【完結】悪の華は死に戻りを希望しない

MEIKO

文字の大きさ
上 下
38 / 60
第四章・輪廻

37・疑惑

しおりを挟む
 
 王城で起きたあの一件から一週間、今日は久しぶりに学園に登校する。
 もう熱もすっかり下がり、体調も良くなった。同じクラスの皆んなは心配してるだろうな…ただ一人を除いて。

 あれから一度だけ、ノア殿下の方から公式に私を見舞いたいと連絡があった。
 ルーカス殿下と違って公式に…

 そんなものを受け入れたとしたら、他の貴族達からノアとの婚約が決まりだと取られかねない。
 全くそういうところが気に食わないんだよね…何もかもが用意周到で打算的だ。

 父はそれを、殿下にもしも伝染るといけませんので…と言って断った。
 見舞いに来たデビットから、ノアもあれから学園には来ていないと聞いているけど、今日も来なければいいな…って思いながら、いつものように学園までの道を歩いていると…

 「おはよう!シルフィ」

 聞き慣れた声が後ろから聞こえ、その瞬間ああっ!と、天を仰いだ。それから振り向くと案の定、ノアが笑顔で立っていた。

 「…おはようございます。その名で呼ぶのはやめて下さい!」

 「大丈夫でしょ?周りに誰も居ないよ!」

 そんな事ない!油断してると駄目だ…って思ったけれど、会話が続くのがしゃくさわってその言葉を飲み込む。

 「何か御用ですか?用がないなら、話し掛けないで下さい」

 そう言う私に、ノアは可笑しそうに笑う。

 「だって会いたいって言っても拒むだろ?見舞いも許してくれないし…」

 そのノアの言い草に、いくら王族だと言っても、やっちゃいけない事だって分かるだろう?とむかついて反論した。
 
 「当たり前ですよ!あんな事をしておいて、誰が信用するんです?もう近付かないで欲しいですね」

 そう言って、ノアを構わずにどんどん先へと歩いて行った。

 「眠らせたのは悪かったと思っている。服も濡れたちゃって…だから代わりの服置いてあったよね?気付いたらもう居なくなっててびっくりしちゃったよ…」

 素知らぬ顔で反応しなかったが、私は少し安心していた。服濡れたから裸だったのか…と。それなら寝間着でも着せておいて欲しかったけど…

 「では聞きますが、私とそこまでして婚約したいのは何故ですか?前に言いましたが何の力もない家門ですよ?グレン伯爵家は」

 そう言ってノアを見つめると、逆にまじまじと見られて面食らう。な、何?

 「分からない?君にスレイド侯爵家から縁談があったよね?断ったみたいだけど…。私はね、シルフィには興味はない…だけど、その身体はロディアの物だ。それが赦せないんだよ。ロディアの身体が誰かのものになるのかと思うと…居た堪れないんだ。それなら私と噂になったら誰も近付かないよね?」

 ──ああそうか!この人は…ロディアを愛していたんだ。そして、今その身体を使っている私を赦せないんだ…と理解した。
 そう思ったら複雑な思いになる…私だってロディアを静かに眠らせてあげたかった。だけど…

 「ごめんなさい。私がロディアの身体を…私が望んだのでは無かったけれど」

 「うん…分かってるんだ私だって。君のせいではないのは…。神の采配なんだろう?」

 そう言われて、えっ?と思った。私、そこまで言っただろうか?って。
 死んで意識が戻ったら、ロディアに憑依していたとは言った覚えがある。だけど…

 ──もしかして、ノア殿下は何かを知っているのだろうか…?
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...