15 / 95
第三章・攻略の行方
14・坊ちゃまとお出掛け
しおりを挟む
王都学園の寮に住み始めて、ひと月が経った。坊ちゃまも今ではすっかりと学園生活にも慣れて、心穏やかに過ごされている。僕はといえば坊ちゃまのお世話と、何故だか色んな人との交流にと忙しくしている。割と僕って、人気者なんだよね…ハハッ…ハ、ハッ…うーん…
そのせいなのかは知らないが、坊ちゃまの攻略が全然進んでない!
まだ若すぎるのかなぁ~二年生になってから始まるの?イマドキの子は早熟なのかと思っていたけど、この世界では違うんだろうか…
それと皆んなよりも歳上な僕だからか、あれからラウル殿下からもスチュワート様からもお誘いを受ける。お茶をしに訪れたラウル殿下のお部屋は、まるで宮殿をそのまま持って来たような豪華さで、それなら城から通えばいいじゃん!って思ってしまった…。それに僕のこと、ジャッキーって呼ぶのもヤメて欲しい。それ、リスですから!
スチュワート様も僕にオススメの本を紹介してくれるんだけど、ゴメン…僕そんな学術書なんて興味ありませんから!
なんだか皆んなの兄貴ってやつ?慕ってくれるのは嬉しいけど、それに坊ちゃまが不機嫌になるのが困りもので…焼きもちかな?
それにはちょっとこそばゆい気持ちになるけど、それを都合のいい解釈をしちゃいけません!と自分を戒めている。坊ちゃまだってきっと、兄貴ってやつなんだろうと思う。一人っ子だしね!
+++++
今日は日曜日。いつもは足らなくなった物や衣服などは、公爵家から定期的に補充しに来てくれるんだけど、今日は坊ちゃまと気晴らしも兼ねて街まで買いに行くことになっている。久しぶりでワクワクするね!
公爵家から迎えの馬車が来て、また学園まで送ってくれる手筈になっているんだ。
あのアイドル系イケメン従僕、スコットさんが来るのかな?久しぶりに会えそうだ。
今僕の隣りには、落ち着いたブラウンのフロックコートに赤紫色のアスコットタイでキメた坊ちゃまが立っている。このようなお出掛けスタイルは、最近ずっと学園の制服姿ばかり見ていたのでとっても新鮮だ!まあ、坊ちゃまなら、何を着ていても素敵なんだけどね。あれ…なんだかそのタイ、僕の瞳の色と似てない?気のせいかなぁ。
「坊ちゃま楽しみですね!街に美味しいケーキ屋さんが出来たそうですよ?トムさんが言ってました。良かったら今度一緒に行こうって言われたんですけど、今日行ってみてもいいかな~なんて思ってるんですが?」
「今すぐ行こう!」
若干食い気味に坊ちゃまが答える。坊ちゃま、甘い物がそんなにお好きだったっけ?きっと新しいお店に興味がお有りなんだな。それならトムと行く必要ないよね?って聞かれたので、そうですね!って答えた。誘ってくれたトムさんには悪いけど、新しいお店は最初が一番感動するから。
二人で学園の正面玄関を出ると、ちょうど公爵家の馬車が大きな門を通り、なだらかなS字のアプローチを登って来ていた。そしてスッと僕達が居る所で横付けされる。おお流石が公爵家の馬車、見事な技だ!
そして颯爽と御者台から降りてきた人を見て驚く…し、渋~い!
スコットさんの父親のアンクルさんだ。親子二代で公爵家の御者をしている。燻し銀の技なんだね!それにやっぱり親子、スコットさんに似て物凄くイケおじだ!ソリ◯チかな?それともタケ◯ウチ?
「おはようございます坊ちゃま。たってのお召しだと伺い、今日は私が御者を務めさせて頂きます」
「うん苦労をかけるね。よろしく頼む」
僕も深々とお礼をして、坊ちゃまに続いて馬車に乗り込んだ。スコットさんも上手だけど、アンクルさんはさらに上をゆく腕だ…とっても静か!普段は公爵様や公爵夫人をお乗せしているアンクルさん。だから僕は今日が初めてなんだ!坊ちゃまが頼んでくれたようだけど、有り難いなぁ~
「坊ちゃまありがとうございます!僕、アンクルさんが御者の馬車に乗るのは初めてです」
そう笑顔でお礼を伝えると坊ちゃまは「私の理由なんだけどね。会わせたくないっていう…」そう呟かれる。
──うん?どういう意味なのかな?
誰を会わせたくないのかな?と不思議に思いながらも、馬車は軽快に走ってあっという間に街までやって来た。またお帰りの時間に参りますとアンクルさんは頭を下げて、僕は坊ちゃまの後ろをキョロキョロしながら付いて歩いた。
街は先週から秋祭りのイベントが開催されていて、とっても賑やかだ。街灯にも紅葉した葉っぱで作られた飾りが掛けられ、街の中心にある噴水の縁には赤やオレンジに色付いた南瓜のオブジェが乗っている。
僕は他でもない大好きな坊ちゃまと一緒に眺めることが出来て、むちゃくちゃ嬉しかった。来年も、再来年だって一緒に来れたら嬉しいなぁ!
秋の装飾の街並みを見ながら、今日の目的の一つ新しいペンとノートを買う。それから約束したカフェ併設のケーキ屋さんに寄ってみる。なるほど店はとても混んでいて、少し待ってからやっと席に座ることが出来た。
「やっぱり秋ですから、パンプキンパイを食べましよう!美味しいですよ?きっと」
「そうだね。私も甘すぎないし好きだ」
そうワクワクしながら紅茶と一緒に注文すると、南瓜のフィリングをこんがりと焼き上げ、たっぷりのクリームを乗せたパンプキンパイが出てきてテンションMAXに!
「トムさんが言ってた通り、とっても美味しいですね。今日来れて良かったです」
あっという間に平らげて、ニコニコでそう言う僕。ふと見ると坊ちゃまは、小さなお口でひと口ずつ食べている。なんて上品!もっとガツガツ食べていただいて、口の端に付いたクリームを指で拭って「付いてますよ♡」って、やりたかったのに~
お腹いっぱいになって心もお腹もぽっかぽか。それからお店の外に出ると、夕焼け空が広がっていて辺りは少し暗くなっていた。そろそろ帰りの馬車が来る時間かな?と思っていると…突然、後ろから走って来た男に体当たりされた。
「痛たーっ!な、何?」
驚いてその男の方をバッと見る。その男の手には見慣れた財布が握られている。え…あれ、僕の財布じゃない?
そのせいなのかは知らないが、坊ちゃまの攻略が全然進んでない!
まだ若すぎるのかなぁ~二年生になってから始まるの?イマドキの子は早熟なのかと思っていたけど、この世界では違うんだろうか…
それと皆んなよりも歳上な僕だからか、あれからラウル殿下からもスチュワート様からもお誘いを受ける。お茶をしに訪れたラウル殿下のお部屋は、まるで宮殿をそのまま持って来たような豪華さで、それなら城から通えばいいじゃん!って思ってしまった…。それに僕のこと、ジャッキーって呼ぶのもヤメて欲しい。それ、リスですから!
スチュワート様も僕にオススメの本を紹介してくれるんだけど、ゴメン…僕そんな学術書なんて興味ありませんから!
なんだか皆んなの兄貴ってやつ?慕ってくれるのは嬉しいけど、それに坊ちゃまが不機嫌になるのが困りもので…焼きもちかな?
それにはちょっとこそばゆい気持ちになるけど、それを都合のいい解釈をしちゃいけません!と自分を戒めている。坊ちゃまだってきっと、兄貴ってやつなんだろうと思う。一人っ子だしね!
+++++
今日は日曜日。いつもは足らなくなった物や衣服などは、公爵家から定期的に補充しに来てくれるんだけど、今日は坊ちゃまと気晴らしも兼ねて街まで買いに行くことになっている。久しぶりでワクワクするね!
公爵家から迎えの馬車が来て、また学園まで送ってくれる手筈になっているんだ。
あのアイドル系イケメン従僕、スコットさんが来るのかな?久しぶりに会えそうだ。
今僕の隣りには、落ち着いたブラウンのフロックコートに赤紫色のアスコットタイでキメた坊ちゃまが立っている。このようなお出掛けスタイルは、最近ずっと学園の制服姿ばかり見ていたのでとっても新鮮だ!まあ、坊ちゃまなら、何を着ていても素敵なんだけどね。あれ…なんだかそのタイ、僕の瞳の色と似てない?気のせいかなぁ。
「坊ちゃま楽しみですね!街に美味しいケーキ屋さんが出来たそうですよ?トムさんが言ってました。良かったら今度一緒に行こうって言われたんですけど、今日行ってみてもいいかな~なんて思ってるんですが?」
「今すぐ行こう!」
若干食い気味に坊ちゃまが答える。坊ちゃま、甘い物がそんなにお好きだったっけ?きっと新しいお店に興味がお有りなんだな。それならトムと行く必要ないよね?って聞かれたので、そうですね!って答えた。誘ってくれたトムさんには悪いけど、新しいお店は最初が一番感動するから。
二人で学園の正面玄関を出ると、ちょうど公爵家の馬車が大きな門を通り、なだらかなS字のアプローチを登って来ていた。そしてスッと僕達が居る所で横付けされる。おお流石が公爵家の馬車、見事な技だ!
そして颯爽と御者台から降りてきた人を見て驚く…し、渋~い!
スコットさんの父親のアンクルさんだ。親子二代で公爵家の御者をしている。燻し銀の技なんだね!それにやっぱり親子、スコットさんに似て物凄くイケおじだ!ソリ◯チかな?それともタケ◯ウチ?
「おはようございます坊ちゃま。たってのお召しだと伺い、今日は私が御者を務めさせて頂きます」
「うん苦労をかけるね。よろしく頼む」
僕も深々とお礼をして、坊ちゃまに続いて馬車に乗り込んだ。スコットさんも上手だけど、アンクルさんはさらに上をゆく腕だ…とっても静か!普段は公爵様や公爵夫人をお乗せしているアンクルさん。だから僕は今日が初めてなんだ!坊ちゃまが頼んでくれたようだけど、有り難いなぁ~
「坊ちゃまありがとうございます!僕、アンクルさんが御者の馬車に乗るのは初めてです」
そう笑顔でお礼を伝えると坊ちゃまは「私の理由なんだけどね。会わせたくないっていう…」そう呟かれる。
──うん?どういう意味なのかな?
誰を会わせたくないのかな?と不思議に思いながらも、馬車は軽快に走ってあっという間に街までやって来た。またお帰りの時間に参りますとアンクルさんは頭を下げて、僕は坊ちゃまの後ろをキョロキョロしながら付いて歩いた。
街は先週から秋祭りのイベントが開催されていて、とっても賑やかだ。街灯にも紅葉した葉っぱで作られた飾りが掛けられ、街の中心にある噴水の縁には赤やオレンジに色付いた南瓜のオブジェが乗っている。
僕は他でもない大好きな坊ちゃまと一緒に眺めることが出来て、むちゃくちゃ嬉しかった。来年も、再来年だって一緒に来れたら嬉しいなぁ!
秋の装飾の街並みを見ながら、今日の目的の一つ新しいペンとノートを買う。それから約束したカフェ併設のケーキ屋さんに寄ってみる。なるほど店はとても混んでいて、少し待ってからやっと席に座ることが出来た。
「やっぱり秋ですから、パンプキンパイを食べましよう!美味しいですよ?きっと」
「そうだね。私も甘すぎないし好きだ」
そうワクワクしながら紅茶と一緒に注文すると、南瓜のフィリングをこんがりと焼き上げ、たっぷりのクリームを乗せたパンプキンパイが出てきてテンションMAXに!
「トムさんが言ってた通り、とっても美味しいですね。今日来れて良かったです」
あっという間に平らげて、ニコニコでそう言う僕。ふと見ると坊ちゃまは、小さなお口でひと口ずつ食べている。なんて上品!もっとガツガツ食べていただいて、口の端に付いたクリームを指で拭って「付いてますよ♡」って、やりたかったのに~
お腹いっぱいになって心もお腹もぽっかぽか。それからお店の外に出ると、夕焼け空が広がっていて辺りは少し暗くなっていた。そろそろ帰りの馬車が来る時間かな?と思っていると…突然、後ろから走って来た男に体当たりされた。
「痛たーっ!な、何?」
驚いてその男の方をバッと見る。その男の手には見慣れた財布が握られている。え…あれ、僕の財布じゃない?
850
お気に入りに追加
1,359
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!
MEIKO
BL
本編完結しています。Ωの涼はある日、政略結婚の相手のα夫の直哉の浮気現場を目撃してしまう。形だけの夫婦だったけれど自分だけは愛していた┉。夫の裏切りに傷付き、そして別れを決意する。あなたの妻(Ω)辞めます!
すれ違い夫婦&オメガバース恋愛。
※少々独自のオメガバース設定あります
(R18対象話には*マーク付けますのでお気を付け下さい。)
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】そのうち番外編更新予定。伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷うだけだ┉。僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げた。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなの何で!?
※R対象話には『*』マーク付けますが、後半付近まで出て来ない予定です。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。
とうや
BL
【6/10最終話です】
「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」
王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。
あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?!
自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。
***********************
ATTENTION
***********************
※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。
※朝6時くらいに更新です。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】王子様の婚約者になった僕の話
うらひと
BL
ひょんな事から第3王子のエドワードの婚約者になってしまったアンドル。
容姿端麗でマナーも頭も良いと評判エドワード王子なのに、僕に対しては嘘をついたり、ちょっとおかしい。その内エドワード王子を好きな同級生から意地悪をされたり、一切話す事や会う事も無くなったりするけれど….どうやら王子は僕の事が好きみたい。
婚約者の主人公を好きすぎる、容姿端麗な王子のハートフル変態物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる