【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

文字の大きさ
上 下
19 / 107
第三章・攻略の行方

18・百合かも?

しおりを挟む
 ある日の午後、全力で掃除を終えた僕はいつものように散歩に出掛ける。すっかり仲良くなった各貴族家の使用人の皆さんと挨拶を交わし、学園の用務員さんにお茶をご馳走になる。
 それから殿下の護衛の騎士さん達とバッタリ会って、体に悪いからトイレの我慢は禁物だよ?と注意申し上げた。
 そして馬車が見えたのでどちらの貴族家の?と側に寄ったらグレイ侯爵家の執事さんが現れて、うちの坊ちゃまをこれからもよろしくと菓子折を渡された。うーん…

 ──全然、前に進めねぇ!

 ただの散歩の訳、ないだろう?目的があるんだよ。もーう!
 ラウル殿下にはバレちゃってるけど、坊ちゃまウォッチングの聖地、薔薇の生け垣にGO!

 これ以上人にバレちゃなんねぇと、辺りを警戒しながら進む僕。学園の正面玄関からかなり遠い為に、ここまで来る人はまず居ない。かつて一組…いらっしゃいましたけどね?

 この前はランチタイムだったけど、今日は授業終わりの予習復習タイムを狙っている。坊ちゃまは、部屋に勉強を持ち込まない。授業が終わったらカフェにお寄りになって、そちらでその日の予習復習を終えてから部屋に戻られるのだ。まあ、坊ちゃまは天才だからそんなに勉強しなくて大丈夫なんだろうけどね!

 「だから今日は、その貴重な時間をウォッチングだよーっ」

 もうそろそろ来られたかな?そう期待しながら、のそのそと生け垣の穴に這って進み覗いてみる。この時間はそれほどカフェは混んでいない様子で、ポツリポツリと離れた間隔で生徒さんが座っている。

 ──あれ…坊ちゃま、まだかしら?

 見たところ坊ちゃまは、まだ現れていない。とっくに授業は終わっている筈だけど…
 せっかく来たのだし、もう少し待ってみようと思った時、この静かな憩いのスペースには似つかわしくないような賑やかな声が聞こえてくる。

 「エドモア公子様!こちらのお席はどうでしょうか?是非私もご一緒に」

 媚びるような甲高い声が聞こえて、えっ…と眉を顰めた。今、エドモア公子様って言ったよね?
 バッとその声の方に目をやると、可愛い系のご令嬢がキャピキャピと浮かれている様子で…な、何だ!?

 その令嬢の後から、あろう事か坊ちゃまがスゥーッと現れる。坊ちゃまはいつものように無表情だが、何故かその令嬢が指し示しているテーブルに大人しく座った。

 ──な、何だ!坊ちゃまが、どこかのご令嬢と…同席しただってーぇ?

 基本、兄妹や親族それから婚約しているような間柄以外は、独身の男女が同席することはない。だけどここは学園だし、学友としてはアリな人もいるかも知れないが、坊ちゃまに限ってそれは絶対にない!それなのに…

 僕は、その同席している人物を目を凝らしてじっと見た。遠くからなので細部までは見えないが、ひと目で分かるような可愛らしい容姿をしている。ふわふわの金髪の巻き毛に、パッチリとした瞳は坊ちゃまを見つめて緑翠に煌めく。小さな唇をちょっと窄めて、頬がほんのりと桃色に染まっていて…

 ──だ、だ、誰よ?あの子、誰なのよーっ!

 僕は余りの衝撃に、口をあんぐりと開けていた。開いた口が塞がらない…っていうのは、こういうことを言うのだろう。

 それからその令嬢が一生懸命何かを話し掛けていて、隣の坊ちゃまはやはりというかマイペースで、教科書を開いて予習復習を始める。だけどそんな勉強に邪魔になるような行動をする令嬢を、邪険にする訳でもなく、見守っている…感じ?
 この二人…まじまじ交互に眺めると、なんだか不思議な感覚を覚える。

 今更言うまでもないが、坊ちゃまの美麗さは他の追随を許すことはない!決して女性的ではないが、それを超越した存在なんだ…まるで天女の羽衣か!?な輝くプラチナブロンドの髪を揺らして、陶器のようなきめ細やかな肌に蒼い海のような瞳。こんな人が本当にいるのか?と、どこまでも神々しく凛としたお姿。
 対するその令嬢は、それの対極というのか可愛いの特化型だ。誰がどう見ても、愛らしい顔立ちだと答えるだろう。
 
 そんな二人が同じテーブルに並んで座っている。
 坊ちゃまを見て、その令嬢を見る。令嬢を見て、また坊ちゃまを見る…それを繰り返すと何故かそう見えてくる。

 左右の目の焦点を変えると文字が浮かんでくる絵、あるじゃない?割り箸の端を持って揺らすと、グニャグニャに見えるじゃない?あんな感じ!えっ…全然分からない…?
 だからさ、二人が並ぶとまるで百合かも…

 この世界。BLだったよね?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...