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第五章・恋の進行状況

31・いざ!交流戦

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 今日という日が来てしまった…僕は坊ちゃまをドキドキしながら見守る。交流戦のことはもちろんだが、大公殿下のこともある。遠くからならまだしも、バッタリと出会ってしまったらどうなる?もしかして、破滅ルート始まるんじゃないか…?
 そしてそれは、坊ちゃまが相手をどう思おうが否応無しにやって来るんだ…こ、怖いよ~!

 だが僕は決めている。坊ちゃまを大公には近付けないと!間近で言葉を交わさなければ、きっとそれを避けられると思う。何故そう思うのかと言うと、大公がジュリアスという大輪の花に気付いたきっかけは、その涼やかな声を聞いたからなんだ!
 
 あれは誰の声だろう?と、まるで誘われるかのようにジュリアスへと導かれてしまう。それを阻止できたら?まず大丈夫なんじゃないかと思う。普通は大公殿下ほどの身分の方とは、おいそれとは会う機会などないから…

 だけどまずは交流戦だ!僕達は、城にほど近い円形闘技場にやって来た。普段ここは、近衛騎士団や第一、第二騎士団の鍛錬にも使われている。もちろん、この闘技場の隣にある騎士学園の生徒達も…めっちゃアウェイじゃん!相手チームにしてみれば庭みたいな所だろう?そんなら緊張だってしないだろうしさ…

 対する我らが王都学園の生徒達は?と、並んで待機している通路際を見ると、全員が緊張の面持ちをしている。あのアンディでさえ、若干顔色が悪いように見えるけど…大丈夫なのか?そう心配していると、さらに皆が緊張してしまうような大きな声が響き渡る。

 「王都学園、騎士学園の生徒諸君、恒例の交流戦の開催を宣言する!正々堂々と、日頃の鍛錬の成果を見せて欲しい。では始めよ!」

 このブラシリア国、国王陛下による開催宣言がなされた。それによって代表生徒だけでなく、応援にと駆け付けた両校の生徒、その関係者と親達までもを一気に興奮の渦に巻き込んだ!

 ──嘘でしょ…国王陛下、来ちゃうわけ?女神に感謝を捧げる目的の、親睦を兼ねた交流戦なんだよね?思ってたのと違うー!

 実際の交流戦は、僕が思っていた以上の規模だった…。生徒達だけなのかと思っていたのに、代表の親達はもちろん、応援目的で来ている生徒達も家族を連れ立って来ている。それに僕達のような使用人やどういった関係なのかも分からないような人達も…。これは、それぞれの学園に通う貴族の…その威信を賭けた戦いなんだと、今更ながらに気付いた。

 「今回の交流戦の進行を任された、近衛騎士団長マックス・ブリトーだ。では、両校の代表者を紹介しよう!まずは騎士学園から…先鋒、ステファニー!」

 厳つい顔で筋肉隆々の騎士団長ブリトーが大きな声で代表者を呼ぶ。その声に手を振りながら現れたのは、なんと平民の女騎士ステファニーだ。国中から選りすぐりの腕自慢の生徒達が通う騎士学園において、実力のみで選ばれた女性だ。王都学園とは違って、こちらは実力さえあれば平民でも通える。そこで認められることは人々の憧れで、この場は大いに盛り上がる。
 そのステファニーがアリーナに足を踏み入れ、闘技場の真ん中まで進んでスッと立ち止まった。

 凄い!女性だなんて…騎士学園に通う殆どが、卒業とともに近衛や他の騎士団に入団すると聞いている。入学するのも難関で、誰でもが入れるのではないらしい。となると、イーライも?あの弟もきっと選ばれた実力なんだろうな…そんなことを思っていると、一際大きな歓声が上がる。…ん?

 「次は、王都学園先鋒…アラン・ロマン!その応援に、マクベス大公殿下がいらっしゃっております」

 二人の婚約は、まだ発表されていない筈だが、もしかして公然の秘密なんだろうか…?この場でそう言ったら、もう秘密でも何でもないけど…

 それには、おおーっ!と大きな歓声で、ここにいるほぼ全員が、観覧席よりも数段高い王族専用の席へと視線を移す。その真ん中には国王陛下が座られて、その隣に居るのがマクベス大公のようだ。まだ二十代半ばほどだろうか?隣の国王陛下と比べると、親子と言ってもいいほど若々しいお方だ。国王やラウル殿下とは違って、真っ黒な髪が印象的。それでいて瞳は王族の特有のそれで、鮮やかな碧眼が煌めいている。これはアラン君でなくとも…惚れる!大人の魅力というのだろうか?凄い色気だ…だけどこの人、闇堕ちしちゃうのよね?

 「凄いな!国王陛下にマクベス大公様なんて、一度にお会いできると思ってなかったよな~」

 そう言って目をキラキラさせるトムさん。意外とミーハーだな?僕らは今、その王族席とアリーナを挟んで真正面の、代表観覧席に陣取っている。僕もトムさんも、代表者の関係者ということで、ベストポジションの神席をゲットだ!

 そんな意外な人物の魅力にクラクラしていると、次の選手の名が呼び上げられる。

 「次は次鋒!騎士学園、ロイ・アルバ。そして王都学園、ジュリアス・エドモア!」

 ──キャ~坊ちゃま!素敵~眩しくて目潰れるぜっ!んで、ごめんね~ロイ君。恨むなら、坊ちゃまと同じ次鋒になった自分を恨んでぇー!

 そのロイ君が遠慮がちに手を振りながら現れて、その後ろからまるで光を纏ったかのような坊ちゃまが現れる。すると闘技場はこれまでにない黄色い歓声に包まれる。おまけに坊ちゃまは、僕をチラッと見て…ニコッと微笑んだ。ワザとですか?ワザとですよね?と僕はもう失神寸前で、ありがたやぁ~と拝むばかりなり!

 ひとしきりキャーキャー言って、ハタと気付く…。坊ちゃま闘技場に降臨しちゃったけど、大公は大丈夫なのかな?と。もしや一目惚れしちゃったりなんかしないよね?と、真正面にいらっしゃる大公様を見上げる。

 ──ん…?んんんっ?

 何故かな。僕の方を見てるような…それって、気のせいだよね…?
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