開きになって、明日に備えて直ぐに就寝した。そして朝…

 「本当にお世話になりました!後で僕の記憶にあるだけのハーブの情報を書いたものをお届けしますので!安心して下さいね~」

 そう挨拶して僕達一行はクルーガー侯爵邸を後にした。偶然ガイと再会して、思いがけず招待されて嬉しい話も聞けた。とても充実した一日だったと感謝して、お二人が見えなくなるまで手を振った。

 よし!これから僕にとっての本丸。エドモア公爵家邸へと出発~!そこで何が起こるのかまだ僕は知らないが、きっと僕と坊ちゃま二人にとって重要なことが起こる!そう感じていた…


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
【完結】そのうち番外編更新予定。伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷うだけだ┉。僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げた。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなの何で!? ※R対象話には『*』マーク付けますが、後半付近まで出て来ない予定です。

側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。

とうや
BL
【6/10最終話です】 「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」 王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。 あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?! 自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。 ***********************   ATTENTION *********************** ※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。 ※朝6時くらいに更新です。

【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

MEIKO
BL
本編完結しています。Ωの涼はある日、政略結婚の相手のα夫の直哉の浮気現場を目撃してしまう。形だけの夫婦だったけれど自分だけは愛していた┉。夫の裏切りに傷付き、そして別れを決意する。あなたの妻(Ω)辞めます!  すれ違い夫婦&オメガバース恋愛。 ※少々独自のオメガバース設定あります (R18対象話には*マーク付けますのでお気を付け下さい。)

僕の策略は婚約者に通じるか

BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。 フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン ※他サイト投稿済です ※攻視点があります

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

婚約者は愛を見つけたらしいので、不要になった僕は君にあげる

カシナシ
BL
「アシリス、すまない。婚約を解消してくれ」 そう告げられて、僕は固まった。5歳から13年もの間、婚約者であるキール殿下に尽くしてきた努力は一体何だったのか? 殿下の隣には、可愛らしいオメガの男爵令息がいて……。 サクッとエロ&軽めざまぁ。 全10話+番外編(別視点)数話 本編約二万文字、完結しました。 ※HOTランキング最高位6位、頂きました。たくさんの閲覧、ありがとうございます! ※本作の数年後のココルとキールを描いた、 『訳ありオメガは罪の証を愛している』 も公開始めました。読む際は注意書きを良く読んで下さると幸いです!

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

処理中です...