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第三章・転機
31・危機的状況
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「ロディア?どうしたのだ…何故ここに?」
私はドミニクに抱き着いたまま、ガタガタと震えていた…
不安に苛まれて泣きそうだった。
──どうして私があんな目に?それに…大丈夫だったんだろうか?
そんなこと考えても答えが出ないのは分かっているが、繰り返し考えてしまっている…
そんな動揺している様子の私と、こんな早朝の時間帯に居る事自体が普通じゃないと思ったドミニクは、自分に与えられている城の中の一室に私を連れて行った。
「ここは俺だけに与えられている部屋だから心配ない!何があったのか気になるが、言いたくなければ言わなくていいから…」
私は頷きながらも、どうして良いのか分からずにただただ怯えていた。
「今ちょうど夜勤明けの警備の者と早朝の者との交代の時間だ。だから人の目に付いてしまう…。あと一時間ほどこのままここで待機しよう。それから私が何とか連れ出すから」
そう言ってドミニクは、私を落ち着かせようとなのか笑顔をつくる。私はそんなドミニクの優しさに勇気付けられる…
「俺は準備しに行くからここで少し横になったらいい…さあ」
徐ろに近付いてベッドに私を座らせ、背中を支えながら横たえさせてくれる。そして休んでいるように言いながら、心配そうに見つめて部屋を出て行った。
このベッドはドミニクが仮眠を取るものらしく残り香がしている…それに何だか緊張していた心が落ち着いてくる。
「はぁ…っ、ドミニクに会えて良かった…」
あのまま一人で彷徨っていたら、どうなったかと思う…
恐らく使用人か、騎士に発見され大変な事になっていたかもしれない。
さっき目覚めた部屋は、恐らくノア殿下の部屋だろう。そこから出て来たのをもしも知られたとしたら、格好の噂の的だ!それこそ婚約の話しを受けるしかなくなる…
──もしかして、それが目的!?断われなくする為に…か?冗談じゃない!絶対に嫌だ。
そう憤っていたが、そのうちだんだん眠くなって目を閉じた…
「おい!ロディア…出るぞ」
その声にパッと目を開ける。目の前にはいつの間にかドミニクが戻って来ていた。さっとベッドから起き出して、それから二人で目配せしながらそっと廊下に出る。
人目に付かないように細心の注意を払いながら、城の回廊伝いに外に出る。
すると誰かが馬を引いて待っているのが見える。…リチャードだ!
「この馬に乗って行け!さあロディア、抱えてやろう」
リチャードはドミニクから聞いているのか、何も聞かなかった…それが物凄く有り難い。
ドミニクが先に馬に乗り、その前にリチャードに支えて貰いながら跨がった。そして…
「ロディア…一つだけ聞かせてくれ!ルーカスかノアかどちらだ?」
リチャードが真剣な顔をして私に聞いた。少し迷って「…ノアです」と答えた。
それには後ろで私を抱えながら馬に乗っているドミニクもビクリと反応する。
「さあ行け!ドミニク頼んだぞ!」
私はリチャードに「ありがとう」と頭を下げ、ドミニクは力強く頷いてここを出発した。
城の裏口から出ると、例え誰かに見られたとしても夜勤明けの使用人か騎士が帰るのだろうと、気にする人はまず居ないだろう。その事に心底ホッとする…
ドミニクは何も言わず、ただ優しく安心させるように私を深く抱えて馬を走らせてくれた。
私はドミニクに抱き着いたまま、ガタガタと震えていた…
不安に苛まれて泣きそうだった。
──どうして私があんな目に?それに…大丈夫だったんだろうか?
そんなこと考えても答えが出ないのは分かっているが、繰り返し考えてしまっている…
そんな動揺している様子の私と、こんな早朝の時間帯に居る事自体が普通じゃないと思ったドミニクは、自分に与えられている城の中の一室に私を連れて行った。
「ここは俺だけに与えられている部屋だから心配ない!何があったのか気になるが、言いたくなければ言わなくていいから…」
私は頷きながらも、どうして良いのか分からずにただただ怯えていた。
「今ちょうど夜勤明けの警備の者と早朝の者との交代の時間だ。だから人の目に付いてしまう…。あと一時間ほどこのままここで待機しよう。それから私が何とか連れ出すから」
そう言ってドミニクは、私を落ち着かせようとなのか笑顔をつくる。私はそんなドミニクの優しさに勇気付けられる…
「俺は準備しに行くからここで少し横になったらいい…さあ」
徐ろに近付いてベッドに私を座らせ、背中を支えながら横たえさせてくれる。そして休んでいるように言いながら、心配そうに見つめて部屋を出て行った。
このベッドはドミニクが仮眠を取るものらしく残り香がしている…それに何だか緊張していた心が落ち着いてくる。
「はぁ…っ、ドミニクに会えて良かった…」
あのまま一人で彷徨っていたら、どうなったかと思う…
恐らく使用人か、騎士に発見され大変な事になっていたかもしれない。
さっき目覚めた部屋は、恐らくノア殿下の部屋だろう。そこから出て来たのをもしも知られたとしたら、格好の噂の的だ!それこそ婚約の話しを受けるしかなくなる…
──もしかして、それが目的!?断われなくする為に…か?冗談じゃない!絶対に嫌だ。
そう憤っていたが、そのうちだんだん眠くなって目を閉じた…
「おい!ロディア…出るぞ」
その声にパッと目を開ける。目の前にはいつの間にかドミニクが戻って来ていた。さっとベッドから起き出して、それから二人で目配せしながらそっと廊下に出る。
人目に付かないように細心の注意を払いながら、城の回廊伝いに外に出る。
すると誰かが馬を引いて待っているのが見える。…リチャードだ!
「この馬に乗って行け!さあロディア、抱えてやろう」
リチャードはドミニクから聞いているのか、何も聞かなかった…それが物凄く有り難い。
ドミニクが先に馬に乗り、その前にリチャードに支えて貰いながら跨がった。そして…
「ロディア…一つだけ聞かせてくれ!ルーカスかノアかどちらだ?」
リチャードが真剣な顔をして私に聞いた。少し迷って「…ノアです」と答えた。
それには後ろで私を抱えながら馬に乗っているドミニクもビクリと反応する。
「さあ行け!ドミニク頼んだぞ!」
私はリチャードに「ありがとう」と頭を下げ、ドミニクは力強く頷いてここを出発した。
城の裏口から出ると、例え誰かに見られたとしても夜勤明けの使用人か騎士が帰るのだろうと、気にする人はまず居ないだろう。その事に心底ホッとする…
ドミニクは何も言わず、ただ優しく安心させるように私を深く抱えて馬を走らせてくれた。
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