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第四章・輪廻

47・切実な願い(ノアSide)

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 私は唖然として見ていた…シルフィであるロディアが、自分の首元に剣を突き立てる姿を。  
 その足元には命尽きかけたスレイド卿がいる。
 その瞬間私は悟った…シルフィが何をやろうとしているのかを。
 スレイド卿の為にとしているのだと。

 「次は…間違えないで!必ず…」
 シルフィの最後の言葉だ。そしてそれは私へのメッセージだった…

 シルフィが首元の剣を引いた瞬間、バッと世界が切り替わるような感覚になった。私は一体何をしていたんだろう?と。
 だけど直ぐに、まるで映像を見せられているかのように色鮮やかな記憶が蘇る。
 そしてキョロキョロと周りを見渡たし、自分の身体を触って確かめる。 
 先程までいた大広間ではなく、自室にいる私。それに着ている服も全く違う。

 ──どういう事だ…何故覚えているんだろう?

 シルフィが死に戻ったとして、私は気付かないうちに切り替わるのではないか…と。もしかして一度戻った経験があるからだろうか。
 それか、同じ空間にいたからなのか…?
 考えてもよくわからない。

 取り敢えず日付を確かめてみると、一年と少し戻った事が分かった。
 その時期だったら、シルフィが事故に合って亡くなった時かも…

 それから速やかに現状を把握する事に努めた。
 そして戻ってみて一番強く思うのは、もう復讐はしない!という事だ。
 王妃に対して復讐をしようとすると、その対価に大切なものが失われる。
 一度目は自分の命、そして二度目はロディア…

 きっと母もそれを望んでいない。私が幸せに生きること…それがきっと望みで、復讐は望んでいない筈だ!

 それから私はように、グレン伯爵家に急いだ。もしかして、ロディアの死に目に会えるかも知れないと…

 シルフィが自分として死に戻るならば、きっとロディアはそのまま死んでしまう。最後に…最後にどうしても一目会っておきたかった!たとえ意識がない状態だとしても…

 そう思いながらグレン伯爵家に急いだ私は、余りの事に唖然とした…
 ロディアが生きていて、今までの事が嘘のように元気になっていた!

 長い間手紙のやり取りくらいで直接会うことはなかった私が、姿を見せるなり抱き着いてくる。そんな私にロディアは、驚くふうでもなく温かな微笑みで抱き返してくれる。そして、ずっと会いたいと思っていた…と呟きながら。
  
 そんな奇跡のような幸せに、私は直接話す機会はなかったけれど、神の御力なのかも知れない…と思い当たる。
 やっとの事で再会を果たした二人だけれど、何故か元気がない様子のロディア…その理由を尋ねると、その時初めてシルフィの現状を知った…

 ──どうしてなんだ?何故そんな事に!?
 シルフィは死に戻りを望まなかった…のか?

 それから私は、シルフィのあの時亡くなっていた子への愛情の深さを知る。

 ──君も、間違わなかったんだな?

 それから私は、まだ見ぬ神に祈る。
 シルフィを戻してやって欲しいと…そう切実に。
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