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第一章・最愛の坊ちゃま
3・ヲタクの本懐
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『推し☆来たーーっ!』
心の中で叫んだ。目の前に推しだ…信じられない!
普通は攻略対象を推しにするのかも知れないが、僕はこのゲームの主人公であるジュリアスが本当に好きだった。美しい容姿で公爵家の嫡男で。だけど、その恵まれた環境に胡座をかくことなく、人一倍努力した。攻略対象に頼り切りにならず自分で道を切り拓こうとしたんだ。どんな困難にも決して負けない不屈の精神。そんなジュリアスに憧れた…
僕はすっかりと興奮しきりで、死にかけていたことも忘れちゃっている。だけどちょっと待てよ?僕って一体…
それから高校生の僕が、夢中になってそのBLゲームに打ち込み一喜一憂しているのを思い出した。そのうち母親にバレて禁止され、隠れてまでやっていた姿を…。それで気付いた…僕って、転生者なんだ!おまけにこの世界って、あのゲームの世界なの?
高校二年生の時、超進学校に通う僕は大学受験に向けてストレスを抱えていた。そんな時にゲーム好きの友達から勧められたのがこのゲーム。ジュリアスを主人公とするBL恋愛ゲーム「愛する君に花束を…」通称『君花』だ!
ほんの暇つぶしだと始めたそのゲームだけど、まず驚いたのは登場人物達の圧倒的ビジュアル。その中でも群を抜いているのは、やっぱりジュリアス!ゲームの中のジュリアスにトキメキが止まらない♡
僕は大好きなゲームの世界に転生していた事実に驚きを隠せない。だけどさ、僕って登場人物の中にいた?伯爵家令息エリオット・アノーなんて知らないよね?そんでもって前世の僕って、死んだのかな?ゲームをやっていた高校生の僕までしか思い出せないということは、きっとそうなんだろうと思う。
──僕って、名も無き人物に転生…したんだ!何てコト…ヤバババッ!!
大好きな世界に転生したのは嬉しいが、自分が全然知らない登場人物だということに少し複雑な気持ちになった。それにしても…
『ジュリアス・エドモア』
容姿端麗で頭脳明晰。そんな言葉さえも陳腐に感じてしまうほどの圧倒的な存在。もう『神』の領域じゃないだろうか?
「ふふっ…あははっ!」
僕の突然の笑いに、訝しげな表情をするジュリアス様の側付きの男。死にかけてとうとう可怪しくなったのか?とでも思っているのだろう。それ、間違ってはいないけどね!
僕はその瞬間、自分に纏わる細かい事などどうでも良くなって、やがて一つの結論に達した。
「初めましてジュリアス様。どうか僕をあなたのお側に置いてはいただけませんか?そうなれば今後は退屈などさせません!」
推しの側にいたいと、この世界で生まれて初めて全力で乞い願った。初対面でそんな怪しい事を言い出す僕にジュリアスは、顔色ひとつ変えることもなくただじっと見ている。そして…
「よかろう。只今からお前は公爵家の使用人だよ」
何の動揺もなく、静かにそう言うジュリアスに目を見開く。
心に渦巻くのは、僕はモブ中のモブだ…なのに今までの人生ハードモードで散々苦労してきて、今後の人生そのくらいの楽しみを与えられてもいいだろう?ってこと。
──やってやる!このゲーム、僕は一番近くの特等席で見てやる。そして、命の恩人でもあるジュリアスの幸せを見届ける!
確か、ゲームのオープニングは王都学園に通う時だ。という事はあと7、8年ほど時が過ぎてから始まる。在学中には誰ルートになるのか決まり、ジュリアスは卒業と同時に結婚することになるだろう。だから僕の復讐は、それを見届けてからでも充分間に合う。だけど…
ご先祖様には叱られるかも知れないが、もう伯爵になる必要ないかもな。臨時の父の代でアノー伯爵家は終わる事を知らしめてやる事で復讐は完了し、僕はジュリアスのところに戻ってもいい!
そして、いずれ産まれるであろうお子様を共にお育てするのもヲタク冥利に尽きるよなぁ~
ジュリアスそっくりの見目麗しい子に「エリオットじゃなきゃヤダ~」とか言われちゃったりして!フフフッ。
──ヤバい!ゲームファンならではの妄想が止まらない!
そう思って、ハタ…と気付いたことが。
あれっ…?今の人格と前世の人格がドッキングして、細かいこと気にしなく…なってるかも?
それにちょっとだけ戸惑ったが、もはやどうでもいい。推しであるジュリアスをこの歳から見守れて、役得だとしか考えられなくなっていた。今現在僕だってまだ子供だけれど、前世と合わせたらとっくに成人している。身体は子供だけど、頭脳は大人なのだ!ん…何か聞いたことがあるフレーズだな?
それから僕は、言われるがままジュリアスについて行き、身体を清めて公爵家の使用人服に身を包んだ。
僕はいつの間にか、ガドリン公爵家でお世話になるつもりが、この国のもう一つの公爵家…エドモア公爵家の使用人になっていたんだ。
心の中で叫んだ。目の前に推しだ…信じられない!
普通は攻略対象を推しにするのかも知れないが、僕はこのゲームの主人公であるジュリアスが本当に好きだった。美しい容姿で公爵家の嫡男で。だけど、その恵まれた環境に胡座をかくことなく、人一倍努力した。攻略対象に頼り切りにならず自分で道を切り拓こうとしたんだ。どんな困難にも決して負けない不屈の精神。そんなジュリアスに憧れた…
僕はすっかりと興奮しきりで、死にかけていたことも忘れちゃっている。だけどちょっと待てよ?僕って一体…
それから高校生の僕が、夢中になってそのBLゲームに打ち込み一喜一憂しているのを思い出した。そのうち母親にバレて禁止され、隠れてまでやっていた姿を…。それで気付いた…僕って、転生者なんだ!おまけにこの世界って、あのゲームの世界なの?
高校二年生の時、超進学校に通う僕は大学受験に向けてストレスを抱えていた。そんな時にゲーム好きの友達から勧められたのがこのゲーム。ジュリアスを主人公とするBL恋愛ゲーム「愛する君に花束を…」通称『君花』だ!
ほんの暇つぶしだと始めたそのゲームだけど、まず驚いたのは登場人物達の圧倒的ビジュアル。その中でも群を抜いているのは、やっぱりジュリアス!ゲームの中のジュリアスにトキメキが止まらない♡
僕は大好きなゲームの世界に転生していた事実に驚きを隠せない。だけどさ、僕って登場人物の中にいた?伯爵家令息エリオット・アノーなんて知らないよね?そんでもって前世の僕って、死んだのかな?ゲームをやっていた高校生の僕までしか思い出せないということは、きっとそうなんだろうと思う。
──僕って、名も無き人物に転生…したんだ!何てコト…ヤバババッ!!
大好きな世界に転生したのは嬉しいが、自分が全然知らない登場人物だということに少し複雑な気持ちになった。それにしても…
『ジュリアス・エドモア』
容姿端麗で頭脳明晰。そんな言葉さえも陳腐に感じてしまうほどの圧倒的な存在。もう『神』の領域じゃないだろうか?
「ふふっ…あははっ!」
僕の突然の笑いに、訝しげな表情をするジュリアス様の側付きの男。死にかけてとうとう可怪しくなったのか?とでも思っているのだろう。それ、間違ってはいないけどね!
僕はその瞬間、自分に纏わる細かい事などどうでも良くなって、やがて一つの結論に達した。
「初めましてジュリアス様。どうか僕をあなたのお側に置いてはいただけませんか?そうなれば今後は退屈などさせません!」
推しの側にいたいと、この世界で生まれて初めて全力で乞い願った。初対面でそんな怪しい事を言い出す僕にジュリアスは、顔色ひとつ変えることもなくただじっと見ている。そして…
「よかろう。只今からお前は公爵家の使用人だよ」
何の動揺もなく、静かにそう言うジュリアスに目を見開く。
心に渦巻くのは、僕はモブ中のモブだ…なのに今までの人生ハードモードで散々苦労してきて、今後の人生そのくらいの楽しみを与えられてもいいだろう?ってこと。
──やってやる!このゲーム、僕は一番近くの特等席で見てやる。そして、命の恩人でもあるジュリアスの幸せを見届ける!
確か、ゲームのオープニングは王都学園に通う時だ。という事はあと7、8年ほど時が過ぎてから始まる。在学中には誰ルートになるのか決まり、ジュリアスは卒業と同時に結婚することになるだろう。だから僕の復讐は、それを見届けてからでも充分間に合う。だけど…
ご先祖様には叱られるかも知れないが、もう伯爵になる必要ないかもな。臨時の父の代でアノー伯爵家は終わる事を知らしめてやる事で復讐は完了し、僕はジュリアスのところに戻ってもいい!
そして、いずれ産まれるであろうお子様を共にお育てするのもヲタク冥利に尽きるよなぁ~
ジュリアスそっくりの見目麗しい子に「エリオットじゃなきゃヤダ~」とか言われちゃったりして!フフフッ。
──ヤバい!ゲームファンならではの妄想が止まらない!
そう思って、ハタ…と気付いたことが。
あれっ…?今の人格と前世の人格がドッキングして、細かいこと気にしなく…なってるかも?
それにちょっとだけ戸惑ったが、もはやどうでもいい。推しであるジュリアスをこの歳から見守れて、役得だとしか考えられなくなっていた。今現在僕だってまだ子供だけれど、前世と合わせたらとっくに成人している。身体は子供だけど、頭脳は大人なのだ!ん…何か聞いたことがあるフレーズだな?
それから僕は、言われるがままジュリアスについて行き、身体を清めて公爵家の使用人服に身を包んだ。
僕はいつの間にか、ガドリン公爵家でお世話になるつもりが、この国のもう一つの公爵家…エドモア公爵家の使用人になっていたんだ。
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