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第三章・回想
45・真実と罰
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俺は愚かにも優の為に何かしてやりたい!そう思ってしまった。出来る事なら何でも…って。
そんな時、裕貴から会いたいって連絡がある。
今は俺のことをどう思っているのかは知らないが、優と付き合っているんだ。それなら二人きりで会ったとしても大丈夫だ…って思ってた。
だけど、その考えが甘かったって後で思い知ることになったんだ…
金曜の夜、ホテルのラウンジに呼び出された俺は、涼に嘘を付いて来てしまう。
やっぱり裕貴と二人で会うなんて正直には言えなかった…
涼は以前から裕貴の話を出すと複雑そうな表情を浮かべていた。何でだ?って思っていたけど、もしかしたら俺との関係を疑ってるのかも?そう思った。
これを機にその疑いを晴らさないと…そう思ってたんだ。
ラウンジに着くと、裕貴が既に来ていた。声を掛けて隣に座る。そして…
「裕貴、何か話しがあるって言っていたけど…優のことなんだろう?」
優との交際で何か相談があるのかな?って漠然と思っていた俺は、そう切り出した。それに裕貴はこくんと頷く。
「そうなんだ…でもその前に一つ聞きたい。直哉は僕が好きだったって気付いてた?ずっと…ずっと前からだよ!」
裕貴が真剣な表情でそう聞いてくる。それに俺は…
「ゴメン!全く気付いてなかった。だってお前、俺に散々悪態ついてなかったか?番になるなんて絶対に嫌だって言って…」
そんな俺の言葉に少し傷ついた表情をしていたが、それからフッと笑ってそうなんだね…って呟いた。そして…
「分かった!もう聞かないよ。そして優の事なんだけど、付き合ってるんだ今。それでね、大学を卒業したらKANAIに入社したらどうかって思うんだけど。だってモデルなんて仕事、ずっと続けていける人なんて一握りだよ?優はモデルだけあってセンスも良いし活躍出来るんじゃないか?って思う。そしてゆくゆくは…ね?」そう言って裕貴は微笑んだ。
──ゆくゆくは裕貴と優がKANAIを?そうなれば一番いいのかも知れない。
父さんと優は未だに心に溝がある。それを無理矢理同じところで働くよりも…
そして何より、優が今まで苦労してやってきたモデルの仕事を活かせるんだ!
俺は思ってもみなかったその裕貴の提案に、心から感謝した。
「裕貴ありがとう!今まで俺、お前が伏木の名前で擦り寄ってきているんだって思い込んで誤解していたよ。本当にすまなかった!」
今まで誤解していた事を謝って頭を下げた。
そして優を頼むって──。
俺は長年の心の枷が外れたような心持ちになって、浮かれていた。
それからそろそろ帰ろうと、エレベーターでロビーまで降りる。
そして着いてから裕貴から意外なお願いが…
一度だけキスして欲しいって。そしたら俺の事を完全に思い切って、優だけを見れるって…
俺は少し戸惑ったけど、それで優が幸せになれるんならって思ってしまった…
まさかそれを涼に見られている──なんて思わずに!
それから裕貴がタクシーを呼んで欲しいって言うのでフロントへ頼みに行く。
そして振り返ると裕貴が本当に嬉しそうな顔をしていた。
その笑顔の本当の意味を、俺は後で思い知ることになった。
家に帰ると何かが可怪しい気がした。涼…どうかしたのか?って。
──後ろめたい気持ちがそう思わせるのか?
そして涼が裕貴と会ってきたのか?って聞いてくる。
何故それを知って?って動揺した。俺はそれをもっと深刻に受け止めるべきだったのに…
裕貴とキスをしたのは後ろめたさがあった。だけどそれ自体に意味があるものではないし…ホテルで裕貴に会ったことを認めて、優の件も話そうと決めた。
すると涼は、話の途中でキスをしてきた。
俺は涼とのキスに夢中になる。更に涼からベッドに誘われて行為に耽った。
この話の続きは明日でも大丈夫だろう?…そう思いながら。
そしてお互いにいつの間にか眠ってしまって、朝方に涼が起き出すのが分かる。
──ん?今日は休みだし、もう少し寝てても…そう思ってまた眠ってしまっていた。
そして再び起きた時には涼は消えていた──。
涼のクローゼットには、ここへ来てから買ったものだけが残されていた。
俺は唖然として涼の意思の強さを思い知らされる…
俺はどこで間違ったのか…?
最初から涼に好きだって言うべきだった!
好きだから結婚してくれ!って。そして俺と番になって欲しいって…
結局、最初から最後まで涼を傷つけただけだった…この結婚は。
──もう今更何を言っても遅い!俺に出来るのは涼の望みを叶えてやるだけ。
離婚…してやるだけなんだ。
そんな時、裕貴から会いたいって連絡がある。
今は俺のことをどう思っているのかは知らないが、優と付き合っているんだ。それなら二人きりで会ったとしても大丈夫だ…って思ってた。
だけど、その考えが甘かったって後で思い知ることになったんだ…
金曜の夜、ホテルのラウンジに呼び出された俺は、涼に嘘を付いて来てしまう。
やっぱり裕貴と二人で会うなんて正直には言えなかった…
涼は以前から裕貴の話を出すと複雑そうな表情を浮かべていた。何でだ?って思っていたけど、もしかしたら俺との関係を疑ってるのかも?そう思った。
これを機にその疑いを晴らさないと…そう思ってたんだ。
ラウンジに着くと、裕貴が既に来ていた。声を掛けて隣に座る。そして…
「裕貴、何か話しがあるって言っていたけど…優のことなんだろう?」
優との交際で何か相談があるのかな?って漠然と思っていた俺は、そう切り出した。それに裕貴はこくんと頷く。
「そうなんだ…でもその前に一つ聞きたい。直哉は僕が好きだったって気付いてた?ずっと…ずっと前からだよ!」
裕貴が真剣な表情でそう聞いてくる。それに俺は…
「ゴメン!全く気付いてなかった。だってお前、俺に散々悪態ついてなかったか?番になるなんて絶対に嫌だって言って…」
そんな俺の言葉に少し傷ついた表情をしていたが、それからフッと笑ってそうなんだね…って呟いた。そして…
「分かった!もう聞かないよ。そして優の事なんだけど、付き合ってるんだ今。それでね、大学を卒業したらKANAIに入社したらどうかって思うんだけど。だってモデルなんて仕事、ずっと続けていける人なんて一握りだよ?優はモデルだけあってセンスも良いし活躍出来るんじゃないか?って思う。そしてゆくゆくは…ね?」そう言って裕貴は微笑んだ。
──ゆくゆくは裕貴と優がKANAIを?そうなれば一番いいのかも知れない。
父さんと優は未だに心に溝がある。それを無理矢理同じところで働くよりも…
そして何より、優が今まで苦労してやってきたモデルの仕事を活かせるんだ!
俺は思ってもみなかったその裕貴の提案に、心から感謝した。
「裕貴ありがとう!今まで俺、お前が伏木の名前で擦り寄ってきているんだって思い込んで誤解していたよ。本当にすまなかった!」
今まで誤解していた事を謝って頭を下げた。
そして優を頼むって──。
俺は長年の心の枷が外れたような心持ちになって、浮かれていた。
それからそろそろ帰ろうと、エレベーターでロビーまで降りる。
そして着いてから裕貴から意外なお願いが…
一度だけキスして欲しいって。そしたら俺の事を完全に思い切って、優だけを見れるって…
俺は少し戸惑ったけど、それで優が幸せになれるんならって思ってしまった…
まさかそれを涼に見られている──なんて思わずに!
それから裕貴がタクシーを呼んで欲しいって言うのでフロントへ頼みに行く。
そして振り返ると裕貴が本当に嬉しそうな顔をしていた。
その笑顔の本当の意味を、俺は後で思い知ることになった。
家に帰ると何かが可怪しい気がした。涼…どうかしたのか?って。
──後ろめたい気持ちがそう思わせるのか?
そして涼が裕貴と会ってきたのか?って聞いてくる。
何故それを知って?って動揺した。俺はそれをもっと深刻に受け止めるべきだったのに…
裕貴とキスをしたのは後ろめたさがあった。だけどそれ自体に意味があるものではないし…ホテルで裕貴に会ったことを認めて、優の件も話そうと決めた。
すると涼は、話の途中でキスをしてきた。
俺は涼とのキスに夢中になる。更に涼からベッドに誘われて行為に耽った。
この話の続きは明日でも大丈夫だろう?…そう思いながら。
そしてお互いにいつの間にか眠ってしまって、朝方に涼が起き出すのが分かる。
──ん?今日は休みだし、もう少し寝てても…そう思ってまた眠ってしまっていた。
そして再び起きた時には涼は消えていた──。
涼のクローゼットには、ここへ来てから買ったものだけが残されていた。
俺は唖然として涼の意思の強さを思い知らされる…
俺はどこで間違ったのか…?
最初から涼に好きだって言うべきだった!
好きだから結婚してくれ!って。そして俺と番になって欲しいって…
結局、最初から最後まで涼を傷つけただけだった…この結婚は。
──もう今更何を言っても遅い!俺に出来るのは涼の望みを叶えてやるだけ。
離婚…してやるだけなんだ。
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