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第三章・回想
37・涼
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俺が初めて内藤涼に会ったのは、高校一年生の時だった。
俺は伏木家の長男でアルファだ。
中学の頃までは、お金持ちでアルファ…それだけでモテた。
いつも沢山の友人に囲まれて、孤独なんて感じたこともなかった。
本当の意味での孤独…
俺の心にはいつもぽっかりと穴が空いていて、それは何をしても埋まることはなかった。
容姿だって悪くはなかったし、勉強だって人並み以上にデキる。
それでも埋まらない心…
そんな自分に飽き飽きとし、高校では今までとは逆に、全く人を寄せ付けない努力をした。
ボサボサの頭、顔を隠すほどのダサくてデカい眼鏡。
そして必要以上には喋らない。勉強だって適当だね?
その高校は大企業の子息や子女が通う、いわゆるお金持ち学校だ。ここの方が煩わしいことが一つ減るだろう?って選んだけど…
そんな俺でも伏木と言う名前だけは消せない!
そのことで近付いてくる奴も少しだけいたけど、そういう奴らは無視した。
家族はそんな変わり果てた俺を遠巻きに見ていたが、敢えて何も言わなかった…
自分達のことを考えたら、俺に何かを言うなんて…出来なかったんじゃないのか?
だって家族はバラバラだったし…
仕事で殆ど家に居ない父。家族で出掛ける…なんて皆無で、お金だけを潤沢に与えてくれる。そして母は…心を病んでいる。
今でも6歳下の弟が生まれた時を覚えている。
あの日から可怪しくなったのか?いや、ずっと前からなんだろう。
父が大事にしているあの写真の人…
死んだ人には敵わない…そう呟いた母。
俺や弟のために強く居て欲しかった。
だけど今はもう期待するのはやめた…
くだらない学校終わりの放課後、街をぶらぶらする。早く帰る必要もないし。
だけど伏木の名前で付いてきているヤツが一緒で鬱陶しい。
俺はそいつが一方的に話すのを、ただボーッとしながら聞いていた。
「直哉!ほらオメガ校の奴らがいるよ。」そいつのそんな声を聞いて、お前だってオメガだろ?って思ったが、興味本位で振り返る。
だが俺の目は釘付けになった!何故だか目を離すことが出来ない…
──そこに美しい男が居たから。
スラリとした均整のとれた身体に、透けるような白い肌には大きな瞳が…
有名なオメガ校の制服を着た三人の中の一人、その人に一瞬で目を奪われる。すると…
「アイツだ!内藤涼だよ。オメガ校では有名なんだよ、綺麗だって。実際見てみたら大した事ないじゃん!」
そいつの言う言葉をどこか遠くで聞いていた…
大した事ない…わけないだろう?…凄く綺麗だ!
だけど…その瞬間、俺の心が騒つく。嵐のような騒つきだ!!
──内藤…涼?
父が大事に持っている写真…あの人とそっくりなこの人が、俺の目の前で笑っている。
俺は伏木家の長男でアルファだ。
中学の頃までは、お金持ちでアルファ…それだけでモテた。
いつも沢山の友人に囲まれて、孤独なんて感じたこともなかった。
本当の意味での孤独…
俺の心にはいつもぽっかりと穴が空いていて、それは何をしても埋まることはなかった。
容姿だって悪くはなかったし、勉強だって人並み以上にデキる。
それでも埋まらない心…
そんな自分に飽き飽きとし、高校では今までとは逆に、全く人を寄せ付けない努力をした。
ボサボサの頭、顔を隠すほどのダサくてデカい眼鏡。
そして必要以上には喋らない。勉強だって適当だね?
その高校は大企業の子息や子女が通う、いわゆるお金持ち学校だ。ここの方が煩わしいことが一つ減るだろう?って選んだけど…
そんな俺でも伏木と言う名前だけは消せない!
そのことで近付いてくる奴も少しだけいたけど、そういう奴らは無視した。
家族はそんな変わり果てた俺を遠巻きに見ていたが、敢えて何も言わなかった…
自分達のことを考えたら、俺に何かを言うなんて…出来なかったんじゃないのか?
だって家族はバラバラだったし…
仕事で殆ど家に居ない父。家族で出掛ける…なんて皆無で、お金だけを潤沢に与えてくれる。そして母は…心を病んでいる。
今でも6歳下の弟が生まれた時を覚えている。
あの日から可怪しくなったのか?いや、ずっと前からなんだろう。
父が大事にしているあの写真の人…
死んだ人には敵わない…そう呟いた母。
俺や弟のために強く居て欲しかった。
だけど今はもう期待するのはやめた…
くだらない学校終わりの放課後、街をぶらぶらする。早く帰る必要もないし。
だけど伏木の名前で付いてきているヤツが一緒で鬱陶しい。
俺はそいつが一方的に話すのを、ただボーッとしながら聞いていた。
「直哉!ほらオメガ校の奴らがいるよ。」そいつのそんな声を聞いて、お前だってオメガだろ?って思ったが、興味本位で振り返る。
だが俺の目は釘付けになった!何故だか目を離すことが出来ない…
──そこに美しい男が居たから。
スラリとした均整のとれた身体に、透けるような白い肌には大きな瞳が…
有名なオメガ校の制服を着た三人の中の一人、その人に一瞬で目を奪われる。すると…
「アイツだ!内藤涼だよ。オメガ校では有名なんだよ、綺麗だって。実際見てみたら大した事ないじゃん!」
そいつの言う言葉をどこか遠くで聞いていた…
大した事ない…わけないだろう?…凄く綺麗だ!
だけど…その瞬間、俺の心が騒つく。嵐のような騒つきだ!!
──内藤…涼?
父が大事に持っている写真…あの人とそっくりなこの人が、俺の目の前で笑っている。
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