【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第五章・恋の進行状況

34・勝敗の行方

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 「第一試合先鋒戦!ステファニーとアラン・ロマン、前に!」

 騎士団長マックス卿のその掛け声に、真剣な面持ちでサッと闘技場の真ん中に立つ二人。そして観覧席からは大きな拍手が起こり、やがてシンと静まり返った。
 
 ステファニーは女性にしてはやや大柄だ。だけどアランは逆に男性としては小柄なので、二人は体格的にはあまり差がない。だからきっと、いい試合を見せてくれるのでは?と期待が大きくなる。

 この交流戦では、学生同士ということが配慮され、真剣は使わない。模造剣を使うのだが、だからと言って当たっても痛くない訳ではない。当たるともちろんうずくまるほど痛いし、骨も折れる。日本でいうと、木刀みたいなものだね。切れないというだけで、当たりどころが悪ければ死ぬことだって…

 そんなピリッとした緊張感の中、二人は睨み合う。今日のために新調した王都学園側の白の軍服が本当に眩しい。アランは普段、人当たりが優しく穏やかな性格だが、流石代表に選ばれるだけあって、戦う時はまるで別人の覇気を放っている。シュッと斜めに剣を構えるその様は、いつものオドオドとした姿は微塵もない。

 ──うおっ!格好いい~アラン君って、試合になると全然違う!本気になると、別人になるね~怒らせると怖いタイプ?

 だが敵もさる者、ステファニーも細身の剣を構えるとバッと辺りには殺気がほとばしる。
 二人はジリジリと間合いを詰めて、一触即発だ!どっちから仕掛けるのか…と誰もが息を呑む。すると…

 ──シュッ、カキーン!

 ステファニーが隙を見て先に剣を振り下ろし、それをアランが剣で受け止める。そしてギギギッと耳が痛くなるような、刃のぶつかり合う音が響いた。そして手首の柔らかさを使って、グアン!とステファニーの剣を弾くアラン。今度はアランが、そのまま下段から剣を振り上げようとすると…

 ふわりっ!とその長髪をなびかせながら、ステファニーが跳んだ。助走なしに半身ほど飛ぶ凄い跳躍だ!その勢いあるアランの剣を跳んで避けるステファニー。そんな行動に意表を突かれたのかアッ!とアランは一瞬怯んでしまう…。それを見逃さないのは、ただ一人女性として代表に選ばれたステファニー。そのまま力任せにザンン!と剣を振り下ろした。

 ──キーーン!…グサッ。

 弾かれたアランの剣が飛び、そして離れたところの地面に突き刺さった。その瞬間、闘技場は割れんばかりの歓声に包まれる。

 「うおーっ!凄いなぁ~」

 「なんだあのひと!あれこそ忍者だろ?」

 僕とトムさんも興奮しきりで、敵チームだということも忘れて叫んだ。アラン君は残念だけど、ステファニーが上をいっていた。あそこで跳ぶ余裕があるのだから…だけどホントに格好いいなぁ!由◯かおるかな~?

 「勝者ステファニー!」

 勝者が大きな声で告げられ、ステファニーとアランが向かい合って頭を下げ、お互いの健闘を讃える。すると会場は再び盛大な拍手に包まれる。僕達も、負けちゃったけどアラン君素晴らしかったよ!と力一杯称賛した。

 ──はあぁ…負けちゃったね!でもあれでは仕方ないし、精一杯やったのだから誇るべきだ。次は…どうしよう~

 早くもそうドキドキしていると、先鋒の二人が歓声に手を振りながら去って行くのが見えた。満面の笑顔のステファニーの後ろで、少し寂しそうな顔のアラン君。やっぱり悔しいんだろうなぁ…でもあれだけやったのだから自信を持ってー!と客席からエールを送っていると、通路に差し掛かったところで、アラン君をそっと抱き寄せる腕が。

 へっ…?そう思って、思わず視線を戻して見上げる。王族席に居る筈の大公殿下がいない…もしや?
 よくよく目を凝らして見ると、綺麗な金色の目をウルウルしちゃってるアラン君を、ぎゅっと力強く抱き締めている大公殿下が。そしてアランの目の端に滲む涙を、そっと指で優しく拭ってあげている。それを見た観客達がまたまた大盛り上がりだ。

 ──何だよ…ラブラブじゃん!誰だよ?大公は坊ちゃまに懸想するって言ったのは?僕か!?

 そうノリツッコミしながら二人を見ていたら、これはきっと大丈夫なんだと思えた。
 少なくともマクベス大公が今愛しているのは、アラン君だ!それは間違いない。この先どうなるのかと少しだけ不安はあるけれど、坊ちゃまの声を聞かせないのを徹底すればまず大丈夫だろう!そう結論づけた。

 ──なんか、羨ましい~!見てよあれ…二人の世界じゃね?側で見てる勝者のステファニー、ドン引きしちゃってるよ?僕だってさ、坊ちゃまが勝ったら、抱き着いてお祝いするもんねっ!

 ふん!と謎の対抗心で鼻を鳴らして、再びアリーナに目を向ける。すると騎士団長がまた登場して来た。ついに…次鋒戦だ!こ、怖いよ…

 「この交流戦はトーナメント戦だ。だから次は、先程の勝者ステファニーと王都学園次鋒、ジュリアス・エドモア!」

 僕の中の真打ち、坊ちゃまが登場した。やはりというか、絶対というか会場はキャーキャーという歓声が溢れ返る。奥様方とご令嬢と、若い男性とオジサンと…とにかく!興奮の坩堝るつぼだ。そりゃそうだよね?BLゲーム主人公の坊ちゃまだよ?世の女性達なんて朝飯前で、男性達でもお茶の子さいさいだよ?

 はははぁん!と自分のことのように自慢気に笑って、それから真剣に坊ちゃまを見つめる。

 ──頑張って!坊ちゃま。もしも勝つことが出来たら、あなたの勝利の女神の僕が、存分に抱き着いちゃいますからー!
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