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第三章・攻略の行方
18・百合かも?
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ある日の午後、全力で掃除を終えた僕はいつものように散歩に出掛ける。すっかり仲良くなった各貴族家の使用人の皆さんと挨拶を交わし、学園の用務員さんにお茶をご馳走になる。
それから殿下の護衛の騎士さん達とバッタリ会って、体に悪いからトイレの我慢は禁物だよ?と注意申し上げた。
そして馬車が見えたのでどちらの貴族家の?と側に寄ったらグレイ侯爵家の執事さんが現れて、うちの坊ちゃまをこれからもよろしくと菓子折を渡された。うーん…
──全然、前に進めねぇ!
ただの散歩の訳、ないだろう?目的があるんだよ。もーう!
ラウル殿下にはバレちゃってるけど、坊ちゃまウォッチングの聖地、薔薇の生け垣にGO!
これ以上人にバレちゃなんねぇと、辺りを警戒しながら進む僕。学園の正面玄関からかなり遠い為に、ここまで来る人はまず居ない。かつて一組…いらっしゃいましたけどね?
この前はランチタイムだったけど、今日は授業終わりの予習復習タイムを狙っている。坊ちゃまは、部屋に勉強を持ち込まない。授業が終わったらカフェにお寄りになって、そちらでその日の予習復習を終えてから部屋に戻られるのだ。まあ、坊ちゃまは天才だからそんなに勉強しなくて大丈夫なんだろうけどね!
「だから今日は、その貴重な時間をウォッチングだよーっ」
もうそろそろ来られたかな?そう期待しながら、のそのそと生け垣の穴に這って進み覗いてみる。この時間はそれほどカフェは混んでいない様子で、ポツリポツリと離れた間隔で生徒さんが座っている。
──あれ…坊ちゃま、まだかしら?
見たところ坊ちゃまは、まだ現れていない。とっくに授業は終わっている筈だけど…
せっかく来たのだし、もう少し待ってみようと思った時、この静かな憩いのスペースには似つかわしくないような賑やかな声が聞こえてくる。
「エドモア公子様!こちらのお席はどうでしょうか?是非私もご一緒に」
媚びるような甲高い声が聞こえて、えっ…と眉を顰めた。今、エドモア公子様って言ったよね?
バッとその声の方に目をやると、可愛い系のご令嬢がキャピキャピと浮かれている様子で…な、何だ!?
その令嬢の後から、あろう事か坊ちゃまがスゥーッと現れる。坊ちゃまはいつものように無表情だが、何故かその令嬢が指し示しているテーブルに大人しく座った。
──な、何だ!坊ちゃまが、どこかのご令嬢と…同席しただってーぇ?
基本、兄妹や親族それから婚約しているような間柄以外は、独身の男女が同席することはない。だけどここは学園だし、学友としてはアリな人もいるかも知れないが、坊ちゃまに限ってそれは絶対にない!それなのに…
僕は、その同席している人物を目を凝らしてじっと見た。遠くからなので細部までは見えないが、ひと目で分かるような可愛らしい容姿をしている。ふわふわの金髪の巻き毛に、パッチリとした瞳は坊ちゃまを見つめて緑翠に煌めく。小さな唇をちょっと窄めて、頬がほんのりと桃色に染まっていて…
──だ、だ、誰よ?あの子、誰なのよーっ!
僕は余りの衝撃に、口をあんぐりと開けていた。開いた口が塞がらない…っていうのは、こういうことを言うのだろう。
それからその令嬢が一生懸命何かを話し掛けていて、隣の坊ちゃまはやはりというかマイペースで、教科書を開いて予習復習を始める。だけどそんな勉強に邪魔になるような行動をする令嬢を、邪険にする訳でもなく、見守っている…感じ?
この二人…まじまじ交互に眺めると、なんだか不思議な感覚を覚える。
今更言うまでもないが、坊ちゃまの美麗さは他の追随を許すことはない!決して女性的ではないが、それを超越した存在なんだ…まるで天女の羽衣か!?な輝くプラチナブロンドの髪を揺らして、陶器のようなきめ細やかな肌に蒼い海のような瞳。こんな人が本当にいるのか?と、どこまでも神々しく凛としたお姿。
対するその令嬢は、それの対極というのか可愛いの特化型だ。誰がどう見ても、愛らしい顔立ちだと答えるだろう。
そんな二人が同じテーブルに並んで座っている。
坊ちゃまを見て、その令嬢を見る。令嬢を見て、また坊ちゃまを見る…それを繰り返すと何故かそう見えてくる。
左右の目の焦点を変えると文字が浮かんでくる絵、あるじゃない?割り箸の端を持って揺らすと、グニャグニャに見えるじゃない?あんな感じ!えっ…全然分からない…?
だからさ、二人が並ぶとまるで百合かも…
この世界。BLだったよね?
それから殿下の護衛の騎士さん達とバッタリ会って、体に悪いからトイレの我慢は禁物だよ?と注意申し上げた。
そして馬車が見えたのでどちらの貴族家の?と側に寄ったらグレイ侯爵家の執事さんが現れて、うちの坊ちゃまをこれからもよろしくと菓子折を渡された。うーん…
──全然、前に進めねぇ!
ただの散歩の訳、ないだろう?目的があるんだよ。もーう!
ラウル殿下にはバレちゃってるけど、坊ちゃまウォッチングの聖地、薔薇の生け垣にGO!
これ以上人にバレちゃなんねぇと、辺りを警戒しながら進む僕。学園の正面玄関からかなり遠い為に、ここまで来る人はまず居ない。かつて一組…いらっしゃいましたけどね?
この前はランチタイムだったけど、今日は授業終わりの予習復習タイムを狙っている。坊ちゃまは、部屋に勉強を持ち込まない。授業が終わったらカフェにお寄りになって、そちらでその日の予習復習を終えてから部屋に戻られるのだ。まあ、坊ちゃまは天才だからそんなに勉強しなくて大丈夫なんだろうけどね!
「だから今日は、その貴重な時間をウォッチングだよーっ」
もうそろそろ来られたかな?そう期待しながら、のそのそと生け垣の穴に這って進み覗いてみる。この時間はそれほどカフェは混んでいない様子で、ポツリポツリと離れた間隔で生徒さんが座っている。
──あれ…坊ちゃま、まだかしら?
見たところ坊ちゃまは、まだ現れていない。とっくに授業は終わっている筈だけど…
せっかく来たのだし、もう少し待ってみようと思った時、この静かな憩いのスペースには似つかわしくないような賑やかな声が聞こえてくる。
「エドモア公子様!こちらのお席はどうでしょうか?是非私もご一緒に」
媚びるような甲高い声が聞こえて、えっ…と眉を顰めた。今、エドモア公子様って言ったよね?
バッとその声の方に目をやると、可愛い系のご令嬢がキャピキャピと浮かれている様子で…な、何だ!?
その令嬢の後から、あろう事か坊ちゃまがスゥーッと現れる。坊ちゃまはいつものように無表情だが、何故かその令嬢が指し示しているテーブルに大人しく座った。
──な、何だ!坊ちゃまが、どこかのご令嬢と…同席しただってーぇ?
基本、兄妹や親族それから婚約しているような間柄以外は、独身の男女が同席することはない。だけどここは学園だし、学友としてはアリな人もいるかも知れないが、坊ちゃまに限ってそれは絶対にない!それなのに…
僕は、その同席している人物を目を凝らしてじっと見た。遠くからなので細部までは見えないが、ひと目で分かるような可愛らしい容姿をしている。ふわふわの金髪の巻き毛に、パッチリとした瞳は坊ちゃまを見つめて緑翠に煌めく。小さな唇をちょっと窄めて、頬がほんのりと桃色に染まっていて…
──だ、だ、誰よ?あの子、誰なのよーっ!
僕は余りの衝撃に、口をあんぐりと開けていた。開いた口が塞がらない…っていうのは、こういうことを言うのだろう。
それからその令嬢が一生懸命何かを話し掛けていて、隣の坊ちゃまはやはりというかマイペースで、教科書を開いて予習復習を始める。だけどそんな勉強に邪魔になるような行動をする令嬢を、邪険にする訳でもなく、見守っている…感じ?
この二人…まじまじ交互に眺めると、なんだか不思議な感覚を覚える。
今更言うまでもないが、坊ちゃまの美麗さは他の追随を許すことはない!決して女性的ではないが、それを超越した存在なんだ…まるで天女の羽衣か!?な輝くプラチナブロンドの髪を揺らして、陶器のようなきめ細やかな肌に蒼い海のような瞳。こんな人が本当にいるのか?と、どこまでも神々しく凛としたお姿。
対するその令嬢は、それの対極というのか可愛いの特化型だ。誰がどう見ても、愛らしい顔立ちだと答えるだろう。
そんな二人が同じテーブルに並んで座っている。
坊ちゃまを見て、その令嬢を見る。令嬢を見て、また坊ちゃまを見る…それを繰り返すと何故かそう見えてくる。
左右の目の焦点を変えると文字が浮かんでくる絵、あるじゃない?割り箸の端を持って揺らすと、グニャグニャに見えるじゃない?あんな感じ!えっ…全然分からない…?
だからさ、二人が並ぶとまるで百合かも…
この世界。BLだったよね?
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